【東京オートサロン2011】 NISSAN GT-R(R35)特集 チューニングシーンの主役になりつつあるR35 GT-R |
2007年末に発売された日産自動車のフラグシップスポーツカー「NISSAN GT-R」。その型式からR35 GT-Rと呼ばれることが多いこの車種は、登場当初、チューニングや改造、カスタマイズが御法度という噂が業界を駆け巡り、チューニング業界から大反発を喰らったものだが、現在はだいぶ状況が変わりつつある。
カスタマイズをした部分に関連する個所や改造に起因する個所についてのメーカー保証は切れるが、違法改造でない限りは、日産での有償メンテナンスは受けられる……ということが公式にアナウンスされている。つまり、一般的な車種と、保証条件はそれほど変わらないということなのだ。
また、2010年末を迎えたことで、発売後丸3年が過ぎたR35 GT-Rは、今年から続々と初車検時期がやってくるオーナーカーが増えてきており、残価設定クレジットで購入したユーザーも今年以降、続々更新時期を迎えることになる。さらに、2011年モデルのR35 GT-Rがフルモデルチェンジにも等しいほどのビッグマイナーチェンジを受け、前期型のR35 GT-Rからの買い替え派の増加も見込まれている。
つまりは今年、2011年以降は、良質なワンオーナー中古車のR35 GT-Rの増加を見込め、これを受けて、新車では高価すぎて手を出せなかった旧来のスポーツカーファンが買い求めていくムーブメントを予測できるのだ。
こうした流れを受けてか、チューニング業界では、昨今、R35 GT-Rのチューニングパーツの開発が急ピッチに進んでおり、1月14日に開幕した「東京オートサロン2011 with NAPAC」(東京オートサロン2011)では、例年にも増して、R35 GT-RのデモカーやR35 GT-Rの新しいチューニングパーツの展示が目立っていた。
本記事では、そうしたR35 GT-Rにフォーカスして、各種カスタムカーやカスタムパーツをお届けする。
「この手があったか」と感心する顔立ちの作り込み |
■AXELL~クールな顔立ちが魅力のオリジナルバンパーフェイスはコンプリートカーとしてのみ提供される
会場を歩いていて「ベースは一体なんの車種だ?」と感じることは少なくないオートサロンだが、R35 GT-Rの面影を色濃く残しながらも「まったく別の車種に見える」独創的なデザインを施したチューンドGT-Rを披露していたのはAXELLだ。
なんといっても目を惹くのは純正状態の面影を完全に消し去ったフロントバンパーの開口部デザインだろう。ヘッドライトの目元のデザインもシャープに化粧され、縦に並んだLEDデイライトのアクセントもクールで、これだけモディファイしても違和感のない顔立ちに収まっているのは感動的。
ちなみに、このAXELL R35 GT-Rだが、驚いたことに単品のエアロ販売の予定はないのだと言う。
AXELLが想定しているのは、AXELLチューンドのコンプリートカーの販売で、ベース車両にGT600キットを組み込み、エンジンにまで手を入れた商品で2200万円程度を想定しているとのこと。
担当者によれば「外装、内装のカスタム性の高さは純正のEGOISTの上を目指している」とのことて、ボディーや内装の配色は、ほとんど制限なしでカスタムが可能だと言う。
2月以降に、正式なAXELLコンプリートカーとしてのR35 GT-Rの提供メニューを公開するとのことだが、やはり問い合わせはエアロについての質問が多いそうだ。担当者曰く「AXELLの工房に実車を預け入れることができるお客様についてはエアロ装着のみでも前向きに検討したい」とのことだった。エアロ単品販売ができないのは「装着の際に、どうしてもオリジナルボディー側への加工が必要となるため」と言う。
エキゾチックでセクシーな顔立ちのAXELLのエアロデザイン | ||
カスタム対象はエアロ部分、メカ部分だけでなく、内装にまで |
メインの開口部を下絞りにして、ライトの目元を鋭く延長したデザインが特徴的なトミーカイラのフロントバンパー。カピバラみたいなひょうきんな純正デザインが、ここまで格好よくなる! |
■トミーカイラ~あの衝撃のデビューを果たしたトミーカイラのエアロがリファイン
その後のR35 GT-Rのルックスに大きな影響を与えたトミーカイラのR35 GT-R用のエアロパーツ。特に純正ではヘッドライトの目元を切りかけにしているところを鋭く延長するパンパーフェイスのデザインテイストは、後の他社製エアロにも数多く取り入れられた経緯がある。前述のAXELLもそうだし、後述のPhoenixでも、この味わいを取り入れている。
