【北京モーターショー2012】
VWグループは中国専用車やハイパフォーマンスモデルなどワールドプレミアが多数

「URUS」や「Q3RS」「カイエンGTS」など注目車両が目白押し

2012年4月23日~5月2日
中国 北京市 中国国際展覧中心



 北京ショーのプレスデー前日に開かれた、VWグループの全ブランドが一堂に会した「VWグループナイト」では、北京モーターショーで公開予定の車両が各ブランドから先行公開されたが、プレスデーではグループナイトに姿を見せなかった車両で世界初公開となったモデルもあった。アウディではQ3のハイパフォーマンスモデルとなる「Q3 RS」。フォルクスワーゲンでは、中国専売となる「新型ラヴィーダ」や、フェートンのラグジュアリーモデル「フェートンエクスクルーシブコンセプト」などが、それにあたる。

 本稿では、フォルクスワーゲングループの各ブースに展示された車両を紹介する。

フォルクスワーゲン
 アジアプレミアとなった「E-BUGSTER」。初公開されたデトロイト、ジュネーブの両モーターショーではハードトップを被った状態だったので、オープンのシルエットで登場したのはおそらく初めてだろう。

 ザ・ビートルをベースとしたモデルだが、全長4278mm、全幅1838mm、全高1400mm以下とザ・ビートルよりも30mmワイドで80mm以上低くなったところがボディーサイズの特徴。ヘッドライトはLED化により省電力化を行い、e-up!コンセプトでも見られたLEDデイライトがヘッドライトの下にコの字型として採用されている。

 完全なEVモデルとなるパワートレーンは、最高出力85kWのモーターと28.3kWhのバッテリーからなる。最大航続距離は180㎞以上で、0-100㎞/h加速は10.8秒としている。

 インテリアは、ハイテクな外観と共通したイメージで作り上げた。ボディー同色のパネルやシート、センターコンソールが特徴的で、プッシュスターターを押すとドライブシステムが立ち上がり、白い光で包まれた後にブルーの照明に変わりEバグスターが目覚めていく。

EVのコンセプトカー「E-BUGSTER」

 2008年に中国市場に導入された「ラヴィーダ」は、最初の2年間で30万台のセールスを記録し、2012年1月には累計70万台を販売した、フォルクスワーゲンの中国における中核モデル。ラヴィーダは現地主導によって成り立つモデルで、中国市場のニーズを理解した上で同社の技術とデザインを落とし込んでおり、同セグメントのベンチマークとなっている。

 新型となったラヴィーダの特徴はスタイリングにある。中国の美意識を考慮してデザインされたフロントまわりは、フォルクスワーゲンの最新デザインと独自のキャラクターを融合させており、エネルギッシュなイメージを与える。リアまわりも同社の最新のデザイントレンドを取り入れつつ、シャープさを演出している。

 新型ラヴィーダのバリエーションは3種類のエンジンと4種類の装備ラインが用意されると言う。

中国専売モデルの新型ラヴィーダ

 日本国内には未導入となるモデルでは、トップエンドとなるフェートンも展示してあった。「フェートン エクスクルーシブコンセプト」は、イタリアの老舗高級家具メーカー「ポルトローナ・フラウ」社とのコラボレーションで生まれたモデルで、100周年を迎えたポルトローナ・フラウのレザーを採用し、優雅なインテリアを構築している。

VWのトップモデルとなるフェートンの特別仕様車

 CCにはV型6気筒 3.0リッターエンジンを搭載した「CC 3.0 V6」が追加ラインアップされた。

 同エンジンは最高出力250PS/6300rpm、最大トルク310Nmを発生し、0-100㎞/hを7.4秒で加速する。トランスミッションは6速DSGが組み合わせられる。大柄なボディーながら、9.4L/100㎞と高い環境性能も併せ持つ。

CCに追加されたV6モデル

 ジュネーブモーターショーでディーゼルエンジン搭載モデルが発表された「クロスクーペ」も展示。直噴ディーゼルエンジンと2基の電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドで、SUVのボディーながら1.8L/100kmという驚異的な燃費性能を持つ。

