【2010 SEMA SHOW】 国産チューニングカーの時流を見る CR-Zを筆頭に、GT-R、フェアレディZ、ランエボXのチューニングカーが百花繚乱 |
■日本車チューニングカーはSEMA SHOWの花形
SEMA SHOWの会場を飾ったのは、自動車メーカーが製作したショーカーだけでなく、多くのチューニングショップ、メーカーが披露したマシンの方が圧倒的に数は多く、それらの車両は、カスタマイズショーであるSEMA SHOWの花形となっている。
ショーカーのカスタマイズは、世の中の流行によって志向が変化することが多い。少し前の日本車カスタマイズの時流は、「JDM」と呼ばれるド派手なグラフィックや奇抜なデザインで作り上げられたエアロパーツをまとった、スポーツコンパクト系の車両が会場の多くを占めていた。
しかし今回のSEMA SHOWでは、外観にカラフルなグラフィックを使ったクルマはそれなりにいたが、カーボン素材やボディーカラーでいえばマット(つや消し)カラーのモデルが多くなっているようだった。その種類もブラック以外にグレー、ブルーなどいろいろなパターンが出現している。
ベース車両で言えば、今夏に北米で発売が開始されたホンダ「CR-Z」「S2000」や日産「GT-R」「フェアレディZ」、三菱「ランサーエボリューションX」、スバル「インプレッサ」と、日本を代表するスポーツモデルが多くを占めていた。チューニングの内容だが、外観のカスタムももちろん重要視しているのだが、エンジンまわりまで手を入れたトータルチューニングを施している。見た目のカスタマイズに加え、より速さ、パワー、サーキットでのラップタイムを突き詰めたマシンが揃った印象だった。
今回は、会場内で注目を集めていた日本車のショーカーを中心に紹介しよう。
■カスタムCR-Zが多数展示
北米では、国内での登場から半年経った8月後半に発売が始まったスポーツハイブリッドのCR-Z。スポーツとハイブリッドの融合という新たなカテゴリーだけに、北米のアフターパーツメーカーやチューニングショップの注目度も日本車ではトップクラスと言える。
国産メーカーのリポートでもお伝えしたように、ホンダはHPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)が開発を行ったターボエンジンを搭載した「CR-Z Hybrid R Concept」を発表して話題を集めた。このコンセプトカーが、今回のショーのハイライトとなる存在だが、ホンダブースには、チューニングショップやメーカーが製作した8台のCR-Zも併せて飾られていた。
その中から特にカスタマイズされていた6台と、日本国内でも購入することができるカリフォルニアのカーボンパーツメーカー「SEIBON」のエアロパーツを装着した1台を紹介しよう。
●Bisimoto Engineering
大型のタービンを装着する「Bisimoto Engineering」のCR-Zは、1.5リッターエンジンをターボ化し、最高出力533HP/最大トルク45.2kgmを発生。ハイパワーに耐えるためにピストンやカム、スリーブは強化品に変更。室内では6点式のロールケージにサイドバーを装備し、ボディー剛性を高めている。
●Eibach Springs,Inc
スプリングメーカー「Eibach」が製作したCR-Zは、日常的に長距離を走ることの多い米国での使用を考慮し、優れた乗り心地を維持しつつルックスやスポーツ性を高めた「プロスポーツS」というコイルオーバーキットを装着。
また、エアロパーツはC-WESTとMUGENのものを組み合わせ、Custom Magnaflowのマフラーや、キャリパー、ロールケージと、トータルでチューニングしていた。
●SEIBON
米国では多くのレースシーンで採用されている「SEIBON」のカーボンパーツ。展示されていたCR-Zには、カーボンボンネット、フロントバンパー、サイドスカート、リアディフューザーを装着していた。
●Wraptivo
マットブラックとカーボンフィルムによって斬新なエクステリアに仕上げていた「Wraptivo 2011 CR-Z Type-F Concept」。外装パーツは純正オプションの装着に留まるものの、エンジンではHKSのスーパーチャージャーキットを装着して出力を向上。足まわりではテインの車高調整キットのほか、ブレンボのブレーキキットに変更されていた。
●DSO Eywear
「DSO Eywear」が製作したCR-Zは、外装のカラーリングが特徴的。パールホワイトストームシルバーの2色に塗装され、カーボンパーツやブラックをアクセントに使っている。エアロパーツはSEIBON製をチョイス。ホイールは、インパクトのある19インチを装着。
●Furtune Motorsports/Tjin Edition
車高ダウンやエアロパーツの装着によるルックスの向上と、日常ユースを考慮したカスタムを行っている「Fortune Samurai Gold」。注目すべきは、会場内のCR-Zで唯一エアサスペンション(Air Lift fully digital製)を装着していること。足まわりでは、ホイールを18インチに、またブレーキシステムはCustom Baer製に変更。
●Honda Tuning Magazine
「Honda Tuning Magazine」が製作したCR-Zは、ストリートでの使いやすいをコンセプトに作り上げた、「読者のお手本となるようなマシン」と言う。外装は、JDP Engineeringのカーボンパーツを装備するほか、ホイールはSSRの18インチアルミホイールを、サスペンションはテインモノフレックスを装着している。
