【第3回】通販型保険のメリット・デメリット
代理店を省いて本当にサービスは安心できるのか?


 任意保険の中でもディーラーなどを通して契約する代理店型とインターネットや電話で直接契約を結ぶ通販型(ダイレクト系)があるというのが前回までの話。今回はそんな通販型保険のメリットとデメリットを掘り下げる。

インターネットや電話で自宅から申し込みができる通販型(ダイレクト系)自動車保険

お得な保険料の通販型保険
 通販型保険の一番のメリットはなんと言っても保険料の安さだ。もちろん代理店型であっても、団体割引などさまざまな割引があるため、絶対とは断言できないが、多くの場合、同じ条件で比較すれば通販型の方が保険料は安くなる。

 リスク細分型というのも魅力の1つだ。ゴールド免許や年間走行距離が少ないなど、事故の危険が少ない人は、それだけ保険料が安くなるというワケだ。加えてインターネット申し込みや、保険証券を発券しないことによる割引など、通販ならではの割引も用意されている。インターネットを使えば、余計なパンフレットや書類もいらないし、契約内容は専用サイトで確認すればよい。

 もう1つの通販型のメリットが、インターネットであればいつでも見積もりや申し込みが可能だということ。代理店型では、代理店の休みの日もあるし、深夜や早朝も営業はしていない。しかしインターネットで申し込みなら、24時間365日、いつでも保険の見積もりや申し込み、更新ができる。毎日仕事で帰りが遅い人にとっては、これはとてもありがたい。

一人で決められる? 通販型保険の加入時の不安
 よいことづくしにも思える通販型保険だが、もちろんデメリットもある。代理店型と比べた場合の一番のデメリットは、保険会社と契約者が直接やりとりをしなければならない点だ。いざというときに、場合によっては億単位の金額が動く保険の契約を、素人が一人で行うというのはやはり不安がある。保険の取り扱いに慣れた代理店のスタッフに相談し、決めてもらえるほうが安心そうではある。

 しかし、実際にインターネットで見積もりをしてみると分かるが、自分の愛車や利用状況などを選んでいくと、各社オススメのプランや充実のプラン、割安のプランなどを自動で提案してくれるようになっているから、それをベースに選べば大きな問題はない。

 さらにインターネット申込であっても、実は電話で相談できたりする。電話で相談だけして、後からインターネットで申し込めば、インターネット割引が利用できるのだ。ちょっと気が引けなくもないが、保険会社によっては見積もり画面に問い合わせ電話番号が用意されているところもあるので、遠慮せずに分からないことは聞いてしまおう。

通販型自動車保険でも現場での事故対応などをスタッフがサポートしてくれるサービスもある

事故時の対応は大丈夫?
 担当者の顔が見えない通販型の場合、事故を起こした時の対応も不安を覚える。近所の代理店であれば、担当者が現場に駆けつけてくれるかもしれないし、なにより顔を知っている人がサポートしてくれるのは心強い。

 では、実際事故の際に代理店は何をするのかというと、事故の連絡を受けた代理店はそのことを保険会社へと連絡するだけだ。担当者が事故現場に急行してくれる場合もあるが、これは代理店次第。事故の示談などは、すべて保険会社が行っている。

 では通販型の場合はと言うと、代理店の代わりに保険会社自体が契約者向けの窓口を持つことで、同等のサービスを提供している。といっても代理店型の場合でも、代理店が休みの場合は保険会社に直接連絡するので、そういった意味では大差はないだろう。

 通販型保険では、担当者が現場へ来てくれることは基本的にはないが、現場でなにをすべきかなどは、電話でちゃんとアドバイスしてくれるから心配ない。また、通販型の中でも、アメリカンホーム保険などでは、スタッフが事故現場に急行する事故現場対応サービスを用意している。

 確かに担当者の顔が見えないという不安はあるが、多くの通販型保険会社の場合、それぞれの事故に対して専任の担当者が付くので、さほど心配はないだろう。

安いなりのサービスではないの? 「安さゆえの不安」
 最後に一番気になる「安さゆえの不安」だ。いざというときに使う保険という商品の特性上、その時になって「安いなり」だったのでは困ってしまう。

 この点については、我々が支払う保険料は、その内訳として事故の際に支払われる保険金となる「純保険料」と、そのほかの運営経費や代理店への手数料といった「付加保険料」に分けられる。通販型が安いとは言っても、この付加保険料を削っていて、純保険料はそのままなので、補償に関して不安を感じる必要はない。

 たとえば代理店の担当者が契約のために足を運ぶ交通費や人件費、説明のための資料の紙代、印刷代も、インターネットを使うことで削減できる。さらに代理店を通さない分、そのマージンや管理費なども減る。こうした付加保険料の部分を削ることが、通販型保険の安さの理由というわけだ。

 保険会社に求めるクオリティとして、もう一つ気になるのが事故を起こした時の“示談能力”だ。双方に過失がある事故の場合に、それぞれの過失の割合を決めるワケだが、保険料が安い分、そういった示談に弱いのではないか? と思ってしまう。

 しかし“示談”と言うと、双方の保険会社の担当が舌戦を繰り広げるイメージだが、実際は違って、よほど特殊なケースを除き、過去の判例を参照して過失割合が決められるのだ。年間72万件を超す事故があるわけで、その中で似たような事例があるというのは、言われてみれば当然のこと。もちろん各社ちゃんと示談交渉のプロもいるが、それによって大きく過失割合が変わるということはないようだ。

 というように、通販型ならではの不安もあるが、実際にはほとんど代理店型保険と変わらないと思ってよいだろう。

(瀬戸 学)
2011年 6月 15日