2016 デトロイトショー

フォルクスワーゲン、PHVの「ティグアン GTE アクティブ・コンセプト」

グループ全体として2020年までに20車種以上のEV/PHVを投入

2016年1月11日~14日 開催

プレスデー前夜の「メディア・レセプション」

写真、左がフォルクスワーゲン グループのCEOに就任したマティアス・ミュラー氏、

 ディーゼルの排ガス問題に揺れるフォルクスワーゲンは、デトロイトモーターショーのプレスデー前夜に「メディア・レセプション」を開いた。その席にて、問題発覚後にグループのCEOに就任したマティアス・ミュラー氏が、アメリカで初めて謝罪をした。

「私たちはアメリカにおいて、顧客の皆様、政府機関、広く一般の皆様を深く失望させてしまいました。フォルクスワーゲンの不正について謝罪します。そして、今後、責任を持って物事を正しい方向へと進めます」と、ミュラー氏は謝罪とともに今後の責任ある対応を約束した。

 一方で、2015年は全世界で993万台を販売し、米国での販売も60万台と、わずかながら上昇した。以前に10億ドルの投資をした米・チャタヌーガにある工場にて、ミドルクラスSUVの生産のために年内に追加で900万ドルを投資する。このことにより、約2000人の新規雇用が生まれる。また、メキシコ・プエブラ工場では、フォルクスワーゲン・ブランドの新型「ティグアン」の生産を2017年にスタートする。

 また、グループ傘下にあるブランドについても言及した。アメリカで売れ筋のミドルサイズのSUVであるアウディ「Q5」の生産は、この春からメキシコ・サンホセでスタートする。ポルシェは去年、アトランタ、ジョージアにカスタマー・エクスペリエンス・センターを開設し、1億ドルを投資した。

 フォルクスワーゲンにとって、もっとも重要なのは、技術的な解決策の提供だけにとどまらず、真実を明らかにし、信頼を取り戻すことだとした。加えて、抜本的な再編を行なう。また、モビリティやデジタル化について、積極的に取り組むとし、2020年までにグループ全体として20車種以上のEV/PHVを世に送り出すと宣言した。

モーターショー会場のプレスカンファレンス

北米部門のCEOミハエル・ホルン氏

 一夜明けて、モーターショーの会場で行なわれたプレスカンファレンスは、北米部門のCEOミハエル・ホルン氏が口火を切った。「これまでに20万人以上の顧客が登録し、V6 TDIエンジンを積んだモデルを購入したお客様向けにオンラインでパッケージを提供するなどの対応を進め、信頼の回復につなげたいと考えています。ディーゼル問題への対処のみならず、チャタヌーガ工場でパサートの生産を開始し、Apple CarPlay、Android Auto、MirrorLinkに対応するといったIT化も進めていきます」(ホルン氏)

 今後、4WDモデルの強化を予定しており、クロカン風の「オールトラック」を第3四半期に発表する予定だ。

ヘルベルト・ディース氏

 続いて登壇したフォルクスワーゲン乗用ブランド取締役会会長のヘルベルト ディース氏によるプレゼンテーションは、東京モーターショー、CESと同様、謝罪からスタート。ディース氏は「欧州では、850万台のクルマに対応を施しました。米国環境保護庁(EPA)とカリフォルニア州大気資源局(CARB)と相談しつつ、北米市場への的確な対応を進めていきます」とコメントした。

 問題への対応に加えて、信頼回復に向けての活動も進めていく。技術面では、コネクテッド・カーやEVの分野に9億ドルを投資する。アメリカから愛されるブランドとなることを目指して、より高いクオリティ、よりよいデザイン、そしてプレミアムカーを手の届く価格帯で提供していくことを目指す。

 従来、フォルクスワーゲンはSUVのラインナップが少なく、それが苦戦の要因だった。今後はアメリカで好まれるミッドサイズSUVとして「ティグアン・ロング」をはじめ、10年以内にすべてのセグメントにSUVをラインナップする方針も打ち出した。

 また、「ビートル」にカブリオレを追加し、10年以内に全セグメントにSUVを用意するなど、北米市場を意識した戦略を語った。

ティグアン GTE アクティブ・コンセプト

ティグアン GTE アクティブ・コンセプト

 ショーでは、PHVの「ティグアン GTE アクティブ・コンセプト」を発表した。ベースは、前述のとおり、2017年に発売予定の2代目「ティグアン」だ。前後にそれぞれ1基、合計2基の電気モーターを搭載し、通常の走行状態ではリアの電気モーター(114HP)で後輪を駆動となる。4WDモードに切り替えたときや、道路状況によってオンデマンドで、電気モーター(54HP)が前輪を駆動する。トータルでは、221HPの出力を生む。12.4kWhのリチウムイオン電池とを備えており、EVモードで最高速70mph、20マイルをEVとして走ることができる。

 それ以上の距離になると、148HPを生むターボ付きガソリンが始動し、ハイブリッド用に設計された6速DSGを介して、タイヤにパワーを伝える。あるいは、前輪の電気モーターを発電機に使って、電池に電力を貯めることもできる。

 ドライブモードは、センターコンソール上にある「Eモード」と「GTEモード」を2度押すと、モードが切り替わる。「GTE」モードでは、4輪駆動となり、ハイブリッド走行でパワフルに走れる体制を整える。最高速120mph、0-60mph加速を6.4秒でこなすという、必要にして十分だ。

 2015年に米国で排ガス問題が起きて以降、フォルクスワーゲンは、一貫して謝罪を続けてきた。リコールへの対応には2016年内一杯かかるとされているが、フォルクスワーゲンの規模ともなると、対応を模索する最中でも今後の企業経営に関する戦略を伝えることは不可欠であろう。

川端由美