【東京モーターショー2011
モーターショーへ行ったなら西棟4Fを見逃すな!!

ファミリー向けの展示や、EVを中核にした「SMART MOBILITY CITY 2011」

先進的なクルマのほか、東京モーターショーではレアな展示となっているアメ車を見ることが可能な西棟4F。ファミリーにもお勧め

会期:11月30日~12月11日(一般公開日:12月3日~11日)
会場:東京ビッグサイト



 1989年~2009年まで、東京モーターショーは幕張メッセで開催されてきたが、今年から当面、東京ビッグサイトでの開催となることが決定している。会場が変わった関係で、必然的にブースレイアウトは大きく変わっており、モーターショーに毎回行くような人にとって長年慣れ親しんだ各ブースの自分なりの回り方のノウハウが使えないもどかしさがある。さらにいえば、よい展示、イケテル展示を見逃してしまうかも知れないという怖さもある。

 今回の展示レイアウトでややもすれば見逃してしまいそうなのが西棟の上階(西棟4F)にある、西3ホール、4ホールの展示だ。実際、プレスデーの初日は、かなり空いていた。結論から言うと、西棟4Fの展示セクションは、家族連れが楽しめるブースもあり、隠れた名スポットになり得そうな手応えがある。本稿では、そんな西棟4Fの展示セクションの見どころを抜粋して紹介しよう。

ゆるキャラもいる西棟4F。これはジャン・レノではありません西棟4FでJAFくんとダンスしよう

トミカブースは個数に限りあり。先行発売の物販コーナーに急げ
 タカラトミーのトミカブースでは、将来、自動車オーナーになるはずの子供向けの展示を行っている。現在取扱中のトミカラインアップをジオラマ風にした展示や、年末商戦向けラインアップを展示。展示セクションによっては見るだけでなく、実際に触れて遊ぶことができるようになっており、子供連れには人気スポットになりそうだ。

タカラトミーのトミカブース現行ラインアップのジオラマ展示

 タカラトミーの今年の年末商戦の注目のラインナップは3つある。1つはトランスフォーマー関連新商品だ。DVD/ブルーレイの発売が控えている最新作「トランスフォーマー・ダークサイドムーン」に合わせて、映画作中に登場したキャラクターメカや、アニメシリーズに登場したメインメカ達がトミカより発売される。注目は劇中で主人公を支援する「ネオスキャニング・バンブルビー」のトランスフォーム対応新商品だ。通常12月中旬以降発売となるこの商品が、東京モーターショー会場では先行発売となっている。

バンブルビーが世を忍ぶ姿、現行「カマロ」がお出迎え。東京モーターショー2011において数少ないアメ車の展示である年末商戦「トランスフォーマー」関連ラインアップ東京モータショーで先行発売される「ネオスキャニング・バンブルビー」

 2つ目は、DVD/ブルーレイが発売されたばかりの最新作「カーズ2」に関連した新商品ラインアップだ。こちらも劇中に日本シーンで登場した“あの車”にそっくりな「マッハ・マツオ」のトミカが会場限定で先行発売される。なお、カーズ2に登場した日本車は、実在の車がモデルになっているが、トミカ内の規定(?)で実在車名が言えないのだとか。ブース内のスタッフに「マッハ・マツオは240Zですか?」と聞いて困らせないようにして頂きたい(笑)。

「カーズ2」では作中に日本が登場し、日本車が数多く登場したトミカブース内の取扱商品一覧
架空の自動車メーカー「ディズニーモーターズ」のラインアップも展示

 また、子供と一緒に是非体験してほしいのが、自分のオリジナルトミカが作れる「トミカ組み立て工場」だ。トミカが出展する催し事の際にはよく登場するこの「トミカ組み立て工場」だが、今回はロンドン2階建てバスを作ることができる。色違いの車体、内装などを自由に組み合わせ、総組み合わせ数で9通りのオリジナルトミカを作り出すことが可能だ。参加費用は500円。作ったトミカは、もちろんもらうことができる。

