NEXCO東日本、圏央道の一部となる「八幡高架橋」工事を公開
千葉県東金市での夜間工事見学会

八幡高架橋の一部となるべく設置中の橋桁(クリックするとアニメーションGIFが表示されます)
10月21日夜開催



  東日本高速道路(NEXCO東日本)木更津工事事務所は、現在建設中の首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の本線となる、八幡高架橋の架設工事を一般に公開する見学会を10月21日夜に開催した。

工事が行われた八幡高架橋は、千葉東金道路東金IC近くになる。見学場所は工事現場のやや西のスペース(図はNEXCO東日本のリリースより)



八幡高架橋は、すでに開通している千葉東金道路と、2010年度の開通を目指して建設中の圏央道東金IC(インターチェンジ)~茂原南ICを接続する道路に架かるもので、千葉東金道路の東金IC近くに設置される。東金ICと接続している国道126号と交差する橋となる。

  今回工事を行うのは、橋長199m、最大支間長(支柱と支柱の間隔)72mの鋼3径間連続合成箱桁橋の一部となる橋桁の設置で、長さは34749mm(約35m)、重さは235.6tのものを設置する。あらかじめ組み上げておいた橋桁を、地上で運用するクレーンとしては最大級という800t吊りクローラクレーン「KOBELCO  SL-13000」で吊り上げ、国道126号との交差部分に設置する。

工事について詳しく語ってくれた東日本高速道路株式会社関東支社木更津工事事務所東金工事長の野田豊氏
  この橋桁は桁を鋼板でボックス状に組み上げたもので、NEXCO東日本の野田氏によると「支柱間が短いものは、主にPC(Prestressed Concrete、あらかじめストレス[応力]を加えて強化された鉄筋コンクリート)を使いますが、今回の支柱間隔では経済的な観点から鋼板による箱組の桁を用いています。もっと支柱間隔が長くなると斜張橋(横浜ベリブリッジなどのような吊り線を用いる橋)という選択肢もあるのですが」とのこと。この形状が選ばれたのは、経済的な面が第一であると語ってくれた。



  以下の4ステップに分けた形で工事を行うことが計画され、交通量の減る21時から予定どおり開始された。

STEP1、21時~22時30分:架設する橋桁を地組ヤードから重量運搬台車で移動
STEP2、22時~翌0時30分:大型クレーンによる橋桁の吊り上げ、据付け
STEP3、0時30分~1時30分:橋桁の連結作業
STEP4、1時30分~5時30分:防護工・付属設備の設置および交通規制解除準備

STEP1の工事図面。縦方向が国道126号、横方向が圏央道となるSTEP1の作業内容詳細。複数の工事が並行して行われるSTEP2の工事図面。重量運搬台車が移動し橋桁を吊り上げる
STEP2の作業内容。一番右端に橋桁の塗装について触れられているSTEP3の工事図面。橋桁を落とし込み、連結作業が始まるSTEP3の工事内容。主に800tクローラ・クレーンが活躍している
STEP4の工事図面。撤収作業について描かれているSTEP4の工事内容。吊り具の解体が最後の大きな作業となっている

  工事はまず、国道126号を一部通行止めにするところから始まった。これは、国道126号が橋桁の直下となり、橋桁を設置するべき場所の下まで、特殊な重量運搬台車で運ぶためである。この重量運搬台車は、1台あたりタイヤが96個あり、今回の工事ではこれを2台接続して橋桁を運搬する(つまり192個のタイヤがある)。1台あたり、2カ所(2台で4カ所)の部分で橋桁を支え国道126号へ移動。あらかじめ橋桁は国道126号と平行して置かれており、この重量運搬台車が車輪の軸を90度転換し、国道126号へと横移動。その後橋桁を吊り上げる場所まで縦移動(写真では手前から奥への移動)した。

  見学会参加者の人数がピークに達したのはこのあたりで、おおよそ50人ほど。近所の人々、報道陣、そして道路好きの数名の方などが工事の進捗を見守った。

工事箇所全景。右に見える緑色の構造物が重量運搬台車に積載された橋桁。その左が550tクレーン、次にある巨大な作業車が800tクレーンだ。右の橋桁を左に見える高架道路に接続する約35mの長さ、そして約240tの重さを持つ巨大な橋桁。2台連接された重量運搬台車の上に積載されている別方向から橋桁を見る。ボックス状に鋼板で組まれた桁の部分がよく分かる
作業員の右に見えるのが、重量運搬台車の運転席。当然ながら視界は狭く、周囲に配置された作業員と無線連絡を行いながらの運転となる重量運搬台車のタイヤ。2台で192個のタイヤがある。タイヤが多ければ多いほど一つのタイヤにかかる負担は減り、重量物を積載できることになるタイヤを別の角度から見てみた。コの字上の太いサスペンションアーム、そして銀色に光るシリンダーとある種の迫力がある。このタイヤが90度回転し真横へ移動する

国道126号(写真では右側)と平行に置かれていた橋桁。重量運搬台車が2台あるのがよく分かるカット。橋桁の上にはH鋼の桁があり、橋に取り付けた際の仮の支えになる重量運搬台車の図面。橋桁との取り付け部の間隔が9000mmであることが示されている橋桁を吊り上げる800tクローラクレーンKOBELCO SL-13000。キャタピラーの上下の間隔だけでも2370mmある巨大な機械だ。左側が実際に吊り上げるクレーン部分、右側がバランスを取るためのカウンターウエイト部分