その新しいデザイン潮流を生んだトミーカイラのエアロの、2011年仕様は、どこが変わったのだろうか。担当者によれば、「2011年仕様のトミーカイラ R35 GT-RエアロのキーワードはLEDですね」とのこと。
フロントバンパー側で、まず目に付くのがヘッドライト下のLEDデイライト。2011年モデルの日産の純正デザインにもLEDデイライトが配されたが、2段整流フィンに埋め込んだようなデザインで「取って付けた感」が否めなかったが、このトミーカイラのフロントバンパーは、「そこにあるべき」という説得力が伴っているように見える。下絞りのメイン開口部と左右のサブダクトのデザインアクセントを調和させる役割も、このLEDデイライトが果たしているようにも見える。
このほか、リアディフューザーにフォグランプをあしらったのも2011年トミーカイラの特徴。これはZ34 フェアレディZの純正フォグランプをベースに25個のLEDを装着したものを取り付けている。
新エアロの価格については、トミーカイラの公式サイトの方をチェックしてほしい。
LEDが格好よく決まっているトミーカイラ GT-R | ||
内装のカスタマイズも請け負う |
デモカーのホイールは21インチ! これは横浜ゴムの「F15」だ。タイヤは純正品ではなく、適合サイズのものを履くことになる |
エンドレスブースのデモカー。足まわりなどがエンドレス製パーツに換装されている |
■エンドレス~φ430mmのビックローター採用のブレーキシステムキットを展示
パーツメーカーのエンドレスはR35 GT-Rのブレーキパーツ、およびサスペンションパーツの展示を数多く行っていた。
なかでもイチオシは、2011年発売予定の新開発φ430mmのブレーキローターと高剛性モノブロックキャリパー「Racing Mono6」を組み合わせたR35 GT-R用フロントブレーキ・アップグレードキット。価格は未定。
商品に含まれるφ430mmブレーキローターは、厚み36mmと38mmの2種類が設定され、36mm厚の方は2010年モデルまでのφ380mm(2011年モデルではφ390mm)の純正と同じ11.3kgで、バネ下重量増にならないのもウリ。ブレーキローターは冷却性に優れた多ベーン構造で、そのベーン総数は108個。
2010年モデルまでの純正ブレーキローターはφ380mmなので、50mmのサイズアップとなり、相当なストッピングパワー強化に繋がるが、純正の20インチホイールでは干渉してしまうために組み合わせることができない。このシステムキットに組み合わせるホイールとしては、エンケイから発売される「GTC01」が奨励されている。
φ430mmの巨大ブレーキローターとエンドレスの高剛性モノブロックキャリパー | デモカーでの装状態 |
このほか、R35 GT-R用サスペンションとして、ストリートユースにフォーカスした「FunctionXプラス」、ユーザーのわがままに対応するフルカスタムオーダーメイドの「Function.COM」の2011年中のリリースが発表されている。
FunctionXプラスは価格は未定としながらも24万円以下を想定。発売時期は未定。Function.COMは24万3000円が最低価格で、仕様によって価格が上昇していく。こちらも発売時期は2011年内を予定しているが詳細は未定だ。
ブースでは、FunctionXプラスは他車種用のものしか展示されていなかったが、Function.COMではR35 GT-R用が展示されていた | エンケイの新作ホイール「GTC01」は、ビッグキャリパー、ビッグローターとの干渉を避けるための"逃げ"が設けられているスペシャルデザインが特徴。エンドレスのφ430mmブレーキシステムキットにも対応 |
■Kansaiサービス~ユニークな製品を2011年も投入
昨年、社名をHKS関西サービスからKansaiサービスに変えた同社は、近年、精力的にR35 GT-R用のパーツ開発を行っている。同社の開発したR35 GT-R用のフロントLSDやトランスミッションクーラーは、R35 GT-Rのチューニングに大きな影響を及ぼし、後に各社から同型製品が発売されたほど。そんなKansaiサービスは、2011年もユニークな製品をどんどん投入してくるようだ。
新開発の「リアサスペンションピロアーム」はリアの足まわりの最適化に貢献する製品で、発売は2月を予定。オートサロン特別特価4万2800円(通常時5万400円)で提供中の「カーボンブレーキダクト」も、今年イチオシの製品だそうで、フロントバンパーのリップ部分に穴開け加工して、ブレーキ側に走行風を導き入れる役割を果たす。