ここから好きなパーツを選ぼう
総組み合わせ数が9通りのオリジナル・ロンドンバスを作ろう


リコーブース

リコーブース~描いた車のイラストでレースをしよう
 リコーブースでは、紙にカラーサインペンで描いたクルマの絵をスキャナで取り込んで、それを3Dグラフィックスで再現されたサーキットで走らせる遊び「紙レーサー」を展示している。

 紙に描くのは横を向いた車。とはいっても、実際のところ、何を書いてもよい。ただし、この絵をスキャナで読み込んだ後、「紙レーサー」のゲームプログラムは車体デザインを評価して、速さ、加速力、グリップ、燃料(タンク容量)を判定する。「どういう絵がどういうパラメーターになるかはいろいろ試して想像してほしい」とは、このシステムの開発者の弁。筆者も、犬みたいな車を描いてみたが、リコースタッフが書いたというネズミ型カーに勝つことはできなかった。無料で参加が可能なので、子供と一緒に楽しんでみるのもよいだろう。

 なお、リコーはこの「描いた絵を取り込んでゲームとして遊ぶ」というソリューションをイベント向けシステムとして事業展開しており、今回の「紙レーサー」はそのアプリケーションの一例なのだという。レーシングゲーム以外にも格闘のようなアプリケーションもあるとのこと。

 ビジネス形態としてはBtoBを基本とし、企業イベントやアミューズメントパークなどの遊戯施設向けに訴求していきたいと考えているようだ。基本的には販売ではなくレンタルの形をとり、参考価格としては15日で120,000円、1カ月で180,000円なとが提示されている。問い合わせはリコージャパン オフィスイノベーション事業本部 レンタル事業推進室まで。

筆者の描いた犬型カー「ワンぱく号」。ベタで下手で済みません(笑)スキャナで取り込んで……画面の中のサーキットでレースをさせるという流れ


紙レーサーで遊び中。ワンぱく号ガンバレ!!

RWCブース~最新キャラクター・カーナビを展示
 アニメやコミックの人気キャラクターをフィーチャーしたPND(Portable Navigation System)を数多く手がけているRWC(アールダブリューシー)のブースでは、発表されたばかりの「名探偵コナン」のカーナビ「RM-NV500CN」を展示。ブースでは、実際の市販モデルに触れてコナンの案内音声を聞いたり、蘭や小五郎、平次といった脇役キャラクター達とのやり取りを楽しむことができるようになっていた。

 なお、お楽しみのゲームモードは、コナンのライバル、怪盗キッドからの出題される走行距離に応じた挑戦状クイズだそうだ。この名探偵コナンPNDは12月1日より日本テレビの公式サイト(http://www.ntvshop.jp/420/p/g/g1e958/)での通販が開始されている。

 ブースでは、このほかアニメも漫画も大ヒット中の「ワンピース」のPNDの第二世代(2011年)モデル「CN-512TOP」や、「宇宙戦艦ヤマト」のPND「RM-YA500」(http://www.rwc.co.jp/product/rmya500/)といった既発売モデルも展示中だ。

 なお、ブースのスタッフによれば、各モデルの地図アップデートは不可だそうで、「毎年発売される新モデルでは、新しいゲームモードが追加されているので、新モデルを毎年購入してほしい」とのこと。

RWCブースワンピース・PNDの2011年モデルでは日本国内1,000個所に隠されたお宝を探し出すことに挑戦できるトレジャーハントモードを搭載名探偵コナン・PNDの自車位置マークはコナン自身!

国土交通省・先進安全自動車(ASV)ブース~最新のコンピュータアシスト安全運転システムをシミュレーターで体験しよう
 国土交通省の先進安全自動車(ASV)プロジェクトでは事故を未然に防ぐための次世代技術の開発・実用化・普及に取り組んでいる。その成果物として最も著名なのはTVCMでもお馴染みのスバルの運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」だ。こちらはASVプロジェクトの1つ、「衝突被害軽減ブレーキ」を具現化したものだ。

 ASVプロジェクトでは、国交省側としては、各安全支援機能について「こういうときにはこう振る舞うべき」といったガイドラインの策定にあたっており、実際の技術開発自体は各メーカーに委ねている部分が大きい。Eyesightなどはまさにその代表的な例だと言える。

 ASVブースでは、実用検討段階中の、さまざまなコンピューターアシストによる安全運転支援機能をシミュレーター上で体験できるようなデモが行われている。

 ドライブゲームでは無謀な運転をするとコースアウトするかクラッシュすることになるが、ASVのシミュレーターは、自動車側が、そうした事態を回避するための行動を自発的に取ってくれるのが面白い。西棟1Fのグランツーリスモブースで「グランツーリスモ5」を体験したあとは、こちらを体験してみるのもよいかも?

