【オート上海2011
多数のモデルをワールドプレミアした欧州メーカー

「コンセプトAクラス」「Q3」「コンセプトM5」「MINIインスパイアード・バイ・グッドウッド」など

「コンセプトAクラス」を発表したダイムラーAG ディーター・ツェッチェ会長



アンベールされるコンセプトAクラス

メルセデス・ベンツ
 メルセデス・ベンツブースでは、次期Aクラスを示唆したコンセプトモデル「コンセプトAクラス」が披露された。

 現行型よりもワイドかつローフォルムになり、3ドアハッチバックながらクーペのような流麗な形状に仕上がっている。フロントフェイスのデザインは、昨年のジュネーブショーで発表された4ドアクーペのコンセプトカー「F800スタイル」の流れを汲んでいる。グリルやフロントダクトにはメタリックシルバーのドット柄を用いていて、独創的な容姿を作り上げている。サイドビューも特徴的で、フェンダーからつながる上部のラインに下部からのラインが交わり、サイドステップの形状と合わせてグラマラスな様相を呈している。

 搭載されるのは新開発の直列4気筒 2リッターエンジン。直噴ターボ化されたエンジンは210PSを発生するハイパフォーマンスながら、同社の環境性能に優れたモデルだけに付けられる「ブルーエフィシェンシー」でもある。組み合わされるトランスミッションは、7速ギアを持つデュアルクラッチタイプ。

 インテリアも独創的で、複眼メーターやエアコン噴出し口、センターコンソールの操作スイッチなどは丸型を基調にしたデザインとなる。ダッシュボードに置かれた17.8cmのモニターはスマートフォンと接続することが可能で、Eメールやツイッター、フェイスブック、インターネットラジオなどのアプリケーションを操作できる。

 その他の機能として、衝突事故を防ぐためのレーダーシステムを同セグメントでは初めて採用した。前車が近づくとブレーキをアシストし、衝突を低減すると言う。

クーペのような流麗な形状のAクラスコンセプト。ホイールは20インチを装着する
インテリアはピンクを効果的にあしらった配色を採用

Q3を発表するアウディのプレスカンファレンス

アウディ
 アウディは、SUVラインであるQシリーズのもっとも小さなモデル「Q3」が初公開された。

 ボディーサイズは4390×1830×1600mm(全長×全幅×全高)。数値的にはA3スポーツバックをやや大きくしたくらいだが、実際に見るとより広く高いサイズで、押し出しの強いフロントまわりなども相まってサイズ以上の迫力がある。

 実用性も十分で、後席は6:4の分割可倒式を採用し、460Lのラゲッジスペースは両側を倒すことで1365Lまで拡大する。

 パワートレーンは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが用意される。ガソリンモデルは170PSと211PSで、ディーゼルモデルは140PSと177PSの計4モデルをラインアップ。全て直列4気筒の2リッターエンジンで、ガソリン、ディーゼルともにハイパワーグレードは4WDのクワトロ、それ以外は2WDになる。

Q3 2.0 TDIクワトロ
インテリアはアウディらしく質感の高い仕上がり
トランスミッションはSトロニックラゲッジスペースは十分な広さを確保する

A3 e-tronコンセプト

 また、事前発表されていなかったが、ジュネーブショーで初公開されたA3コンセプトのハイブリッドモデル「A3 e-tronコンセプト」も披露された。ディメンションやボディーデザインはA3コンセプトと同様で、違いとしてはバンパーダクトの形状が多少異なるのが分かる程度だ。

 エンジンは直列4気筒 1.4リッターの直噴ターボに20kWのモーターが組み合わされ、トータルの出力は238PS。バッテリーはリチウムイオン電池で、容量は12kwh。モーターのみのEV走行も可能で航続距離は54kmとなっている。トランスミッションは7速デュアルクラッチのSトロニックを採用。バッテリーの搭載により、車重はA3コンセプトより重く1820kgとなっている。

