首都高、「首都高講座3限目:川崎縦貫線大師ジャンクション」
2008年度末に先行開通予定の大師JCT見学会

10月18日開催



  首都高速道路は、首都高が行っているさまざまな取り組みを一般公開する「首都高講座」の一環として、2008年度末(2009年3月末)に一部先行開通予定の川崎縦貫線大師ジャンクション(大師JCT)の見学会を10月18日に開催した。

  大師JCTは、神奈川県川崎市に建設中のジャンクションで、浮島から川崎市中央部へ向かって作られている「高速川崎縦貫線(高速神奈川6号川崎線)」と高速神奈川1号横羽線を接続するもの。神奈川6号川崎線はすでに浮島から殿町出入口までが開通しており、川崎中央部へむかって建設が進められている。大師JCTの主な目的は、神奈川6号川崎線と神奈川1号横羽線の接続にあるのだが、2008年度末に国道409号と神奈川1号横羽線を結ぶ大師出入口の部分だけが開通となり、2010年度末予定で神奈川6号川崎線とのジャンクション機能が供用開始される。

段階的に開通する大師JCT。1段階目として、神奈川1号横羽線方面との出入口ができる
  ここで首都高に詳しい方は、「あれ?大師にはすでに出入口があったのでは?」と思われるかもしれないが、従来の大師出入口が東京方面からの出入口だったのに対して、産業道路と国道409号の交差点のやや西よりにできる大師JCTの大師出入口は、横浜方面への出入口となる。首都高ではこれにより、大師JCTの6km南に位置する横羽線浅田出入口の交通量が約2割(4000台/日)減少すると見込んでおり、渋滞緩和に役立つものとしている。また、京浜急行川崎大師駅からみなとみらい間の所要時間も30分から20分へと10分の短縮を見込んでいる。

  2年後には神奈川1号横羽線と神奈川6号川崎線が接続されることで、湾岸線、神奈川5号大黒線に加えての道路ネットワークが整備されるとしており、事故や災害による通行止め、渋滞時の迂回など、高速道路としての定時制の確保が可能としている。

大規模ループを持つ大師JCT 
  首都高講座の3限目となるこの見学会では、神奈川1号横羽線と接続される大師JCTの上部構造、そして神奈川6号川崎線と接続される下部構造の2カ所が公開された。

  ループ状の構造を持つだけに、説明が煩雑になるのだが、以下「神奈川1号横羽線から大師JCT大師出入口(および神奈川6号川崎線)」へ向けてを「下り」、「大師JCT大師出入口(および神奈川6号川崎線)から神奈川1号横羽線」へ向けてを「上り」と表記していく。なお、この大師JCTは、将来的に神奈川6号川崎線の殿町・浮島方面だけでなく川崎市中央部へ向けての富士見出入口方面との接続、そして神奈川6号川崎線と神奈川1号横羽線東京方面への接続も予定されており、その準備部分も用意されている。

 

