2010 SEMA SHOW
母国開催に士気を高めるビッグ3など海外メーカーリポート

VOLTのカスタムモデルやマスタングのハイパフォーマンスモデルが登場

会場:11月2日~5日
会期:LAS VEGAS CONVENTION CENTER



 SEMA SHOWに出展している海外自動車メーカーは、米国ビッグ3(フォード、GM、クライスラー)と韓国のヒュンダイ、起亜、欧州勢では唯一アウディとなっている。

 アメリカンブランドの中でもっとも勢いがあるのがフォード。車両を展示している屋内ブースもそうだが、屋外のイベントスペースでは、エナジードリンクメーカー「MONSTER」カラーに塗られたフィエスタのジムカーナ仕様や、マスタングのレースカーが毎日デモランを行っている。この走行スペースでは、併せて新型車の試乗会も開かれている。

 韓国勢の2社も、スポーツ系のラインアップをカスタマイズして展示。アフターメーカーもヒュンダイ「ジェネシス」や起亜「フォルテ」のクーペをベースにデモカーを製作するなど、日本車ほどではないが、それなりの台数を会場内で目にする。

 それでは、各メーカーのブースに展示してある、代表的なクルマを紹介しよう。

フォード
 フォードは、マスタングの「2012 Ford Mustang Boss 302」というハイパフォーマンスモデルを発表した。1969年に発売された「BOSS 302」は、パワフルなエンジンがもたらす圧倒的な走行性能で“GTの開拓者”として賞賛されたモデル。

 その復刻版が2012 Ford Mustang Boss 302だ。エンジンは、鍛造ピストンやコンロッド、可変カムを組んだV型8気筒 5リッターを搭載。トラクションコントロールやスタビリティコントロールなどの電子デバイスも盛り込まれていて、単なる復刻版ではなく、現代の最新技術を投入した往年の名車と言える。

マスタングのハイパフォーマンスモデル「2012 Ford Mustang Boss 302」を展示したフォードブース2012 Ford Mustang Boss 302BOSS 302に搭載されるV8 5Lエンジン
ホイールは19インチでタイヤはピレリPゼロを履くステアリングやドアパネルは専用パーツ。シートはレカロ製

サインに応じるケン・ブロック選手

 そのほかには、2011年モデルの「フィエスタ」などのさまざまなカスタマイズバージョンを公開している。フィエスタは、来年度からフォードワークスチームがWRC(世界ラリー選手権)で使用する車両で、スポーティなドライビングを味わえる。

 特に注目を集めていたのは、DCシューズの創設者としても知られる、ケン・ブロック選手がドライブするジムカーナ仕様。テスト走行でも熱い視線を集めていたが、ブースでの注目度も高い。外装はほぼカーボンパーツで、室内も市販車の面影はない。リア部分にファンとラジエターを移設しているのが特徴だろう。

 また日本には未導入だが、先日フルモデルチェンジされた「エクスプローラー」2011年モデルのカスタマイズバージョンも展示している。新型エクスプローラーは、エクステリアを一新し、スクエアなデザインと大型グリルが特徴的。「Team Baurtwell」が製作したエクスプローラーは、24インチホイールや6ピストンキャリパー、レザーシートを装着している。

フィエスタのジムカーナ仕様
2011年モデルのエクスプローラー

GM
 GMブースの真ん中にポツンと展示されていたのが、“レンジエクステンダーEV”として各国から注目を浴びている「VOLT」。電気自動車でもカスタマイズを楽しめるというGMからの提案なのだろう。

 エンジン系をチューニングしているわけではなく、発表されているパーツは、あくまでも内外装のカスタムになる。ホワイトとブラックのツートーンで仕上げたレザーインテリアのほか、ホワイトのボディーカラーを基調として部分的に入るメッキモール、19インチアルミホイールなどのアクセントが特徴的。

シボレー・ボルト・Zスペック・コンセプト
センターコンソールやドアパネルを変更ホイールは19インチにインチアップされる
エンジン系はノーマル充電の差込口は、左フロントフェンダーに付いている

 スポーツモデルで注目を集めていたのが新型「カマロ」。GMブース以外でもあらゆるところで目にする1台で、会場内でもっとも多いベース車ではないかと感じる。エクステリア/インテリア、ホイール、エンジンパーツなど、さまざまなパーツが各メーカーから出ている。

 その中でGMが公開したカマロの1台が、この「SSX TRACK CAR CONCEPT」。サーキット走行を前提に作り上げられたモデルだ。

 エンジンはV型8気筒 6.2リッターをベースにカムシャフト、シリンダーヘッドを変更し、オイルラインをドライサンプ式に変更。エクステリアはカーボン製のエアロパーツを装備し、ホイールは20インチでレーシングタイヤを履く。インテリアは、シートを外す程度の軽量化のほか、安全性を高めるためのロールケージを装着する。

