国際オートアフターマーケットEXPO2009リポート
自動車関連業者向けのカー用品展示会

2009年3月12日~14日
東京ビッグサイト
入場料1000円




 カー用品店やディーラー、板金業者や塗装業者など主に車の修理やメンテナンスを行うプロに向けての展示会「国際オートアフターマーケットEXPO2009」が、3月12日~14日まで東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開催されている。入場料は1000円。

 この展示会は、一般のユーザーが直接購入できる商品はそれほど展示されていないが、なかなか興味深いものもあったので初日の模様をお届けする。なお、同時に「国際自動車素材・加工展」「オートモーティブテスティング東京 」も開催際されているが、メカトロニクスなどさらに業者向けの展示となっているため、その模様はRobot Watchに後日掲載の予定。

工具や塗装用具などプロ向けツール展示が充実
 国際オートアフターマーケットEXPO2009は、東京ビッグサイトの西1・2ホールを使っての開催となっていたが、展示エリアで大きな面積を占めていたのが大塚刷毛製造のブース。車の塗装を行うためのブースである「イオンシャワーブース」をはじめ、数々の塗装用品を展示。また、軽量化を図ったスプレーガンなども展示されていた。一般にも販売を予定しているものも展示されており、焼き付け塗装を行う際にミラーやゴムの部分などを保護する「シルバークイックマスカー」は、大手カー用品店での販売を考えていると言う。

 塗装関連では、「環境対応型塗装・水性低VOC-実演スペース」コーナーが設けられ、塗装用のプレハブユニット内において、実際にドアを塗装するなどのデモが行われていた。時間帯によってデモを行う会社が決まっており、BASFコーディングスジャパンやデュポン、イサム塗料などが順次自社の水性塗料のメリットをアピールしていた。塗装の場合、一般的に塗料を希釈する溶剤が必要となり、今まではシンナーなど石油系の溶剤が中心であったが、環境問題の高まりからか、水性塗料のデモは強く来場者の興味を引いていたようだ。

大塚刷毛製造のブース。受付の後方に見えるのが、イオンシャワーブース。静電気を排除することでホコリなどがボディーに付着するのを防ぐ軽量タイプのスプレーガン「O-LIGHT GUN」の試し吹きブース。ガンが軽量になることで、作業者の負荷を軽減するO-LIGHT GUNの本体。本体も軽いが塗料カップも軽量になっている。通常ダイカスト製法で作られるカップが、プレスで作られている
シルバークイックマスカー。紙で裏打ちされたアルミホイル。ラップのような箱に入るタイプとすることで購入しやすい価格と使いやすさを実現「マルテー ぼかしテープ」。右に見えるピンクのテープがぼかしテープ本体ぼかしテープを使って塗装をすると均一なぼかし塗装を簡単に実現できる。マスキングテープを工夫して同様な効果を発揮させることもできるが、作業者の熟練度による差がないのは作業の均質性向上に寄与する
ぼかしテープはこのように貼って使う。曲線も容易に実現できる環境対応型塗装・水性低VOC-実演スペースでのプレゼンテーション。大きなスクリーンに映し出されているのは、塗装ブースでの作業の模様塗装ブースはのぞき込めるようになっており、中では作業者が塗装を実演している。上部と下部のスリットを見る限り、一種のクリーンルームになっているのだろう

 工具に関しては、「TOPTUL」ブランドの工具メーカーであるトップトゥル ジャパンが積極的な展示を行っていた。トラックやバスの脱輪事故が社会問題化したこともあり、ホイールナットの締め付けトルクを守るためのトルクレンチの売上げが好調とのこと。また、トップトゥルの特色ある製品として、スパナとメガネレンチが一体となったコンビネーションレンチもお勧めですとのことだった。このコンビネーションレンチはスパナ部が送り角30度(通常は60度)になっており、ナットの5角をホールドする。お店での評判も上々と言う。

 そのほか目立った展示は、車のボディーコーティング作業に使うポリッシャー関連。先端にバフとよばれる研磨布を取り付け、コーディング剤を塗装面に塗り込んでいく工具だ。どのメーカーも車のボンネットのみをブースに設け、自社のポリッシャーの実演展示を行っていた。