クロスクーペ

 こちらもジュネーブモーターショーで展示されていたザ・ビートルのRライン。専用のフロントバンパーやリアウイングが装備されたスポーツエディションとなる。

ザ・ビートルのRライン。ジュネーブで公開されたホイールとはデザインが異なり、タイヤサイズは235/35 ZR20となっている

プレスカンファレンスで登場した「A6 Etron」

アウディ
 「Q3 RS」は、スポーツエディションにのみ付けられるRSのネーミングを持つハイエンドモデル。25mm低められた全高がスポーツモデルということを象徴している。フロントフェイスは、RSモデルを示すように大径のハニカムグリルに変更。リップ部分はカーボン製を採用し、クワトロの文字が刻まれている。リアまわりもカーボン製のディフューザーが装備されスポーティな出で立ちとなる。

 インテリアは、ステアリング下部やパネル類がカーボンで仕上げられていて、随所に散りばめられたブルーのステッチなどが、ベースグレードと差別化された部分になる。

 エンジンは専用にチューンドされた2.5リッター TFI。最高出力は360HPをマークし、0-100㎞/hを5.2秒で加速する。最高速は265㎞/hとなっていて、SUVとしては抜群のパフォーマンスを発揮する。

圧倒的なパフォーマンスを保持する「Q3 RS」。タイヤサイズは255/35 R20

「Q3 Jinlong Yufeng」のアンベール

 Q3の2タイプ目となるのは「Q3 Jinlong Yufeng」という、中国にちなんだモデル。ネーミングには「風の中の黄金龍」という意味を持ち、中国でも今年が辰年であることからこの名前が用いられた。

 Q3 Jinlong Yufengのルーフにはカイトボードが積まれていて、アクティブな若年層向けのコンセプトカーとしてイメージしている。カラーリングも独創的で、黄金の龍になぞらえ“Liuli Yellow”に塗られている。イエローに合わせて部分的にチタニウムグレーやメッキを使い、高級感のある仕上がりをみせる。インテリアは外装色とは対照的に落ち着いたグレーとブラックを基調とし、ポイントとしてイエローのステッチなどが使われている。

 パワートレーンは、アクティブな外装とマッチするような力強いユニットが搭載される。2.5リッター TFSIは310HPを出力し、0-100㎞/hを5.5秒で加速する。トップスピードは250㎞/hをマークする。

Q3 Jinlong Yufengは、アクティブな若年層を意識して作られたコンセプトカー

 アウディの電気自動車(EV)もしくはEVとエンジンのハイブリッド(HV)モデルに名づけらる「e-tron」。すでにR8やA1、A3のe-tronは発表されていたが、今回披露された「A6L e-tron」は、e-tronのラインアップの中で初のラグジュアリークラスとなる。ベースとなるロングボディーのA6は、アウディブランドの中でもっとも中国国内で支持されるモデル。そのことから、「A6L e-tron」がこの地でワールドプレミアされたことも頷ける。

 A6L e-tronのパワーユニットは、2.0リッター TFSIに70kWのモーターがセットされる。リアにはバッテリーとなるリチウムイオン電池が搭載され、EVモードでの走行可能距離は60㎞/hでの走行で80㎞と言う。

 ボディーサイズは5020×1870×1460mm(全長×全幅×全高)。エクステリアはe-tron専用のデザインを用いていて、e-tronの象徴でもあるメッキのバーが入った大型のグリルを備える。ボディーやシャシーは、軽量化のためにアルミやカーボンを多く使用する。ボディーのおよそ10%にアルミが使われていて、これはスチールボディー比で15%軽量化されていると言う。

 まだe-tronは全車ともコンセプトモデルという立ち位置だが、アウディではすでにQ5やA8などにハイブリッドモデルを導入している。今後はEV走行の航続可能距離を伸ばすプラグインハイブリッド(PHV)をリリースし、2014年にはA3 e-tronを市場に導入する予定としている。

ワールドプレミアされたe-tron初のラグジュアリークラス「A6L e-tron」

ポルシェ
 ポルシェが北京の地を世界初公開の場と選んだモデルが、スポーティタイプの「カイエンGTS」。SUVが持つユーティリティとポルシェらしいドライビングプレジャーやダイナミクス、俊敏性を融合したところが特徴となる。

 カイエンターボにも似たフロントセクションは、大きなグリルやダクトが採用され、より冷却効果を狙ったデザインとなっている。ヘッドライトにはポルシェ・ダイナミック・ライトシステム(PDLS)が装備され、車速感応式ヘッドライトコントロールが可能になっている。リアセクションは、薄くブラック加工されたテールレンズの中にLEDが埋め込まれ、テールパイプも左右2本出しというのがルックス的な特徴になる。また、リアスポイラーも装備し、2枚のウイングが設けられたタイプで空力効果も期待できる。