ASVブース実際に体験できるASVシミュレーターは3種類以上!

「SMART MOBILITY CITY」テーマ展示とEV関連展示
 西棟4Fは、「SMART MOBILITY CITY」と題したテーマ展示も行われ、EV(電気自動車)を中心としたパーソナルモビリティの新提案に関する展示もよく目に付く。

「SMART MOBILITY CITY 2011」と題されたテーマ展示セクション。各種EVをはじめ、新型インプレッサなども展示されている。東棟の日産ブースやスバルブースが混んでいるときは、こちらでじっくり見るのもアリだ

興和テムザックブース~パーソナルEVのほかに軽自動車の下の新カテゴリーEVの提案も
 ロボットメーカーのテムザックと、医薬品・電気光学機器メーカーの興和とが互いの技術を相互連携させて新世代のEVを誕生させるために設立した興和テムザックが、初めて東京モーターショーにブースを出展した。

 ブースに展示されていたのは、「KOBOT」と命名された2台の1人乗りのEVコンセプトカーと、1台の2人乗りのEVコンセプトカーだ。1人乗りのEVのうち赤い「KOBOTν」(ニュー)と命名された赤いモデルは、デザインセントリックなファッション性の強いコンセプトの提案で、もう1台の緑の「KOBOTβ」(ベータ)は実用性重視のコンセプト提案となっている。

 いずれも3輪カーで、前方2輪が操舵輪で、後方1輪が駆動輪となっている。シャシーは2分割構造になっており、電動で駆動輪部分のシャシーが跳ね上がって折りたためるようになっているのがデザイン上のポイントとなる。こちらは「3輪、1人乗り」ということからマイクロカーとかミニカーなどといわれる区分の車両になる。法律上の最高速は30km/h以下に定められている。2人乗りのEVは4輪で、「KOBOTπ」(パイ)と命名されているが、こちらはデザインコンセプトなので自走はできない。

 KOBOTπは2人乗りを想定しているが、実はこのボディー設計では現行法律上は公道を走ることができないため、業界団体で軽自動車とミニカーの中間位置的な車両区分の法整備を働きかけていると言う。業界としてはパーソナルEV時代に向けて、高速道路の走行はできない80km/h制限の新カテゴリー車両の法整備を希望していくようだ。なお、連続航続距離はいずれも100km程度を想定。

 3輪のKOBOTβとνは2012年後半の発売を目指す。バッテリーなどの高価なパーツが搭載される関係で、販売予想価格は軽自動車と同程度にはなるだろうとのこと。日本での発売後は欧州への進出も狙う。ブースでは希望すればKOBOTβとνに搭乗できるそうなので、興味のある人は是非とも体験してみよう。

「KOBOTβ」「KOBOTν」「KOBOTπ」

シボレーブース~ネットワーク接続された半自立型EVの提案
 ゼネラルモーターズ・ジャパンのシボレーブースでは、EVとクラウド技術を組み合わせた新しいEVコンセプト「EN-V」を出展していた。

 次世代のカーシェアリングとも言うべき形態で、サービスに加入したユーザーが、スマートフォンで予約したい場所と時刻を入力すれば、自律走行でそこに自動配車され、同じくスマートフォンで目的地を登録すれば自動的にそこまで送り届けてくれるシステムの実現を目指す。

 最終的には、クラウド側で各ユーザーへの配車の際、どの車両を移動させるかを自動管理したり、道路の混雑状況に合わせて走行経路などもリアルタイムに算出し、賢くスピーディな都市内移動を提供したりすることができるようになると言う。