■そのほかの日本車のカスタムモデル
CR-Z以外にも会場には数多くの日本車がカスタマイズされ展示されていた。メーカーの新作パーツが取り付けられたマシンや、チューニングショップが独創的なアイデアを盛り込んで作り上げたショーカーなど、国内のメーカー、ショップとは異なったアプローチが面白い。
BRASS MONKEY GT-R。SEIBONブースに飾られていたレース仕様のGT-Rで、ドライカーボン製のボンネット(5.6kg)やドア(3.63kg)、トランクリッド(2.5kg)を使用しており、これらにより車重は約1542kgまで軽量化されている |
66 PROJECT MVP GT-R。マットブラックの塗装とカーボンパーツ、カーボンシートにより、GT-Rをより迫力のある出で立ちに変貌させている。車高はKWの車高調整キットにより極限まで下げられ、アドバンの軽量ホイールを履く |
SEIBON EDITION 370Z。SEIBONのフロントバンパー、リアバンパー、サイドスカート、前後フェンダーを装備したフェアレディZ(Z34)。パールホワイトのカラーにカーボンパーツを合わせることで、スポーティさを引き上げた |
2003 NISSAN 350Z。SUPER GTに参戦するフェアレディZをイメージして製作された、ワイドボディーが迫力のZ33。大幅にワイドボディー化したことでフロント295、リア355サイズのタイヤを履く。排気系はパワーエンタープライズ製で統一され、エンジンはツインターボ化して出力アップを図っていた |
EVOX GSR“TR-444”。タイムアタック仕様のランサーエボリュ―ションX。外装はSEIBONのカーボンパーツとAPRのエアロパーツを採用。エンジンにも手が加えられていて、ギャレットのタービン、コスワースのカムを装着 |
bmi racing RX-8。カーボン柄の外装と極限まで軽量化された内装により、凄みを増しているRX-8。エンジンもかなり特徴的で、4ローターにチェンジ。リアにラジエターやファンを移植することで、エンジンルーム内のスペースを確保 |
2007 Sparco Mazda MX-5 Miata Time Attack Edition。ターボチャージャー搭載の2.3リッター MZRエンジンに換装したタイムアタック仕様のロードスター。内装は、ダッシュボード以外は取り外され、ロールケージを溶接付けしていた |
SEIBON EDITION PRIUS。ボンネット、フロントリップ、サイドスカート、リアリップをSEIBONのカーボンパーツに変更。その他にはアペックスのマフラー、RSRのスプリングを装着。会場内で唯一のプリウスだった |
OHIO TECHNICAL COLLEGE CERICA。日本でいえば自動車専門学校にあたるスクールが製作したセリカ。外観のグラフィックやカラーリング、内装のオーディオやワンオフのダッシュパネルなど、カスタマイズショップにも負けない仕上がりをみせていた |
■アワード受賞パーツの展示も
SEMA SHOWでは、前回開催からの1年間にメーカーやショップがリリースしたパーツを展示するコーナーが設けられた。電装パーツからチューニングパーツ、エクステリア&インテリアパーツ、タイヤ、ホイール、工具、専門店向けの道具など、ありとあらゆるパーツが飾られていて、対応車種のカテゴリーもサーキット系、ストリートユース、ホットロッド、SUV、4WDと細分化されている。展示された点数は合わせて1000点近くはあっただろう。細かく見ていくと、それだけで半日はかかってしまいそうな規模だ。
そして、カテゴリー分けされた「TIRE and Related Product」「Exterior Accessory Product」「Enginnered Product」の各部門には、最も優秀なパーツを表彰するアワードコーナーも設けられていた。この展示ブースを見れば、カテゴリー分けされた車種ごとにどのようなものが作られているのか、人気の車種やどのような系統のパーツが多いかなど、その年の流行をチェックすることができる。
TIRE and Related Product部門で受賞したのは、コンチネンタルのエコタイヤ「ProContact with EcoPlus」。転がり抵抗の少なさで燃費もセーブできるが、ウェット時のグリップが高く、そのテクノロジーが評価された。
Exterior Accessory Product部門で受賞したのはトラック用のバンパー「M1 Truck Bumper」で、2層のパウダーコートを施しているのが特徴となる。多くのトラックが標準的に装備していることが受賞理由と言う。
Enginnered Productで受賞したのは、電子スロットルをコントロールするペダルとスロットル本体を合わせたユニット「Drive-by-Wire Electronics Throttle Control」。GM、フォード、Mopar用を初めて作ったことが評価された。
コンチネンタル「ProContact with EcoPlus」 | トラック用バンパー「M1 Truck Bumper」 | 「Drive-by-Wire Electronics Throttle Control」 |
■その他注目の新作パーツ
(真鍋裕行)
2010年 11月 10日