待ち合わせ場所の京浜急行大師線産業道路駅から事務所に向かい、その後大師JCTへ向けて徒歩で移動関係者以外立ち入り禁止の部分から、地下へと向かう地下道を抜けた先には、大師JCTの地下への入口部分が現れた。ここは下り線になり、手前から奥に向かって車が走る。左が神奈川6号川崎線殿町・浮島方面で2010年度末開通予定、右が同線の富士見方面で将来的に予定されている部分
同じ場所から逆方向を見たところ。奥から手前に向かって車が走る外壁には、緊急電話など各種の施設を取り付けるための凹みが設けられているコンクリートブロックは、モジュール構造になっており、モジュール間の接続部にはゴム状のものが充填されている。これにより、季節の温度変化によるコンクリートの伸び縮みに対応する
内部には防水シートが置かれていた。開通へ向けての作業はまだ多い車の走る方向とは逆方向に歩いていく。この辺りはカーブしており、道に数度のバンクが付けられている下り線の地下への入口部分。手前から奥へと向かって車が走り、1車線道路となる
同じ場所から逆方向を望む。奥から手前へと向かって車が走り、左が神奈川1号横羽線、右が大師JCT大師出入口につながる。2008年度末は左側のみが開通する左の写真より、神奈川1号横羽線向かって歩いたところ。左側には上り線が見えてきた。上り線と下り線で高低差が付けられているのが分かるループ部をさらに歩いていって、後ろを振り返る。ここはループ部の東側に辺り、手前から奥に向かって車の走る下り線。まだ道路のできていない左側の部分は、神奈川1号横羽線の東京方面につなげるためのもの
道路上部から西方向を望む。手前右側が大師JCT大師出入口。奥に見える建物は、川崎大師の自動車交通安全祈祷殿大師JCT大師出入口(料金所)。道路部はほぼ完成しているが、料金所の構造物はまだこれから。足場を組んでいる状態だ大師JCT上部で講義を行う首都高速道路神奈川建設局川崎工事グループの池田信哉氏
高さ45mの換気塔。地下部分と地上部分の空気を換気する施設。左側の低い建物に、空気の浄化施設が設置される道路灯などを取り付ける基部もすでに設置されていたループ内部には貯水層が設けられている。雨が降った際に、一度に地上に水を流すのではなく、一旦この貯水槽に貯め、時間をかけて地面に排水する。環境への負荷を軽減するために設けられている
下り線から上り線に移動するには、このようなパイプで組まれた足場を使う。下り線と上り線の勾配の差に注目上り線から、神奈川1号横羽線を望む。左が東京方面、右が横浜方面。左に見えるT字上のものが大師本線料金所で、右に見える構造物が1号横羽線との接続部。上り線は1号横羽線をオーバーパスして接続するためこのような勾配差が付けられている上り線のループを地上に向かって歩く。車は奥から手前に向かって走る。左に見えるのは下り線
上り線から見た自動車交通安全祈祷殿。道路の右部分は将来的に作られる東京方面接続用の箇所ループ部分の橋脚。排水パイプが設けられているのが分かる。この排水パイプで、道路部分に降った雨を、先ほどの貯水槽に導く作業中のダンプカー。エンジン音がして、タイヤが回っているのになぜか前に進まない。特殊な台でなにかをしているよう
先ほどのダンプカーが乗っていた特殊な台「スパッツ」。ダンプカーなど作業所内の自動車が一般道に出る前に、このスパッツに乗って泥などを落とす。周辺道路を汚さないための機械大師JCT内の電柱。大師JCTを作る際に、東京電力と協力して既設電柱の場所を動かし、現在は作業中のため電圧を若干下げてもらっているとのこと

大師JCT上部から360度まわりを見たところ。クリックすると拡大される写真の左端が神奈川1号横羽線との接続部、右端も同様の場所でパノラマ写真となっている(2万3686×1874ピクセル、4.05MBの画像が開きますのでご注意ください)

大師JCT地下構造部の建設はMMST工法で
  続いて公開されたのが、大師JCTの地下工事現場。この大師JCTの地下構造は首都高が主導して開発された、MMST(マルチマイクロシールドトンネル)工法を用いて建設されている。国道409号の地下を、国道15号方向(富士見)から殿町方向までの540m区間のために開発された工法だ。大橋JCTでは、巨大な円柱状のシールドマシンを使って、2本のトンネルという方法で作られていたが、この区間は地下部分が比較的浅いこと、そして開削(上から穴を開ける)できないことなどを考慮してMMST工法が用いられた。このMMST工法は、最初に小型のシールドマシンで、開けたい大きさのトンネルの外周に穴を開け、外枠を作り上げる。次に外枠の中の土を取り除き、目的の大きさのトンネルにするというものだ。これにより、浅い部分においてもシールドマシンを使って効率のよい大きさのトンネルを作ることができるそうだ。また、トンネルの断面形状も連続的に変化させることができ、地下部分も富士見側が上下に道路という構造になっているのに対し、殿町・浮島側では左右に道路と連続的に変化するトンネルとなっている。

