ホンダ、社長交代会見「車の形に新たな発見を」

(左から)本田技研工業株式会社の伊東孝紳専務取締役、福井威夫代表取締役社長

2009年2月23日開催



 本田技研工業は2月23日、代表取締役社長の交代などを含めた新役員人事を発表し、東京都港区の本社にて記者会見を実施した。なお、社長交代の詳細については関連記事を参照していただきたい。

 会見では、福井威夫代表取締役社長が「企業の永続性の観点から、厳しい時代だからこそ新しく若いリーダーシップによってホンダが一丸になって乗り越えるべきだと思い、社長を譲ることにした」と社長交代を発表。新社長となる伊東孝紳専務取締役については、「本田技術研究所の社長を兼任してもらい、厳しい時代でも選ばれる魅力的な商品や、将来技術開発の陣頭を執り、強力なリーダーシップで全世界のホンダを引っぱってもらいたい」とコメントした。

 伊東氏への通知は「正月休みに入る直前に伝えた」とのことで、社長交代を決断した理由については、「企業の継続性に於いて世代交代は重要であり、数年で世代交代することが重要だと思っている」と述べた。世界経済の厳しい状況が続く中での社長交代については「経済状況は想定外で正直迷ったが、厳しい状況を乗り越えた後の加速力を考え判断した」とのこと。伊東氏が新社長に選出された理由については「ホンダの社長はやはり4輪車や2輪車が好きでないとだめ」とした上で、「現場を大事にする気持ちと、心身共にバイタリティと行動力、決断力を持っているため」とし、伊東氏を一言で「タフ」と表現していた。

 福井氏は、2003年の社長就任以来で最も印象に残った出来事として新型インサイトの発表会を挙げ「これまでの発表会と比較してあれほどメディアの関心が高かったものはなかった」とコメント。また、最も印象に残った決断はF1撤退で、「Honda Racing F1 Team」の売却については、「話はたくさん来ているが、真面目に買いたいとしているところはなく、難航している」ものの、「できることなら、現地チームスタッフが仕事を続けられ、スターティンググリッドに並べられるよう最大限の努力をしており、まったく不可能だという状況でもない」と進捗状況を説明した。

 取締役相談役就任後の経営の参画については「基本的にはあまり参画しないが、経営の継続性の観点での役割は担うと思う」とコメント。社長としてやり残したことについては「山ほどあるが、スーパーカブを超えるスーパーカブを作りたいというのが永遠のテーマであった」と語った。

 続いて、伊東氏が「自動車業界は100年に1度の危機と言われ、ホンダも大変難しい状況であり、重責ではあるが引き受けることとした」とコメント。今後のホンダの方向性については「福井氏が掲げた“源流強化”の取り組みを進化させ、全社のベクトルをあわせて、新しい時代を切り開く商品を提案していくことだと考えている」と述べた。また、「世界中の従業員の夢や志しを大切にする経営も引き継ぐ」とした上で、「全世界の事業内容や質を原点に立ち戻って強化し、厳しい時代を生き抜き、将来の競争力に繋げ、効率の高い事業運営体制を構築していく」と語った。

 新社長への内定について伊東氏は「非常に光栄が47%、大変そうだなぁと言うのが53%だったが、やるのならやり甲斐があるし是非と思った」とのこと。ホンダの方向性については「ホンダは元々楽しいと思える商品を作る会社だが、経済状況を受けて若干意気消沈している印象があるので、基本理念に立ち返ってモチベーションを上げたい」「感受性があって、行動力がある会社にしたい」と展望を述べた。

 世界の経済状況については「来期下期には市場回復の兆しが見えればなぁ、と言う希望はあるが、それに頼っているとひっくり返る、という厳しさで考えている」としたうえで、「リストラという言葉は好きではないが、資源集中などのアクションはまだまだ考えなければいけないと思っている」とコメントした。国内の自動車市場も厳しい状況だが、「車が必要とされていないわけではなく、買いたいと思わせる製品を出せない企業に責任がある。通り一遍の商品を出せば売れるという安易なサイクルではなく、ユーザーの要望を真摯に勉強し、車の決まった形に新たな発見をする必要がある」とコメントした。

 福井氏が新社長の条件として「ホンダの社長はやはり4輪車や2輪車が好きでないとだめ」としていることもあり、伊東氏の愛用した2輪車および4輪車も紹介。2輪車では「カブ」から始まり「SL125」「XL250」「ドリーム」などに乗り、現在は「XR BAJA」を「究極の通勤に優れた2輪車」として愛用しているとのこと。4輪車は初めての車が「N360」で「素晴らしく大変感激した」とコメント。また、2輪車/4輪車ともに他社も含めて「数え上げたらきりがない程乗っていた」という経歴を紹介していた。

 なお、ホンダは社長のほか取締役人事もあわせて発表した。現執行役員の小林浩氏と田内常夫氏、現アメリカンホンダモーターカンパニー・インコーポレーテッド駐在の山田博之氏が新任取締役の候補者となっている。また、退任予定者のうち現専務執行役員の加藤正彰氏は八千代工業の代表取締役社長に、現取締役相談役の吉野浩行氏はホンダの特別顧問に就任する予定だ。

(編集部:大久保有規彦)
2009年2月23日