【2010ジュネーブショー
フェラーリ、ハイブリッドカー「HY-KERS」を開発

F1技術を活用したハイブリッド実験車

HY-KERS ヴェットゥーラ・ラボラトリオ

3月2日~14日(現地時間)
スイス ジュネーブ
GENEVA PALEXPO



 メルセデス・ベンツCEOのディーター・ツェッチェ博士は3月2日のプレスカンファレンスで「私たちはF1だけでなく、フォーミュラ“グリーン”にも勝ちたい」と言ったが、その気持ちはフェラーリも同じなのだろうか。同じジュネーブショーでフェラーリは、初のハイブリッドカー「HY-KERS(ハイ・カーズ)ヴェットゥーラ・ラボラトリオ」を公開した。

 ヴェットゥーラ・ラボラトリオ、つまり実験車という名称が表すとおり、量販モデルではなく開発のためのテストベッドという位置づけ。しかしベース車両は「599GTBフィオラーノ」で、既存のモデルにハイブリッドシステムを搭載することが、同社のハイブリッド開発の目標の1つに含まれていることは注目に値する。

 F1のイメージをロードカーに重ねることでステイタスを高める同社だが、ハイブリッドカー開発でもテーマは「F1技術の移転」であり、車名には「KERS」が入る。

 既存モデルのハンドリングとパッセンジャー・スペースを犠牲にしないために、ハイブリッドシステムは軽量コンパクトであることが求められた。このため、599GTBフィオラノはトランスアクスルレイアウトを持つFR車だが、モーターは車体後部のトランスミッションに取り付けられ、モーター駆動用のリチウムイオンバッテリーは車体底部、パッセンジャールームの下あたりに取り付けられた。このレイアウトは、低重心化にも役立っている。

 軽量コンパクトなハイブリッドシステムは、2つめの目標「パワー・ウェイト・レシオの改善」にも貢献するが、さらに、モーターからは100PS以上の出力を発生させていることで、ハイブリッドシステムによる重量増をカバーしている。これにより3つめの目標「全回転域でのトルクの改善」が可能になった。

 このハイブリッドシステムは、フロントエンジン、リアエンジンのどのフェラーリにも適用できると言う。

 フェラーリブースのグリーンはちぐはぐなように思えるが、実際には意外とハマっている。「カリフォルニア」にアイドリングストップシステムを搭載するなど、環境面への配慮を打ち出し始めた同社だけに、ハイブリッド・スーパー・スポーツの登場も遠い未来の話ではないようだ。

車体の底面が見えるように傾けて展示されたHY-KERSトランスミッション後部に結合されたモーターには、フェラーリの跳ね馬が付く
トランクルームをのぞき込んだところ。底に見えるのは、ハイブリッドシステムトランスミッションとエレクトリックパワーコントロールユニットハイブリッドシステムとパワーコントロールユニットは車体の下側からも見える床下にマウントされた銀色の大きな平たい箱がリチウムイオンバッテリー
ブレーキキャリパーも緑色ハンドリングと乗員のスペースを犠牲にすることなく、既存のドライブトレーンとハイブリッドシステムを合体させるフロントエンジンでもリアエンジンでもハイブリッドを実現できる
100PS以上を発生するモーターはギアボックス後部に取り付けられているハイブリッドシステムの制御にはF1で得られたノウハウが生かされている
開発に関わったサプライヤーカリフォルニアの環境技術をアピールする展示。エンジンに取り付けられた緑の札には「可変容量パワーステアリングポンプ」と書かれている

(編集部:田中真一郎)
2010年 3月 5日