BMW
 BMWは2台のニューモデルを上海ショーで公開した。

 1台は2009年にモデルチェンジを行った、5シリーズのハイパフォーマンス版「コンセプトM5」。注目すべきは、先代モデルのV型10気筒 自然吸気エンジンからV型8気筒ツインターボに変更された点。詳細なスペックは明らかになっていないが、エンジン出力は確実にアップしていると言う。その一方で燃費性能は25%以上の向上をマークしているそうで、アイドリングストップ機能も組み込んでいる。トランスミッションは、7速のMダブルクラッチ。新開発エンジン用に専用チューンを施したもので、シフトチェンジのスピードを最適化している。

 エクステリアでは空力を追求した専用のボディーパーツを装着し、フロントバンパー、リアディフューザーなどフロア下のエアロダイナミクスは高次元の空力処理を行う。

V型8気筒ツインターボエンジンを搭載したコンセプトM5。出力の向上と燃費改善を両立したと言う。タイヤサイズは265/35 R20

 もう1台のワールドプレミアは6シリーズのクーペモデル。ラインアップされるグレードは「650i」と「640i」の2種類。650iはV型8気筒 4.4リッターツインターボエンジンを搭載し、最大出力407PS、最大トルク600Nmを発生する。640iには、直列6気筒 3リッターツインターボエンジンが搭載され、最高出力は320PS、最大トルクは450Nm。こちらにはアイドリングストップ機能が装備される。トランスミッションは両モデルともに8速AT。

 ボディーデザインは、ボンネット、サイドビューともに流れる波のような美しさを表現している。ボディーサイズは全長4894mm、ホイールベース2855mmで、現行モデルより若干大きくなっている。さらに全幅では39mm、全高では5mmサイズアップした。

6シリーズクーペ 650i
6シリーズクーペ 640i

MINI
 ロールス・ロイスとMINIという英国の伝統的なブランドによるコラボレーションが生んだのが「MINIインスパイアード・バイ・グッドウッド」。

 2012年春に限定1000台で販売されるというこのMINIは、ロールス・ロイスの本社があるイングランド南部のグッドウッドで各部がデザインされた。

 インテリアは、ロールス・ロイス特有の「コーン・シクル」と呼ばれるベージュにカラーリングされる。インパネとドアハンドルもウォールナット仕上げが施されていて、ここからもロールス・ロイスの面影を感じることができる。ウッド素材は、MINIインスパイアード・バイ・グッドウッドのために厳選されたプレミアムなものとなる。その他には、レザー張りのシートやステアリングなどが装備される。

 ボディーカラーは、専用のダイヤモンド・ブラック(メタリック)を使用。こちらもロールス・ロイスのデザイン部門が作り出したオリジナルカラーとなる。

2012年春に限定1000台で販売されるという「MINIインスパイアード・バイ・グッドウッド」
インテリアはロールス・ロイスのクラフトマンシップを感じさせる

パナメーラターボよりもさらに出力を向上させたV型8気筒 ツインターボエンジンを搭載するパナメーラ ターボS

ポルシェ
 パナメーラの最速モデルとなる「ターボS」。同社の上海ショーにおける中核をなす車両で、モーターショーでの展示は初となる。

 パナメーラターボよりもさらに出力を向上させたV型8気筒 ツインターボエンジンは、最高出力550PS、最大トルク750Nmを発生。ターボチャージャーをチタニウム・アルミニウム合金製にすることでレスポンスを向上させるとともに、エンジン制御を変更することでパワーアップを果たしている。また、キックダウンの際やスポーツモードをセレクトすればオーバーブースト機能が作動し、最大トルクが800Nmまで引き上げられる。

 0-100km/h加速はローンチコントロールを使って3.8秒、最高速度は306km/hをマークする。これだけのハイパフォーマンスながら環境性能が高いのも特徴で、欧州NEDCモードでは100km/11.5L(約8.7km/L)をマークしており、パナメーラターボよりも数値上では好燃費を記録している。

パナメーラ ターボS

プジョー
 プジョーは2台のモデルを初公開した。

 まず、上海にあるテクニカルセンターが独自にデザインしたクロスオーバーのコンセプトカー「SXC」は、中国国内で支持されるボリュームゾーンに位置する。

 SXCのエクステリアは、昨年のジュネーブショーで発表した「SR1」のデザイン要素を踏襲。フェンダーから伸びるサイドラインはリアのブーメラン型テールレンズまで続き、SUVらしい力強さと腰高な印象を与えるほか、スポーティさも十分に感じ取れる。

