【第1回】自動車保険の必要性
死亡者数は5000人以下に減るも、事故数は72万件


 クルマにあまり興味がなくても、クルマを持っているならば、絶対に関わらなければならないのが自動車保険だ。そんな自動車保険に関する基礎知識について解説していきたいが、まず第1回は自動車保険の必要性について考えてみたい。

 クルマを走らせれば、そこには必ず事故の可能性がついて回る。しかし、ちょっとクルマに関心の強い人であれば、近年は交通事故による死者が毎年減っていることをご存知だろう。ABSに始まり、エアバッグや衝撃吸収ボディー、さらには追突を防ぐ自動ブレーキなど、最近のクルマの安全性能はまさに日進月歩であり、最新のクルマに乗っていれば事故など起きない気さえしてくる。

 さらに、今まで一度も事故を起こしたことがない人であれば「自分は平気」「安全運転だから大丈夫」と思えてくるかもしれない。そう考えると、自動車保険の重要度が本当に高いのか?という疑問がわく。

交通事故による死亡者数は半世紀前より少ない
 そこで、警察庁が発表している交通事故に関するデータを調べてみた。下の表は、警察庁が発表している日本の交通事故件数とそれによる負傷者数、死亡者数の一覧だ。警察庁では1948年からのデータを公表しているが、その中で最も死亡者数が多かった1970年と、ここ20年のデータを抜粋して掲載している。

1970年と過去20年間の交通事故発生件数と負傷者、24時間以内の死亡者数

西暦事故発生件数負傷者数死亡者数
1970年71万8080件98万1096人1万6765人
1991年66万2388件81万245人1万1105人
1992年69万5345件84万4003人1万1451人
1993年72万4675件87万8633人1万942人
1994年72万9457件88万1723人1万649人
1995年76万1789件92万2677人1万679人
1996年77万1084件94万2203人9942人
1997年78万399件95万8925人9640人
1998年80万3878件99万675人9211人
1999年85万363件105万0397人9006人
2000年93万1934件115万5697人9066人
2001年94万7169件118万955人8747人
2002年93万6721件116万7855人8326人
2003年94万7993件118万1431人7702人
2004年95万2191件118万3120人7358人
2005年93万3828件115万6633人6871人
2006年88万6864件109万8199人6352人
2007年83万2454件103万4445人5744人
2008年76万6147件94万5504人5155人
2009年73万7474件91万1108人4914人
2010年72万4811件89万4281人4843人

 これを見ると、死亡者数は1992年以降、ほぼ毎年下がり続けている。特にここ10年は連続で減少しており、昨年にはついに4000人台まで減少。4000人台というと半世紀以上前の1952年(昭和27年)以来の数字になる。

 1952年と言われてもピンと来ないだろうが、日産自動車がダットサン・スポーツ DC-3を発売し、たま自動車はプリンスセダンを発売して社名をプリンス自動車工業に変えた年。ダイハツはその前年にオート三輪のビーを発売しており、トヨタはその3年後、初代クラウンを発売している。まさに日本の自動車文化の幕開けの頃と言える。

1952年発売のダットサン・スポーツ DC-3プリンス自動車の名前の元となったプリンスセダン1951年に発売のダイハツ ビー

 そんなレベルまで死亡者数が減ったというのは驚異的と言えるだろう。さらに死亡者数がピークとなった1970年の1万6765人と比べると7割以上減、20年前の1991年(1万1105人)と比べても6割近く減少している。こうなると、ますます保険の必要性も半減しているように思える。

事故件数は1952年の12倍以上、負傷者数は20倍以上
 しかし、事故発生件数、負傷者数で見てみると、1952年は5万8487件で4万3321人。20年前の1991年は66万2388件で81万245人。対して2010年は72万4811件で89万4281人と増えている。事故件数、負傷者数共に最悪となった2004年(95万2191件/118万3120人)と比べれは減少はしているものの、いぜん高い数値が続いている。これは、自動車自体の安全性能の向上や、シートベルト装着の徹底などにより、死亡事故に至るケースは減っているものの、事故そのものの数はあまり減っていないということだろう。

 さらに最近では、自動車保険の料率の指標とも言うべき損害保険料率算出機構の参考純率が見直され、自賠責の価格も上がっている。これは、支払われる補償額が増えたことが要因の一つ。つまり自動車保険の重要性は、減るどころか増えていることになる。

 ガソリン代も高騰し、クルマの維持費を少しでも抑えたいところだが、保険に関してはしっかりと加入しておくべき。自分で選んで自分で入る通販型(ダイレクト系)保険なら、無駄な保険料も抑えられるし、次回更新時には、今一度見直してみるとよいだろう。

(瀬戸 学)
2011年 6月 13日