 担当者によれば、新興国の新興都市向けの次世代交通システムとして提案していきたいとのことであった。

参考出品されたコンセプトカー「EN-V」の駆動ユニットはセグウェイのコア部分を流用していると言う。ただし、バッテリーは大容量のものに置き換えられている

東レブース~CFRPで軽量化し、同容量バッテリーでEVの航続距離を伸ばす
 自動車の開発において、軽量化は重要な命題だが、EV時代においてはその重要度が一層増すと言われている。というのもバッテリーそのものが重量物であり、同容量のバッテリーで航続距離を伸ばすには軽量化が直接的に効いてくるためだ。繊維素材メーカーとして著名な東レは、その先端繊維技術を自動車開発に転用するべく、CFRPで自動車のフレームやシャシーを成型する技術を提案していた。 その成果物として実走行できるコンセプトEV「TEEWAVE AR1」を開発。ブース内で披露している。

 同一安全基準を満たしたスチールベースのEVと比較して、重量にして36%軽量化ができ、電力消費率も27%の改善が見込めると言う。また、CFRPは一体成形することができるため複数パーツを溶接する必要もなく、部品点数や工数の削減も見込めるとのこと。また、シャシーとしての減衰性能も高く、単位重量エネルギー吸収量もスチールと比較して2.5倍も良好であるため衝突安全性能も優れていると言う。

 ただ、現状では新しい技術であるため量産効果としてのコストメリットが見込めない。よって当面は500万円以上のハイエンド車両向けの技術として訴求されていくだろう、と担当者は予測していた。

 なお、対抗技術として東棟1Fに出展している豊田合成が、ブースにて樹脂製シャシー、樹脂製フレームにまつわる技術展示を行っていた。今や、スポーツカーでなくても、車体軽量化は最重要テーマとなっているのだ。

CFRP技術の実例として製作された東レのコンセプトスポーツカー「TEEWAVE AR1」TEEWAVE AR1のフロントシャシー部のクラッシュボックス。金属フレーム部分はアルミ製CFRPのモノコックボディー
東棟1Fのブースで対抗技術を掲げる豊田合成の樹脂製ボディー技術

SIM-Driveブース

SIM-Driveブース
 慶應大学の電気自動車研究室の研究テーマを事業化・株式会社化する形で発足したSIM-Drive(シムドライブ)のブースでは、これまで同社が手がけてきた主要EVの3台が公開されている。

 1つは、今年3月に初公開された「SIM-LEI」だ。こちらは4名乗車に対応したEVで、サイズは1.6×4.7×1.55m(全長×全幅×全高)。イメージ的にはちょっと長めなコンパクトカーという感じだ。車重は1.65t。駆動方式はアウターローター式ダイレクトドライブ・インホイールモーター。公称航続距離は333kmで、これは日産リーフの1.5倍以上に相当する。また、最高速は150km/h。0-100km/h加速は4.8秒とスポーツカー並だ。


「SIM-LEI」後尾を絞ったデザインになっているのはエアロダイナミクスに配慮しているためSIM-LEIの車内。大型ディスプレイが特徴的

 2つ目は当時最高速370km/hを記録した8輪EVの「Eliica」だ。こちらは800馬力相当のパワーがあり、0-100km/h加速は4.11秒だ。

 3つめは19名乗車のバス型EVの「SAKURA」だ。座席数19個、想定乗車客数は49人を想定。最高速は60km/hだが、公称航続距離は121kmとなっている。

 内燃機関エンジンのバスとは違い、EVのバスは、車体にドライブシャフトやトランスミッション、エンジンなどの立体的な構造物をすべて排除できるため、車内の床を限りなく平坦に出来ることが最大の利点だと訴求されている。真のバリアフリーバスはEVでしか作り得ない……というのがSIM-Drive側の主張だ。

8輪EVというデザインだけでなく370km/hという速度で世界に衝撃を与えた「Eliica」バス型EV「SAKURA」SAKURAの車内。端から端まで、床がフラット

 現在、SIM-Driveでは、共同研究参加企業の第3次募集をしており、ブースではこの点のアピールに余念がない。早期参加すればするほど、SIM-Driveが広く持つEV関連特許の使用料が免除されたり、あるいは割引が適用される仕組みとなっている。担当者によれば、EVに関心が高い昨今では、例年と比較して問い合わせ数が急増しているという。

(トライゼット西川善司)
2011年 12月 2日