ITS-Safety2010で見えた、次世代ETCと呼ばれるDSRCの本領
駐車場の料金徴収だけでなく、周辺の交通情報もキャッチ

「ITS-Safety2010」のスマートウェイブース

2009年2月25日~28日開催
(一般参加日)




 2月25日~28日に東京都臨海副都心で開催される、「ITS-Safety2010」の公開デモンストレーション。それに先立って報道関係者向けの事前公開が行われた。日本科学未来館の屋内展示場では、国土交通省が推進するスマートウェイのブースが設けられ、次世代ETCと呼ばれるDSRC(専用狭域通信:Dedicated Short Range Communication)の技術やサービスの内容が展示された。

次世代ETCが支えるスマートウェイサービス
 次世代ETCとは、無線で通行料金の徴収を行うETCの通信情報を増やしたもので、DSRCと名付けられている。国土交通省が管轄する国土技術政策総合研究所のWebサイトで、2月27日までモニターを募集中で、DSRCという言葉を聞いた人もいるだろう。

 次世代ETCと言われると、交通事故や渋滞などの道路問題を解決するためのITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)とはずいぶん毛色が違っているように思える。しかし、次世代ETCであるDSRCは、ETCのように単に有料道路の料金決済を行うだけでなく、車の進行方向で起きている事故や渋滞の情報、あるいは見通しのよくない場所から合流してくる車両の存在などを、道路側に設けられたDSRCのアンテナから随時キャッチし、ドライバーに注意を促す機能を持ち合わせている。この情報提供サービスこそが、国土交通省が推進しているスマートウェイサービスであり、スマートウェイサービスの情報を受けるためには、DSRC車載器が欠かせない装置となっている。

高速・大容量通信が可能なDSRC
 そもそもDSRCとは無線通信の種類を表す名称で、車車間通信や路車間通信で広く使われている。現在利用されているETCやVICSでもDSRCが使われており、なかでもETCには、路車間通信で国際標準化された「5.8GHzアクティブ方式DSRC」が採用されている。この5.8GHzアクティブ方式DSRCは、停車中であればブロードバンド並みの4Mbpsもの高速・大容量通信が可能。さらに道路側だけでなく、車載器側からも情報発信が可能なアクティブ方式で、信頼性に優れるというメリットがある。そして、次世代ETCとなるDSRCでもこの5.8GHzアクティブ方式DSRCが採用されている。

 この大容量通信を使うことで、従来の有料道路での料金決済だけでなく、映像や音声データを走行車へ送信したり、車両の走行履歴を収集することで、新たな交通情報を提供することが可能となる。また、将来的にはインターネットへの接続や、駐車場、ガソリンスタンドなどでの料金決済にも利用することが期待されている。

スマートウェイが実現する情報提供
 ITSの1つであるスマートウェイでは、高速道路上の随所に道路側DSRCを設置することで、見通しのよくないカーブの先の渋滞といった「前方障害物情報」や、進行方向の渋滞や路面の状況などの「前方状況情報」、また、合流してくる車両の存在を映像や音声で教える「合流支援情報」、道路標識を映像と音声で伝える「電子標識情報」などを提供し、車載器はこれらの情報を、音声や画像などによってドライバーに伝える。渋滞情報や故障車両の情報などは、これまでもVICSによって提供されているが、DSRCが普及することで、自車位置から直近の渋滞末尾情報や、交通標識の情報など、よりタイムリーに必要な情報を得ることができるようになる。

電機メーカー各社がDSRC車載器や路側DSRCを展示
 ITS-Safety2010の屋内展示エリアでは、アルパイン、トヨタ自動車、日本無線、パイオニア、パナソニック、三菱電機、三菱重工がDSRC車載器を展示し、NECと日立が路側DSRCを展示。車載器は、画像を表示するためにカーナビとリンクしたものが多く出展されていた。なお、パナソニックは、ITS-Safety2010で自動車メーカー各社が搭載するITS共通車載器の開発も行っており、また、国土交通省が行うDSRCモニターに使用する車載器も一括受注している。パナソニックでは、カーナビとリンクし映像も出力できる車載器も展示していたが、国土交通省のモニターで使用される車載器は、音声のみが出力可能なモデルになると言う。

 スマートウェイのブースでは、このほかに富士通テンがドライブレコーダーや車両運行管理システムを展示していた。

アルパインが参考出品するDSRC車載器はカーナビと連動。音声と映像でスマートウェイの情報提供するほか、DSRCを使ったインターネット接続サービスにも対応トヨタは単体のDSRC車載器とカーナビ一体型のDSRC車載器の開発品を展示
日本無線が展示するDSRC車載器は、VICS光ビーコンにも対応するフルスペックITS車載器。ナビと連携した画像・音声の情報表示のほか、単独の使用でも音声のみの情報受信が可能パナソニックはITS-Safety2010で自動車メーカー各社が搭載するITS共通車載器(写真左)と国土交通省がモニターで使用するDSRC車載器(写真右)を展示。ITS共通車載器はDSRCによるスマートウェイの情報のほか、ナビ本体の光ビーコンを使ってDSSSプロジェクトの情報も受信可能
カロッツェリアのブランドでおなじみのパイオニアは、DSRCユニットとカーナビをリンクした、DSRC対応カーナビの試作機を展示三菱電機はDSRC車載器とリンク可能なカーナビを展示。また、左の写真の丸いものは路側DSRCビーコンで、通常別体となる制御機とアンテナ部を一体にし、小型化している
三菱重工のDSRC車載器はクラリオンのカーナビと連動していた。カーナビには合流支援情報や電子標識情報が表示されていた
NECは路側DSRCを利用したETC車両入退場管理システムを展示。車両の情報を事前に登録することで、登録車両のみを入退場可能にする。また、制御装置にはタッチパネル式のモニターが付いており、パソコンをつなぐことなく管理ができる。
日立は路側DSRC無線装置を展示。スマートウェイの安全運転支援に加え、プローブ情報の収集にも対応する
富士通テンは業務用(写真左)と一般用(写真右)のドライブレコーダーを展示。業務用ドライブレコーダーでは、カメラを最大3つ接続可能なほか、音声や位置情報も記録。どちらも事故時だけでなく、常時記録ができる富士通テンは運送会社など多くの車両を所有する企業向けの運行管理システムも展示。運行車両の車速や回転数を記録することで燃費の改善や配車の効率化が図れる

(編集部:瀬戸 学)
2009年 2月 25日