【2012ジュネーブショー
メルセデス・ベンツが新型「Aクラス」をワールドプレミア


2012年3月8日~18日(現地時間)
スイス ジュネーブ
GENEVA PALEXPO



 毎年3月に開催されるジュネーブ・サロンは、ヨーロッパの自動車業界において重要な位置を占めている。永世中立国という土壌がある上に、自国に自動車産業を持たないこともあって、各国の自動車メーカーにとってメディアに向けて公平に情報発信できる場所である。ヨーロッパにおけるその年始めてのショーゆえに、年次報告を兼ねた重要な発表が行われることが多い。

 加えて、季節柄、春を待つヨーロッパの人たちに向けて数多くのオープン・モデルが発表されたり、古くから“スーパー・スポーツカーの産地”として知られる北イタリアからアルプス山脈を越えれば数時間の距離にあることもあって、華やかなモーターショーとしても知られている。同時に、スイスは環境先進国でもあるため、エコカーや低燃費のコンパクトカーのお披露目も少なくない。

 今回のショーの目玉のひとつが、メルセデス・ベンツが新型「Aクラス」の発表だ。ひと目見て驚いたのは、2011年の上海モーターショーにて発表された「コンセプト・Aクラス」とかなり近いスタイリングで発表されたことだ。

 通常、コンセプトカーのときに斬新なデザインでも、実際に発表されるときに斬新さが反映されていることは少ない。ダイヤモンド型のディテールを組み合わせたグリル、エッジの効いたサイドビュー、ぐっと絞られたリアビューと、各所にメルセデス・ベンツがこのセグメントにかける気合が見て取れる。

 実は、フォルクスワーゲン「ゴルフ」に代表される「プレミアム・コンパクト」のセグメントで、メルセデス・ベンツは出遅れた感が否めなかった。初代では安全性と燃料電池のような将来技術の搭載を視野に入れて2重フロアの“サンドイッチ・コンセプト”を採用した結果、全長が短く、背が高いフォルムが特徴的だった。しかし、3代目では全長を70mm近く伸ばして、反対に全高を16cmも低めた。その結果、Cd値は0.26と、このクラスでも突出した数値を得た。

 スタイリングに加えて、もうひとつのこだわりが“コネクティビティ”だ。ディーター・ツェッチェ 会長自らが「車輪の上のiPhone」と称するとおり、iPhoneを車載システムに組み込んでフェイスブックやツイッターなどの各種ソーシャルネットワークにつながることができる。メルセデスは、このサービスを企業レベルでアップルから正式に提供される最初のユーザーとなる。エントリークラスのオーディオでも対応する点が評価に値する。

 十八番である安全性についても、トピックスがある。「コリジョン・プレベンション・アシスト」と呼ばれるシステムは、レーザーをベースにした後方予防安全システムが搭載される。アテンションアシスト、プレーセーフといった上級モデルに搭載される安全システムも、このクラスに初採用となる。

 搭載されるパワートレーンは、ガソリンが、最高出力115PSと156PSの1.6リッター直列4気筒ターボユニット、最高出力211PSを発揮する2リッター直列4気筒ターボユニットの3機種。ガソリンエンジンには、吸気側に「カムトロニック」と呼ばれるバルブリフト量可変機構が採用されている。

 最高出力109PS/250Nmと136PS/300Nmの1.8リッター直列4気筒ターボ・ディーゼル、170PS/350Nmを生む2.2リッター直列4気筒ターボ・ディーゼルはすべて新設計となる。それらに6速MTまたは「7G-DCT」と呼ばれるデュアル・クラッチ機構が組み合わされる。今回、メルセデスとしては初めてCO2排出量が99g/km以下のモデルが登場した点も注目だ。

 ターゲットは、いわゆる「ジェネレーションY」。従来、メルセデスのユーザーはドイツ本国でも年齢が高い傾向にあり、BクラスやAクラスの顧客も決して若いとはいい難かった。しかし、新型Aクラスの若々しいスタイリングと使い勝手のよいデジタル装備の充実によって、今度こそ若者の心をつかめそうな気がする。

ジュネーブショー 2012 レポートリンク集
http://car.watch.impress.co.jp/backno/event_repo/index_c270s1407.html

(川端由美)
2012年 3月 12日