やじうまパリモーターショー2008(3)
パリ自動車名所めぐり その2

シトロエン公園
  パリの地図を眺めていると、15区のセーヌ川沿いに「Parc Andre Citoroen」(アンドレ・シトロエン公園)という緑地を発見できる。アンドレ・シトロエンは自動車メーカー・シトロエンの創業者の名前で、ここには1974年までシトロエンの工場があったところで、パリ市が土地を買収した後、1992年に公園としてオープンした。

  14haにも及ぶ広大な公園で、各種の植生見本や温室、観光気球などがあるが、かつての工場を思わせるものはない。が、公園周辺には「Quai Andre Citoroen」(アンドレ・シトロエン河岸)という地名が残っているし、「Javel - Andre Citroen」という地下鉄の駅もある、Andre Citroen公園の沿革を書いたプレートも立てられている、という具合で、それなりに往時を偲ぶことができる。

  さらに公園の隣には「Le Bistrot d'Andre」(アンドレ・シトロエン食堂)という店があり、店内はシトロエンのミニカーや各種の写真、ポスターなどで飾られている。もちろん、ここで食事もできる。

  シトロエンに興味がなければただの広い公園、というところだが、パリのすぐに行けるもう一つの自動車名所ということで、紹介しておく。

 

アンドレ・シトロエン公園。中央の丸いものは観光用気球公園の沿革を書いたプレートや、シトロエンゆかりの地名が周辺にある
公園は14haと広大公園にあった2CV型遊具ジャヴェル河岸(シトロエン河岸)からセーヌを眺める
Le Bistrot d'Andre。メニューの表紙には2CVが公園の入口にあるティーサロン。ダブルシェブロン(シトロエンのエンブレム)のネオンが飾られている

Parc Andre Citoroen(仏語)
http://www.paris.fr/portail/Parcs/Portal.lut?page=equipment&template=equipment.template.popup&document_equipment_id=1791

パリの便利なパーソナルモビリティ「Verib」

Veribの自転車
  ところで、パリの散策に便利だったのが、パリ市肝入りのレンタル自転車システム「Verib」(ヴェリブ)だ。

  サービス開始からすでに1年以上が経過しているので、ニュースなどでご覧になったり、実際に利用されたりした方もおられるかもしれない。

  Veribの特徴は、パリ市内のいたるところに借出/返却可能なステーションがあり、どのステーションでも借りられるし、返せることだ。ステーションでなら乗り捨て自由というわけだ。ステーションは300mおきに設置されていることになっていて、たしかにパリのあらゆるところで見かける。すべて無人の機械管理となっていて、24時間年中無休で使える。

  値段は1日券が1ユーロ、7日券が5ユーロ、年間登録なら29ユーロすむ。誰でも登録できるから、旅行者でも使える。

  このほか150ユーロのデポジットが必要になり、さらに30分以上使用すると1ユーロ、1時間で2ユーロといったように時間制の使用料がかかる。が、最初の30分間は無料だから、30分ごとに途中のステーションで自転車を乗り換えていけば、無料でどこまでも乗り継げるということになる。また無人の決済システムを使うために、ICチップ入りのクレジットカードがないと、利用できない。

 

パリモーターショー会場脇にあるVeribのステーションステーションにある貸出ポスト。タッチパネルで操作し、英語表示も選べる。登録から貸出手続きのほか、自分のアカウントの状況の確認や、周辺のVeribステーションの状況の確認までできる
ステーションでは自転車が頑丈にロックされている。ポストで自分のアカウントを登録し、どの自転車を借りるかを選ぶとロックをはずせるようになる前後灯や駐輪用のワイヤーロックなどを備える3段の変速機付き

  料金制度やステーションの設置間隔からするとどうやらこのシステムは、短時間短距離使用が前提の自転車レンタルシステムで、1日借り切ってどこか遠くへサイクリング、というものではない。パリ市民の様子を見ていると、通勤時に自宅付近のステーションで借りて、職場付近のステーションで乗り捨てる、というのがもっとも多い使い方らしい。

  自転車はママチャリ風で、不特定多数の人に使われることを考慮して、自転車の造りは頑丈一辺倒で重たい。

  手軽でよくできたシステムで、愛用者も多いのだが、いくつかの理由から、筆者は積極的にはお勧めしない。

  まずVerib自体の問題がある。1年使われた結果なのか、壊れている自転車がかなりあって、借りる前によく自転車をたしかめないと、チェーンが外れていたとか、シートポストの高さが固定できないとか、ハンドルが曲がっているなんて個体をつかむことになる。

  時間帯によってはステーションにまったく自転車がなかったり、あるいはいっぱいで返せなかったりする。行った先の近所のステーションの位置を確かめておかないと、ステーションを探して長時間うろうろして余計なお金がかかる。

  パリの交通環境も、慣れないと難しい。パリでは自転車も自動車と同じ扱いになり、歩道を走行できないし、一方通行を守る必要がある。パリ市内には一方通行がよくあって、ちょっとそこまで行くだけなのに大回りになることがある。さらに、自転車専用通行帯や優先通行帯もあるが、なければ自動車と混走になる。きっちりヘルメットをかぶったり、反射ベストを着たりしているパリっ子も多いから、これらのことに不慣れな日本人は相当注意する必要がある。

  もちろん右側通行だし、信号は歩道にひっそりと立っていて、日本のように頭上高く設置されていないから見落としがちになる。

  などと言いつつ、筆者はパリモーターショー会場への通勤や買い物、ほんのちょっとの観光にVeribを使い、多いに楽しんだ。街をぶらぶら散策するには絶好のスピードで、しかも安く爽快だ。終電も気にしなくていい。

  なによりパリはコンパクトにできていて、起伏も激しくないから、Veribでたいていのところに行けてしまう。坂がないわけではないが急ではないし、Veribの自転車には3段変速機が付いているのであまり苦しくない。危なかったりよく分からなければ、降りて自転車を押して、歩道を歩けばいい。

  日本の都市全域をVeribで移動するのはちょっと無理としても、ほかの公共交通機関や自家用車と組み合わせれば、使い勝手はいいだろう。こんなシステムが地元に欲しい、と強く思った次第である。

Verib公式サイト(仏語)
http://www.en.velib.paris.fr/

(編集部:田中真一郎)
2008年10月17日