リアサスペンションピロアーム | カーボンブレーキダクト | Kansaiサービスの人気商品「フロントLSD」(右)。ノーマルではオープンデフのフロントLSDを機械式に変更できる。コーナリング時の脱出にフロントがパワフルに引っ張ってくれるようになる |
また、前述したトランスミッションクーラーはさりげなく、価格据え置きでリニューアルを施したとのこと。従来型のクーリングコアが36mm厚だったものが、48mm厚に肉厚化され、さらに冷却性能が向上している。これは最近の、ハードチューニングされたR35 GT-Rの増加傾向に対応の意味が含まれているのだとか。なお、トランスミッションクーラーは2011年モデルには未対応。これは配管径が違うためと言う。
トランスミッション・オイルクーラー・KITがリニューアル。従来の製品でもノーマル状態の車両に組み合わせる分には性能的に問題ないとのこと | Kansaiサービスのストリートスペックデモカー | Kansaiサービスのサーキットスペックデモカー |
■RH9グループ・ブース~R35 GT-Rのデモカーやチューニングパーツが目白押し
高度な技術を持つチューニングショップの連合体であるRH9グループのブースにも、R35 GT-Rに関連した展示は多い。現在、RH9では、加盟店同士で連携してパーツ開発をしたり、エンジン/トランスミッション制御コンピュータ(ECU)の解析などを進めており、メーカー側が踏み込まないような細かい領域のパーツ開発にまで乗りだしている。
TOP SECRETが今年のオートサロンでイチオシしていたのは、エアロボンネット、バンパー、そして、可変式リアウイングのエアロパーツ群だ。
エアロボンネットは複数のフィン形状の開口部が左右に縦に並んだタイプで、いかにも冷えそうな製品。価格は27万3000円だが、オートサロン会期中は21万8400円で販売。バンパーは、純正2011年モデルライクなデュアル整流フィンをあしらったデザインが特徴的。可変式リアウイングは特に問い合わせの多い人気商品だそうだ。
一見すると純正と見間違えそうだが、純正デザインを継承した形でワイド化&ハイマウント化している。ちなみに純正10cmに対して15cmのハイマウント仕様に、幅は純正140cmに対して150cmへと拡大している。
取り付けには純正取り付け穴が利用可能で、純正のハイマウントランプを移設できるのも魅力。価格はカーボン製が17万8500円。FRP製が14万7000円。オートサロン期間中は、フロントバンパーとリアウィングをセットにして総計価格の20%引きの48万7200円の特別価格で販売される。このほかにも20%OFFのオートサロン価格の商品が数多くラインアップされている。詳細はTOP SECRETのオフィシャルサイトを参照のこと。
TOP SECRETのフロントバンパーとエアロボンネット | 純正ライクな美しいデザインのリアウイング。ちなみに車検対応 |
TOP SECRET BB700タービンキットを搭載した700馬力仕様のチューンドGT-R |
JUNオートメカニックは、チューニングがよりエンジン本体側に移っていくことを想定して、エンジンチューニングパーツのラインアップを整備しつつある。純正では3.8リッターのV6エンジンを4.2リッター、4.0リッターにスープアップするキットや、よりハイレスポンスな吹け味が楽しめるカムシャフトキットなどが来場者の注目を集めていた。
JUNオートメカニックのデモカー | ハイリフトカムシャフト。価格は4万4100円より。写真のはレギュラー仕様で5万400円 | 4.0リッター化キット |
4.2リッター化キット | 4.0リッター化キット用エンジンブロック | 4.2リッター化キット用エンジンブロック |
PHOENIXブースでは、R35GT-R用のAlcon Racingモノブロックキャリパーを含む新ブレーキシステムを発表。ブレーキローターはフロントφ400mm×36mm厚、リア385mm×33mm厚で、純正状態よりもスケールアップしているのが特徴。ブレーキパッドやブレーキホースも付属して、価格は138万円を想定(輸入品のため価格の変動あり)。
このほか、注目されていたのは新発売のデザインのエアロシステム。目元を切れ長にし、2011年モデル純正デザインライクな2段整流フィンをあしらった落ち着いたデザインが、なんともクールだ。
R35 GT-R用のAlcon Racingモノブロックキャリパーを含む新ブレーキシステム | 2010年モデル以前のユーザーにとっては、最新型デザインのテイストを取り入れられる魅力もある | 塗装料金や価格も発表された |
■ロータリーのRE雨宮にR35GT-Rのチューニングを依頼できる!?