カウンターウエイト部分を見る。作業によってウエイトを変更する。NEXCO東日本でもこのクレーンを用いる工事は年に数回ほどとのこと800tクレーンの図面。この図面から吊り上げるクレーンの腕の長さ(ブーム長)は54.86mであることが分かる


  ここで、800t吊りクレーンが回転を開始。800t吊りクレーンは重量物を吊っても倒れないよう、後部にカウンターウエイトが積まれており、重量物を吊る際はこのカウンターウエイトとバランスするよう位置を調整する。位置を調整し終えるとフックを掛けるのだが、このフックも4方向ダブル掛けのもので、トータル8本のワイヤーが用いられていた。フックを掛け終え橋桁を持ち上げ始めたと思ったら、一旦ストップ。野田氏によると、これは橋桁のレタッチ作業を行っているとのこと。重量物運搬台車との接続部のペイントがどうしても剥げてしまうため、橋桁を設置する前に塗り直すそうだ。このレタッチ作業を15分ほど行ったら、いよいよ吊り上げ開始。800tクレーンを使ってみるみるうちに橋桁が吊り上がっていく。

  国道126号と平行に置かれていた橋桁をそのまま吊り上げ、ある程度の高さになったところで、橋桁をすでにできている部分と接続するため回し始めた。本来の橋桁の角度である国道126号との交差方向になった時点で回転をストップ。後はゆっくり下ろし、すでにできている部分との接続作業になる。微調整などでかなり苦労するのだろうと見ていたのが、非常にスムーズに橋桁ははめ込まれ、野田氏によるとおよそ30分ほど前倒しで工事が進んでいたとのこと。この日は仮止めのため、本来1800本のボルト(1本あたり直径22mm)で止めるべき橋桁だが、600本で締結。今後にかけて本締めを行っていくという。しかも、そのボルトも環境に配慮した締結音が通常のボルトより静かなソフトピンというものを用いているそうだ。

  仮止めが終わると、工事の終了作業が始まる。工事時間のスケジュールを見ると、橋桁を取り付ける作業よりこの終了作業のほうが時間的に長く、工事における“段取り”の大切さがうかがえる。橋桁直下まで進出した重量運搬台車が最初の位置に戻りはじめ、同時に国道126号の中央分離帯にある防護柵(ガードレール)の取り付け・復旧作業が開始された。重量運搬台車が所定の位置に戻った時点で工事現場を後にしたが、その時刻が22日の午前1時。この段階でも30分ほど前倒しで工事が順調に進んでいた。

21時から工事が始まった。最初に国道126号をパイパスさせるための誘導を開始。同時に橋桁での準備や、国道126号の中央分離帯の防護柵の撤去も
中央分離帯の防護柵の撤去はこのように小型ショベルカーも併用する。周囲の安全を確認する作業員も配置された
国道126号がバイパスされ、車両が橋桁の手前のバイパス道路に流れ込んできた。これで本線にはクルマが流れなくなる。と、同時に重量運搬台車が横移動するための準備を開始
重量運搬台車のタイヤの向きが変わり始め横移動が開始された。この頃には見学者が増えてきた
重量運搬台車が国道126号に進出。800tクレーンも向きを変え始め重量運搬台車に積載された橋桁に正対する

左の写真は橋の奥方向から工事現場を見たところ。いよいよクレーンのワイヤーが橋桁に掛けられる。4方向ダブル掛けで8本のワイヤーを用いていた
ワイヤーが張られ、橋桁を吊り上げるのかと思ったのだが、ここでタッチアップ作業開始。上方の橋の部分でも各種の準備がされているようだ
さまざまな箇所をチェックした後、いよいよ橋桁が吊り上がった。意外と簡単に上がってしまうという印象

橋桁を垂直方向に上げる作業が淡々と行われていく

ある程度上がったところで、徐々に橋桁の向きが国道126号と交差する方向に変わっていく

向きの変わった橋桁が、上部の橋の部分に近付き、作業員が忙しそうに各部の調整を行っている
いよいよ接続。接続のときもあっけなく接続された。順調に行く工事とはこういうものかもしれない。この後600本のボルトで仮止めされる
橋桁が取り外された重量運搬台車が所定の場所に戻ってきた。走行音などは意外と静か
橋では、ボルトの仮止めが続けられ、国道126号では現状復旧作業が開始された。この作業が朝方まで続く

  野田氏によると今回の工事に点数を付けるならば「80点~90点」とのことで、おおむね順調な工事であった。この圏央道の工事は2010年度の完成へ向けてまだまだ続くのだが、完成した暁には、東京湾アクアラインを利用しての神奈川方面から千葉への移動の利便性の向上を含め、首都圏の道路交通の円滑化が見込まれている。また、環境面でも、圏央道、外郭環状道路(外環)、首都高速中央環状線(C2)の完成で、CO2が年間200~300万t削減されるとしており、道路ネットワークの整備を鋭意進めていくとのことだ。

橋桁を積載し国道126号に向かって横移動する重量運搬台車(クリックするとアニメーションGIFが表示されます)800t吊りクローラクレーンによって徐々に上方へと向かう橋桁(クリックするとアニメーションGIFが表示されます)

 

URL
東日本高速道路株式会社
http://www.e-nexco.co.jp/
建設中の圏央道で800t吊り大型クレーンによる夜間の橋梁架設工事を行います!
http://www.e-nexco.co.jp/pressroom/press_release/kanto/h20/1014/
圏央道(PDF)
http://www.e-nexco.co.jp/pressroom/press_release/kanto/h20/1014/pdfs/about_road.pdf
KOBELCO SL-13000
http://www.kobelco-cranes.com/products/c_crane/SL-13000.html

(編集部:谷川 潔)
2008年10月23日