 搭載エンジンはV型8気筒4.8リッター。最高出力は420PSで最大トルクは515Nm。カイエンSに比べて20PS、15Nmアップしている。0-100㎞加速は5.7秒、最高速は261㎞/hという俊敏さを持つ。それでいてスタート&ストップ機能などが付くため、燃費性能は10.7L/100㎞としている。組み合わせるトランスミッションは8速ティプトロニックで、最終減速比(ファイナルギア)を低く設定したこともあり、俊敏な加速を実現した。

 機能面では、PTM(ポルシェ・トラクション・マネージメントシステム)やPTV Plus(ポルシェ・トルクベクトリングプラス)、PASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメント・システム)などが装備される。4WDの駆動配分やサスペンションの減衰力設定など、道路や使用状況に応じて最適な制御を自動で選択してくれる。

ワールドプレミアの「カイエンGTS」。タイヤサイズは275/35 R20と発表されているが、装着されていたのは285/35 R21だった
カイエンGTSのシートはレザーとアルカンターラの組み合わせ。内装のトリムなども同様のセットが見られる

ランボルギーニ
 かねてから噂されていたランボルギーニのSUVが、北京モーターショーでワールドプレミアされた。「URUS(ウルス)」というネーミングは、ランボルギーニの伝統に乗っ取り雄牛から取られていて、URUSは家畜牛の先祖となる野生獣の名と言う。

 URUSはランボルギーニ初のSUVモデルだが、デザインは他モデルと比較しても共通項がある。まず、フロントまわりだが、強くシャープな3DラインやY字型のヘッドライト、左右の大型インテークなどにアヴェンダドールと同じデザインルーツを見ることができる。サイドは、後方に向けて急激に狭くなるウインドーが特徴的で、大きなホイールアーチやルーフライン、サイドラインなど独創的かつ力強い仕上がり。リアセクションは、丸みを帯びたデザインだが重さはなく、リアディフューザーや左右4本出しの6角形のエキゾーストなどでスポーティさを演出している。

 ボディーサイズは4990×1990×1660mm(全長×全幅×全高)で、SUVにしては全高が低められているのがポイントとなっている。

 パワートレーンの詳細は明らかになっていないが、最高出力は600PSをマークしていると言う。トラクションコントロール付きのフルタイム4WDが組み合わせられる。

ランボルギーニ初のSUVモデルとなる「URUS」。24インチのホイールは鍛造品となり、表面はマットシルバーの加工が施してある。スポークの横に付く5枚のカーボンフィンは、ホイールハウス内のエアを吸い出す効果を持つ
カーボンファイバーと強化ポリマーによって構築されるインテリアセンターコンソールにシフトレバーはなく、スタータースイッチや「P」「N」「R」「M」のシフトスイッチが確認できるメーターは複眼のデジタルタイプ。左にスピードメーター、右にタコメーターが装備される
ダッシュボード脇にはモニターが装備され、ミラー脇の死角が確認できるようになっているシートは独創的なデザイン
ペダルドアもカーボン製とし、軽量化が図られている

ベントレー
 ベントレーが展示したのは新型エンジンを搭載した「コンチネンタルGT V8」や、ジュネーブショーで初公開したSUV「EXP 9F」。

 コンチネンタルGT V8は、これまでのW12モデルに比べて約40%の燃費改善に加え、CO2の排出量も大幅に削減した上で、パフォーマンスはW12モデルに引けを取らない。新しいV8エンジンは4.0リッターの直噴ツインターボで、最高出力は507PS、最大トルクは660Nm。0-100㎞/h加速を4.6秒とし、最高速は303㎞/hをマークする。それでいて、ハーフスロットルなどの領域では4気筒が休止するなどの最新のエンジンマネージメントシステムを装備し、省燃費性も向上させた。

 一方の「EXP 9F」は、ベントレー初のSUVモデル。贅を尽くしたインテリアは3D液晶のディスプレイやクラフトマンシップに溢れるウッドやレザー仕上げが特徴となる。

新エンジンを搭載した「コンチネンタルGT V8」
ジュネーブモーターショーで初公開されたベントレー初のSUV「EXP 9F」。

(真鍋裕行)
2012年 4月 27日