ロータリーマシンのチューニングで世界的に有名なRE雨宮が代理店を務めるM7JAPANも、R35 GT-Rのパーツ開発、販売に乗り出した。
基本的に、RE雨宮は代理店を務めるだけの立場だが、希望があれば、RE雨宮に車両を預け、パーツの取り付けを依頼をすることも可能なのだとか。RE雨宮の店舗前にRX-7/RX-8とR35GT-Rが並ぶ日も近い?
M7JAPANパーツが取り付けられたR35 GT-R | R35 GT-R用サスペンションキット | |
R35 GT-R用マフラー | R35 GT-R用インタークーラー。左右結合デザインが特徴。重量は12kg | R35 GT-R用ブレーキキャリパー |
R35 GT-R用エアクリーナー。新製品で2月に9万円程度で発売予定。パイピングキットを含んでこの値段は破格? |
■そのほかのR35 GT-R
Optionブースには有名ショップやチューニングパーツメーカーが手がけたチューンドR35 GT-Rが、多数展示されていた。
このブースに出展していた各メーカーの担当者などに、2011年モデルに、現状のR35 GT-R用パーツが適合できるのかを聞いてみたところ、「まだテストできていない」と答えるところが多かった。配管やパイピングの直径なども、2011年モデルとその前のモデルとではまったく違っていたりするため、今後、検証を進めていく必要があるとのことだ。
駆動系やエンジン系のパーツはもちろん、マフラーやクーリング系のパーツにしても、2011年モデルに適合するかをよく確認してから購入したほうがよさそうだ。
なお、あるメーカーの担当者は、「今後は2010年モデル以前と2011年モデル以降とでは、パーツ品番を変えたり、2011年モデル対応キットを別売にする……といった解決策が必要だろう」と述べていた。R35GT-Rの2011年モデルは出たばかりであるため、対応はこれからで、逆にいうと、「ここしばらくのチューニングベースの主役は2010年モデル以前」ということになりそうだ。
なお、エアロパーツに関しては2011年モデルでも利用ができることが多いようなので、2011年モデルオーナーは、エクステリアのカスタマイズから始めるとよいのかも知れない。
トミーカイラのエアロをまとったR35 GT-Rの赤バージョン。ただし、ドアはカウンタックのような、前方跳ね上げ式のものにモディファイされている | ||
Mine'sのチューンドR35 GT-Rは2011年モデルがベース。出たばかりの2011年モデルにもチューニングの幕開けが!? |
なお、トラストの担当者は、R35 GT-Rのチューニング事情に関してユニークな意見を述べており、「R35 GT-Rのパーツは高価なものが多いが、今後、中古のR35 GT-Rが出回るにつれて、いわゆる裕福層以外の一般ユーザーも手を出し始めるはず。そうなったときにはコストパフォーマンスのよいパーツが高い評価を得られるはず。2011年以降、トラストでは、そうしたコンセプトのパーツの開発に注力していく」とのこと。
トラストだけでなく、ほかのチューニングショップやチューニングパーツメーカーもほぼ同様の考えのようで、今後、ますますR35 GT-Rのチューニングは盛り上がりを見せていくことだろう。
(トライゼット西川善司)
2011年 1月 15日