地下トンネル工事現場を上方から望む。構造物に隠れて読めないが「地図に残る仕事」というキャッチフレーズが掲げられているトンネル工事現場には、足場組みされた階段を100段ほど下る同じ階段を現場工事部分から見たところ。地上は30mほど上となる
国道409号の真下にある地下トンネルの大師JCT側。奥が殿町・浮島方面。縦方向約22.5m~24.05m、横方向26.1m~27.9mの巨大さで、大きさに幅があるのは断面積が連続的に変化しているからMMST工法の概略図。右上に縦方向から横方向に並びの変化する高速道路の図が付いている。このようなことが効率的にできるのも、MMST工法ならではだというこれは、大師JCT側の施設配置図。上下方向に道路が配置され、左側には各種の共同溝と換気ダクトが設けられる。殿町・浮島側になると道路が左右に並び、共同溝は下部へと配置される
MMST工法のStep図。縦型シールドマシンと横型シールドマシンを使って掘り進むStep2。シールドマシンが穴を開け終わったところにはセグメントが埋められ、外枠が形作られていくStep3。外枠部分にコンクリートや鉄筋が入れられ、外枠をがっちり固める
Step4。外枠内の土が掘り出されるStep5。掘り出した箇所は空間となるので、そこに内部構造物を構築していくトンネルの前での講義風景。なかなか非日常的なシーン。参加者は誰もが興味深く講義を聞いていた。先生は同じく池田氏
シールドマシンが穴を開け、コンクリートが入れられた部分。ここはトンネル側部にあたるトンネル内部で建築の進む構造物。上下の道路の仕切りとなる部分トンネル内部では、地上にあるランドマークの写真が掲示されていた。この場所は大相撲で有名な春日山部屋の地下にあたるらしい

トンネル内地下のセグメント外壁には、水が流れたようなあとがあり、石灰分が固着して鍾乳洞のように見えなくもない。以前掲載した大橋JCTのリポートでは、セグメントを内側から見ていたのだが、MMST工法ではセグメント外壁が見られる。「トンネル内壁固着物は、内装工事の際にもちろん削り落とします」とのことトンネル内を殿町・浮島方面に向かって歩く。左側に見える白いボックス状のものが、共同溝となる共同溝のアップ。共同溝といっても1本ではなく複数のものが組み合わされている
殿町・浮島方面へ向かって上っているところ。この部分では上が道路、下が共同溝になる殿町・浮島方面からトンネル方向見ると、すでにトンネル入口は平行道路として完成している同じ場所から、殿町・浮島方向を見たところ。神奈川6号川崎線はこの部分から高架となって接続する
国道409号と平行して走る、神奈川6号川崎線。殿町出入口の標識が左側に見える。見学会を終えた場所は、京浜急行大師線小島新田駅にほど近く、トンネル内を一駅分歩いたことになる。また、この大師線は、ほぼ全線を地下化する工事が始まっており、この近辺の風景は将来的に大きく変わっていくことになるだろう

  川崎縦貫線大師ジャンクション見学会では、360度ループで構成される大師JCTと、MMST工法で作られている神奈川6号川崎線がとても興味深かった。首都高では、「首都高講座 4限目:レインボーブリッジ開通15周年」と題した、レインボーブリッジなど首都高の東側を管理する東東京管理局の交通管制室などの見学会を予定している。申し込み締め切りは、10月27日(必着)となっているので、興味のある方は下記関連リンクを参考に申し込んでみてほしい。首都高を支えるシステムの一端をかいま見ることができるのではないだろうか。

URL
首都高速道路株式会社
http://www.shutoko.jp/
首都高講座 3限目:平成20年10月18日(土)川崎縦貫線大師ジャンクション
http://www.shutoko.jp/shutoko-news/kouza/03_081018/index.html
今後の整備計画 川崎縦貫線
http://www.shutoko.jp/company/plan/road/plan/kawajyu/index.html
高速川崎縦貫線 大師JCTの整備方針について~横浜方向暫定出入口を設置、より便利になります~
http://www.shutoko.jp/company/press/sub/060217.html
川崎縦貫線 / MMST工法について
http://www.shutoko.jp/company/plan/road/plan/kouhou.html
首都高講座 4限目:平成20年11月13日(木)レインボーブリッジ開通15周年 東東京管理局
http://www.shutoko.jp/shutoko-news/kouza/04_081113/index.html
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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20080924_37784.html

(編集部:谷川 潔)
2008年10月20日