 このカマロに装着されるパーツはディーラーでも購入できると言う。

シボレー・カマロSSXトラックカーエディション
20インチのスリックタイヤを履く室内はサーキット走行用にロールケージを装着する
シボレー・コルベット・グランドスポーツ・JAKEエディション・コンセプト

クライスラー
 クライスラーは、グループの一員となったフィアット「500」やジープ「グランドチェロキー」、ダッヂ「チャレンジャー」などを展示している。

 フィアット 500は、同じブースということにはいかないのだろう、クライスラーブースとは離れた場所に置かれている。それでもエンジンルームを見ると、「MOPAR」というクライスラーの純正カスタムパーツが装着されていた。今後はMOPARブランドのアイテムが、フィアットにも採用されることになると予測される。また、「2010 FIAT 500 GT CONCEPT」と名付けられた車両は、MOPAR UNDERGROUND製作と記されていた。

フィアットブースは屋外に設置されている2010 フィアット500 GTコンセプトMOPARのパーツが装着された500

 一方のクライスラーブースでは、「チャレンジャー」のハイパフォーマンスモデルが発表された。「2011 DODGE CHALLENGER STR8 392」は、V型8気筒エンジンをベースにチューニングが行われ、470HP/470lb-ft(約65kgm)のパワーを出力。足まわりでは、ブレンボのブレーキキットに20インチホイールを装着していた。

2011ダッジ・チャレンジャーSRT8 392
MOPARのパーツを装備する新型ジープ「グランドチェロキー」

アウディ
 欧州勢唯一の参加となったアウディは、「カスタムコンセプト・アウディQ5」と最新技術を搭載した「TTS」を展示。

 「Autonomous Audi TTS Pikes Peak」と名付けられた車両は、Applanix製の「D-GPS」を搭載し、そこで得られる情報だけで自動運転できると言う。今年のテストでは、ボンネビルで最高速約208km/h、パイクスピークでは起伏とコーナーの連続する約19.8kmの道を走行することに成功した。

 この車両をコントロールするユニットは、カメラを搭載することなくGPSの演算だけで走行している。開発はスタンフォード大学の研究室と共同で行っているそうだ。

Autonomous Audi TTS Pikes Peakトランク内にはGPSの信号を受信して演算するシステムを搭載

 カスタムコンセプト・アウディQ5は、エンジンをS4に搭載されるV型6気筒 3リッターTFSIに換装し、90mmのワイドトレッド化、60mmのローダウンとスポーティに味付けしたモデルとなる。

 エンジンは408HP/500Nmを発生し、0-100km/hを4.4秒で加速するパフォーマンスを持っている。このパワーアップにあわせ、ブレーキもセラミック製に変更し、全体的にパフォーマンスを向上させている。

カスタムコンセプトAudi Q5
エンジンはS4のV型6気筒 3リッターTFSIに変更しているホイールは21インチで、ブレーキも大径モデルを装着

今年のパイクスピークヒルクライムを走ったタイムアタック車両

ヒュンダイ
 ヒュンダイブースには、「ジェネシスクーペ」をベースに、ARK PERFORMANCEがチューニングしたデモカーが展示されていた。

 エンジンは、日本でも販売されている直列4気筒2リッターターボモデルではなく、V型6気筒 3.8リッターにスーパーチャージャーを組み合わせ、出力されるエンジンパワーは585HP/45.6kgmと、ノーマルよりも200PS以上のパワーアップを実現している。

 エクステリアにはカーボンボンネットやトランク、サイドステップなどが装着され、どことなく日本のチューニングモデルと似ているところもある。ちなみに、足まわりではCUSCOのコントロールアーム、ピロボールなどが付いていた。

2011ヒュンダイ・ジェネシス
マフラーはチタン製ブレーキキャリパーは6ピストン
ロールケージ、スポーツステアリング、バケットシートが装備される

起亜
 ヒュンダイグループの一員である起亜は、「フォルテハイブリッド」をベースにしたコンセプトカーと、「フォルテクープ(2ドアクーペ)“TYPE R”コンセプト」を展示。
 
 韓国国内ではすでに発売されているフォルテハイブリッドをモディファイしたコンセプトモデルは、スプリングを変更することでローフォルム化。ホイールも17インチを履き、ハイブリッドモデルでの内外装カスタムを楽しむ提案がなされる。

 一方のフォルテクープは、オーバーフェンダーやディフューザーなどのエアロパーツをまとい、マッドグレーにカラーリングされたストリートスポーツモデル。ブレーキもアルコン製のキャリパーに変更されている。

フォルテハイブリッドコンセプト
フォルテクープ“TYPE R”コンセプト

(真鍋裕行)
2010年 11月 5日