TOPTULの工具展示。ずらりと並ぶ工具は迫力がある最近よく売れているというトルクレンチ。青や黄色に塗られたトルクレンチは、トルク固定型で、アルミホイールやスチールホイールといったホイールによって使い分けるTOPTULのウリとなるコンビネーションレンチ。左がスパナ部、右がメガネ部。1セットあると重宝する工具
スパナ部のアップ。写真でも分かるように通常のスパナとは歯の形が違う。これにより、ナットへ5角でかかり、より安定したトルクを伝えることができるケヰテックのポリッシャー「Mai(マイ)II」。回転力が同社史上最強のポリッシャー。車のボンネットを使って、ポリッシングをデモポリッシング面のアップ。デモを行っているスタッフもさすがにうまかった
コンパクトツールのポリッシャー。ポリッシング関連の展示は数多くあった

車両情報と連携した整備システムなど
 現在の車は昔の車と違い、ECU(エンジンコントロールユニット)で電子的にエンジンが制御され、パワーウィンドウやセキュリティシステムのイモビライザーなど、ある種の電子信号を送ることで動作している。そのため、車そのものがコンピューターと同様なものになっており、故障の際などの診断には、電子的に状態を判断する専用のツールが必要となっている。

 この分野で大手メーカーとなるのが、「BOSCH」のロゴでおなじみのボッシュ。カー用品店では同社のバッテリーが売られていることもあるが、この展示会ではシステムテスター関連を中心に展示。「KTS 200」というコンパクトテスターや夏に発売予定のタッチパネルを採用した「KTS 340」をはじめ、大型診断装置の「FSA 750」が展示されていた。KTS 340では比較的コンパクトな筐体にもかかわらず、マニュアルを電子化して搭載。メニューからテスト項目をたどっていき、画面下部のマニュアルボタンを押すことでマニュアルを参照できると言う。

 一番小型のKTS 200を個人ユーザーが買うことは可能なのか?と聞いたところ「約50万円で本体は買えますが、新車種に対応したアップデートを定期的に行う必要があり年間5万円ほどかかります。アップデートを行わないオプションもあり、それを使った場合でシステム価格は60万以上となるので、買えないこともないですが……」とのこと。

 輸入車などでは、ランフラットタイヤの空気圧やオイルレベルの管理を車両で行っており、交換時に設定のリセット作業が発生する関係で今はよく売れているとのこと。ディーラーなら当然専用ツールを持っているものの、車検やタイヤ交換などを行う用品店や町の自動車屋さんではこれらのツールが必要になると言う。ボッシュは純正の電装品として国内外の多くの自動車メーカーに採用されており、互換性の問題もないとのこと。そのほか一番のお勧めは、タイヤレバーを使わなくてもタイヤ交換が可能な最新タイヤチェンジャーだと言う。ランフラットタイヤの交換にも対応するタイヤチェンジャーで、タイヤアームをボタンで操作でき、力のない人でも容易に扱えるようになっている。

ボッシュのテスティング装置で一番コンパクトなタイプとなるのがこのKTS 200。一番廉価でもあるのだが、個人が買おうと思った場合のシステム価格は60万円台今年の夏に発売になると言うKTS 340は参考展示。タッチタイプのパネルを装備し、整備中でも使いやすいものになっているシステム診断ページの下部には「マニュアル」と表示されたボタンが。このボタンをクリックすると、現在問題になっている個所のマニュアルが表示される
テスティング装置でも、大型のタイプとなるのがFSA 750FSA 750には各種センサー類が取り付けられ、車の状態を詳細に診断することで問題を解決しやすいようになっているFSA 750には、排気ガスの成分を計測するプローブもあり、燃料噴射装置やキャタライザー(触媒装置)の動作結果を把握できる
最新式のタイヤチェンジャー「TCE 4530」。これはランフラットタイヤの取り外しデモ。右手下にあるコントロールボックスで、ホイールへと伸びるアームのコントロールを行っている。タイヤレバーをまったく使わずに作業可能こちらはホイールバランサー「WBE 4425」。ホイールにアームをあてるだけでタイヤサイズを自動計測できるWBE 4425のモニター画面。ホイールサイズを自動計測したところ
TEXA JAPANのブースにあったフィアット500。TEXAはイタリアのコンピューター診断メーカーで、イタリア車で診断機をデモンストレーションこちらは診断機の画面。デモ画面のため500と異なるフィアット車が表示されている

