【2009デトロイトショー】
渦中のビッグ3、起死回生のEV連発
GM、Ford、Chrysler。EV(電気自動車)を再建の柱に

GMのワゴナー会長
1月11日~25日(現地時間)
米国ミシガン州デトロイト
Cobo Center


 2008年11月のLAオートショーでは、公的支援要請の最中とあって派手な演出を控えていたビッグ3も、ご当地開催のデトロイトショーでは大規模な展示とプレスカンファレンスを開催した。3社とも、再建の柱に掲げたのは(電気自動車)だった。

GMはバッテリーを内製
 GMはプレスデー初日と2日目にカンファレンスを開催。初日は、多数のGMの従業員が「Here To Stay」「We'er Electoric」などのプラカードを掲げ、シュプレヒコールを上げて盛り上げる中を、多数のコンセプトカーと新型車が自走して登場。経営危機を乗り越える決意をアピールしたが、どこか“カラ元気”の印象も。

 

プラカードを持った従業員がシュプレヒコールを上げる中、次々とGMの車が登場する演出

 初公開のコンセプトカーは2ドアクーペの「Cadillac Converj」。米国で「Extended-Range EV」と呼ばれるハイブリッドカーで、4気筒の内燃機関は発電のみに使われ、走行には出力120kWの電気モーターが使われる。バッテリーはT字型のリチウムイオン。駆動方式はFFだ。

 

Cadillac Converj(コンバージ)。内燃機関で発電し、電気モーターで前輪を駆動する。T字型のリチウムバッテリーはVoltと同じもの(上段右端の図がシャーシー。青い部分がバッテリー)

 新型車はCadillacのミッドサイズSUV「SRX」、ChevroletのコンパクトSUV「Equinox」(エクイノックス)、Buick「LaCrosse」(ラクロス)の3台。また、コンセプトカーとしてすでに発表されているコンパクトSUV「Chevrolet Orlando」と2ドアコンパクトカー「Beat」を2011年に市販すると発表した。

 2日目のカンファレンスは、電気自動車用のリチウムイオンバッテリーを米国でGMが内製するという発表で、韓国のLG化学がパートナーとして選ばれた。

 

GM 100周年記念として2008年に発表されたハイブリッドカー「Volt」。2010年に市販するVoltのカットモデル。T字型のリチウムイオンバッテリーはTの横棒が後ろに来るように、車体中央に搭載する
フルモデルチェンジされたCadillacのミッドサイズSUV「SRX」Buick LaCrosse
2007年のニューヨークショーで発表されたコンセプトカー「Beat」は市販される
2008年のパリショーで発表されたコンパクトSUVのコンセプトカー「Orlando」も市販へ
リチウムイオンバッテリーの内製を発表するワゴナー会長


実車はないがEV戦略を発表したFord

車載端末「SYNC」。空調やオーディオの制御から、メールの読み上げなどまでこなす
 ビッグ3の中ではもっとも経営状況のよいFordは、バッテリーEV(BEV)、ハイブリッドEV(HEV)、プラグイン・ハイブリッドEV(PHEV)の3種の電気自動車を用意していくことを発表。2010年にはBEVの商用車を、2011年にはBEVの小型車を、2012年には次世代PHEVを投入する。

 もっとも会場にはEVの姿はなく、エコカーらしきものは発売が予定されているFord FusionとMercury Milanのハイブリッドモデルくらい。コンセプトカーの「Lincoln C」は、コンパクトなラグジュアリーカーについてのプロポーザルモデルで、ウリはスタイリングと内装、そしてボイスコマンドで操作する車載情報端末SYNC」。パワートレーンには言及されていない。


 

Lincoln C。コンパクトな高級車を提案するモデル

 

2010年型Mustangに追加されたスペシャルチューン「Shellby GT500」。スーパーチャージャー付き5リッターエンジンで540hpを叩き出す

Chryslerは3台のハイブリッドカーを展示

 

自走してステージに上がった200C
 Chryslerは「Chrysler 200C」、「Dodge Circuit EV」、「Jeep Patriot EV」と3つのEVを発表。発表済みのJeep EV、Chrysler EV(Town and CountryベースのEV)とあわせて、5つのEVをブースに並べた。

 このうちCircuit EVは、昨年発表したDoudge EVの発展型で、ロータスのシャーシーに電気モーターとバッテリーを乗せた小型スポーツカーとなっている。

 200CとPatriot EVは、エンジンで発電して、電気モーターで走行するExtended-Range EV。前者はミッドサイズセダン、後者はSUVとなる。

 ブースでは200Cの人気が高い。ロングノーズ・ショートデッキの古典的なプロポーションはEVらしさをまったく感じさせないが、ミッドサイズセダンとして魅力的なスタイルではある。長大なボンネットを開けると横置きにされたモーターがぽつんと収まっている。

 同社は2010年に最初のEVを、2013年に3種のEVを市場に投入するとしている。

 

200C。魅力的だがEVらしさが感じられないスタイリング。ステアリングホイールやパドル、ペダル、シフトレバー等以外の操作系はすべてタッチパネルになっている
200Cのエンジンルーム。横置きに搭載されたモーターが見える。会場の床が見えるほどスカスカスマートフォンと車載端末が通信できる仕組みを搭載。盗難されたときは車の位置を知ることもできる
Doudge Circuit EV
Jeep Patriot EV

URL
North American International Auto Show(英文)
http://www.naias.com/

(編集部:田中真一郎)
2009年1月15日