オート上海2013
国内メーカーは中国市場をターゲットにしたコンセプトカーや市販車を多数出展
(2013/4/26 18:48)
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、過去最大の4600㎡という展示スペースに52台の車両を並べ、新型「ヤリス」に加えて「云動双撃II(ユンドンショワンチンツー)」と「FT-HT悦佳(ユエジャ)」の2台のコンセプトカーを初公開した。
新型ヤリスと3月のバンコクモーターショーで初公開された新型ヴィオスは、グローバル戦略車のコンパクトモデル。ともに昨年の北京モーターショーで発表されたコンセプトカー「チン」のセダンとハッチバックをベースにした市販車。新型ヤリスの詳細は公表されていないが、同じBプラットフォームを用いたモデルで、国内で展開する「ヴィッツ」よりもややボディーサイズが大きく見える。新型ヴィオスに関しては、今年の末から中国国内で生産と販売を順次開始することが発表されている。
コンセプトカーの「云動双撃II」は、昨年の北京モーターショーで初公開されたモデルの進化版。中国の研究開発センター「TMEC」でデザインや開発が進められている。現地で生産されるハイブリッドユニットを搭載することを想定した現地開発・生産車両となる。昨年の第一弾よりもデザインが市販車に近くなり、フロントやリアまわりはより実車を意識した作りになった。
もう一方の「FT-HT悦佳」も中国専売モデル。若い世代に向けてアピールするデザインとしており、ボディーサイズはそれほど大きくはないが、オーバーハングを切り詰めたデザインを採用することで室内に6座を設けているのが特徴となる。
日産自動車
日産自動車が初公開した「Friend-ME(フレンド・ミー)」は、2011年に北京に開設された日産デザインスタジオチャイナと日産グローバルデザインセンターが協力して作り上げたデザインコンセプトになる。
中国のデザインセンターがターゲットにしたのは「バーリンボウ」と呼ばれる1980年代生まれの若者。中国ではバーリンボウ世代が約2億4000万人いると言われていて、それまでの世代にない価値観や考え方、旺盛な消費志向を持っているため、自動車メーカー以外からも注目されている年齢層になる。
フレンド・ミーは、バーリンボウの男性の将来の夢に耳を傾け、その夢が手に届くような商品を提案していくことが重要と考たコンセプトカーだ。
低く構えた4ドアセダンのデザインは、グリルからフェンダー、ボディーサイドに流れる「Vモーションシェイプ」や、日産車のアイコンでもある「ブーメランシェイプ」のランプなど若者の思考に合わせた特徴を取り入れている。
インテリアは独立した4座シートをセットし、仲間と共有する時間を大切にするバーリンボウのスタイルに合わせている。4つのシートはすべて対等な環境にするためダッシュボードがリアシートの間まで伸び、センターコンソールに装備されるさまざまな機能を乗員全員が操作できるようになっている。
フレンド・ミーのパワートレーンは詳細なスペックが公開されていないが、4人が乗車して十分な駆動力が得られるように2.0リッター程度のハイブリッドユニットが搭載されていると言う。
仲間同士がつながってプライベートの空間を共有できるスペースを提供することで、バーリンボウ世代の夢を叶えるクルマを作り上げたことが、フレンド・ミーの最大の特徴になる。
本田技研工業、アキュラ
本田技研工業が上海ショーに用意したコンセプトモデルは、中国市場をメインターゲットにした「コンセプトM」。
商用車がメインとなっている中国のMPV(マルチ・パーパス・ビークル)市場において、ホンダならではの快適で広い室内空間を持つパッケージと運転する愉しさを両立させたモデルによって、新しい価値観を提案する。開発やデザインは日本国内の四輪R&Dセンターで進めていて、来年中の発売を目指していると言う。
また、昨年の北京モーターショーで初公開された「コンセプトS」をベースとした市販モデル「JADE」も初公開した。エネルギッシュで常に夢を追い求めている1980年代生まれのユーザーをターゲットにしたJADEは、中国市場をメインに想定して開発を行ってきた。デザインはコンセプトSの流れるようなフォルムを組み込みつつ、ホンダ車らしい横に広がるフロントフェイスを採用した。日常生活から休日のドライブなど、マルチに使うことができる1台となる。
また、アキュラブランドからは「コンセプトSUV-X」のワールドプレミアも行われた。北米以外で初となるコンセプトカーのお披露目となったアキュラが、中国市場をメインターゲットにしたのがコンセプトSUV-X。
小型なSUVながらエモーショナルなデザインにより力強さを表現。ボディーを小さくすることでエンジンの小排気量化も可能となり、環境性能にも十分に配慮していることを表現した。今後は、このコンセプトSUV-Xをベースに3年以内に現地生産を実施することが予定されている。
スズキ
スズキはCセグメントの本格派セダンとして位置づけたコンセプトカー「AUTHENTICS(オーセンティックス)」のワールドプレミアを行った。
スズキは、スポーティなハンドリングやデザインが世界的に好評な「スイフト」や「SX4」といったハッチバックモデルを展開しているが、その上位車種は「キザシ」になる。そのため、DセグメントのキザシとSX4の間を埋めるモデルとして期待されるのが、オーセンティックスになる。
アジア重視の戦略を持っているスズキにとっては中国は重要なマーケットであり、中国で受け入れられやすいサイズとパッケージとして作られたモデルだ。
デザインするにあたって、中国に幾度となく出向き、ユーザーにデザインスケッチまで見せ反応を調査したというオーセンティックスは、スズキのブランドイメージでもあるスポーティさやキビキビとしたハンドリングを全体的に表現した。とくにラインの強さや局面の抑揚、ボディーサイドの深いキャラクターラインが特徴となる。
プレスカンファレンスでは、2014年末までに中国国内で生産、販売されることが発表されている。スズキは、世界各国のメーカーが最新モデルのセダンを導入している中国市場に、オーセンティックスで真っ向から勝負していくことになる。2014年末の販売が注目される。