IT展示会のような出展も
 コンピューター関連の展示会でよく見られるようなステージ形式のプレゼンテーションを行っていたのが、ブロードリーフ。ブロードリーフは自動車業界向けのソフトウェア会社で、自動車整備ネットワークシステムの「SF.NS」や、自動車板金見積もりネットワークシステムの「BK.NS」などのデモンストレーションを行っていた。

 ここで言うネットワークシステムとは、自動車の車両情報や部品情報をブロードリースのサーバーに置き、ソフトウェア購入者はそれをネットワーク経由で参照しながら、整備の見積もりを行ったり、板金の見積もりを行ったりできる。日々新車が発売され、部品などが新しいものになる場合にも、データのアップデートを行わなくてすむようにするためだ。ソフトウェアはマイクロソフトの.net Frameworkをベースにして作られており、Windowsパソコンで動作する。パソコンとソフトウェアをセットにした販売も行っていて、いわゆるSI(システムインテグレーター)的なサービスを提供するので、それほどパソコンに詳しくなくても導入できる。

 車両電子情報有効活用協会は、ブース内に「プリウス」を置きパソコンとの連携をデモ。車両電子情報有効活用協会は、KDDIやセイコーインスツル、アクセンチュアなどが加盟する団体で、コンピューター化する自動車の電子情報を有効活用をする研究を行っている。デモでは、パソコンとプリウスをBluetoothで接続し、パソコン側からドアのロックやアンロックをコントロールしていた。そのほかKDDIの通信モジュールなども展示され、ITSなどに対する取り組みも行っている。

コンピューター関連の展示会のようなスタイルでプレゼンテーションを行っていたのがブロードリーフ。自動車関連業者にも分かりやすく工夫したプレゼンテーションを行っていたブロードリーフの自動車板金見積もりネットワークシステムBK.NSの画面。板金の必要な場所をマウスでクリックし工数を入れると見積もりが自動的に作成される。車の画像やデータなどはネットワーク経由でブロードリーフのサーバーに取りに行き、いつでも最新の情報による見積もり作成が可能車両電子情報有効活用協会のブース。通信モジュールやプリウスとの通信デモを行っていた
プリウスをコントロールするパソコンの画面。画面上のボタンをマウスでクリックするとプリウスのハザードランプがついたりする。あとはどういう応用形態を作って行くかだろうリンクアースが展示していたタイヤ空気圧のモニタリングシステム。一般車用からトラック用まで全6製品をラインアップ同時に参考出品されていた接続ケーブル。このケーブルを使うことでカーナビの画面に空気圧を表示できると言う。残念ながら写真に写っているのはダミー画面
トータルサービスはホイールのリペア、ボディーリペアなどを行う会社。主なお客さんは自動車ディーラーとのこと。現在フランチャイズ加盟店を募集中ジョンソンコントロールズの「OPTIMA BATTERIES」。大手カー用品店などでは見かける製品だ。一時期鉛の価格が上がったことによりバッテリーの値段も上がったが、最近ではやや下がる傾向にあり、売上げ数も伸びているそうだ。主に米国車向けだが、国産車でも使用可能同じくジョンソンコントロールズの「VARTA」。こちらは欧州車でのシェアが高いと言う。上段に飾られている「VARTA ULTRA」では、吸液性ガラスマットを内部のセパレーターに使うことで、効率的な電力供給を可能にしていると言う

 国際オートアフターマーケットEXPO2009は、プロ向けの展示会のため最新車両やコンセプトカーなどほ飾られていないものの、自動車業界を支えるメンテナンス業界向けの製品やサービスが展示されていた。14日の土曜日まで開催されているので、プロ向けツールというのがどんなものか知りたい場合は、立ち寄ってみるのもよいだろう。

(編集部:編集部:谷川 潔)
2009年 3月 12日