 ボディーサイズは4870×2035×1610mm(全長×全幅×全高)。パワートレーンは、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドで、フロントに直列4気筒 1.6リッターエンジンを搭載し、リアをモーターで駆動させる4WDシステムを採用。ディーゼルエンジンを使ったハイブリッド4のガソリンエンジンモデルになる。

SXC

 もう1台は、欧州ではすでに発売が開始されている「508」の中国仕様車。外観こそほぼ欧州仕様と変わらない508だが、中国国内の工場で生産されると言う。今後生産される508セダンの2台に1台は中国で販売される予定で、通年では6万5000台の販売を見込んでいる。それだけ508は中国で重要なモデルとなっているようだ。

508(中国仕様車)

シトロエン
 往年の名車「DS」の名を付けたシトロエンの高級ラインがDSシリーズ。その第3のモデルが「DS5」となる。

 パワートレーンは、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド4を採用。すでにプジョー「3008」に搭載しているが、シトロエンのモデルとしては初めての組み合わせとなる。4気筒2リッターのディーゼルターボエンジンがフロントに置かれ、リアはモーターで駆動する。

 走行モードは「オート」「スポーツ」「ゼロエミッション」「4×4」の4つから選択でき、シチュエーションによってEV走行からモーターとエンジンの両方を使ったパワフルな走行をセレクトできる。モーターとエンジンの最高出力はトータルで200PS、CO2の排出量は99g/kmという環境性能の高さを誇る。ボディーサイズは、4520×1850×1500mm(全長×全幅×全高)。DSラインとしてはもっとも大きく高級なレンジとなる。

DSラインとしてはもっとも大きく高級なレンジとなるDS5。インテリアは上質のナッパレザーを使用

 「SURVOLT」は、ジュネーブショーで公開された電気自動車(EV)の2ドアクーペコンセプトカー。モーターとリチウムイオンバッテリーを2個ずつ搭載したスポーティモデルで、最高出力は300PS以上。カラーリングがジュネーブショーからアップデートされ、上海ショーオリジナルとなっていた。

SURVOLT

ボルボ
 ボルボが発表した「CONCEPT UNIVERSE」は、現在フラッグシップとしてラインアップされている「S80」の1クラス上に位置するプレミアムセダンのコンセプトモデル。つまり、1990年代に販売されていて、現在はラインアップにない「S90」の後継となる。

 スタイリングは全高が低く抑えられ、ルーフからリアエンドまでのラインはクーペライクに仕上がる。フロントグリルは、ボルボらしい大型のメッキグリルを採用するが、ヘッドライトのデザインなどは現行モデルとは一線を画している。

 インテリアもスカンジナビアデザインの特徴を活かし、ドライバーやパッセンジャーの要望する機能性とデザインの豊かさをミックスさせた仕様となるはずだ。現時点では詳細のスペックなどは公開されていないが、ボルボの新しいフラッグシップセダンを示唆していることは間違いない。

「S90」の後継モデルと予想される「CONCEPT UNIVERSE」

ランボルギーニ
 ランボルギーニが会場で公開したのは、3月のジュネーブショーでワールドプレミアを行ったムルシエラゴの後継車種になる「アベンダドールLP700-4」。アジア地域では初披露となる。

 また、プレスデー初日の夜にはメディア向けのレセプションが催され、特別仕様車となる「ガヤルドLP550-2トリコローレ」が初公開された。イタリア独立150周年を記念したモデルで、イタリア国旗の「ホワイト」「グリーン」「レッド」の配色が特別仕様の証。

 エクステリアは、赤と緑のストライプで仕上げられ、インテリアはシートがオリジナルのトリコローレ仕様。サイドシルにはトリコローレのプレートが配備される。ベースとなるLP550-2は、ランボルギーニのラインアップで唯一の後輪駆動となるモデル。このモデルは、すでに欧州、中東、アジア地域で受注を開始している。価格はベースとなるLP550-2よりも約3%高くなる。

アベンダドールLP700-4
ガヤルドLP550-2トリコローレ

(真鍋裕行)
2011年 4月 25日