高速道路休日上限1000円施策の疑問点をNEXCO中日本に聞く
「3月28日は繁忙期以上の体制でお客様に対応します」



 3月28日からいよいよ始まる高速道路料金のETC限定割引。地方部については土日祝日上限1000円という休日特別割引(普通車・軽自動車など)が、平日は全線・全車種・全時間帯3割引き以上と、大幅な高速道路料金の割り引きになる。ただ、その施策については、さまざまな条件が定められている部分もあり、分かりにくい部分も多い。

 そこで、基本的なことから、やや細かいところまで、NEXCO中日本(中日本高速道路)企画本部 渉外・広報部 広報室の今井智満氏と藤原由康氏に疑問点を聞いてみた。

今回お話をうかがった中日本高速道路株式会社企画本部 渉外・広報部 広報室の今井智満室長代理(写真左)と藤原由康氏(写真右)

――土日祝日上限1000円という休日特別割引だが、なぜ1000円という金額なのか? 2000円や500円でもよかったと思うし、無料にしてはという話もあったが。
NEXCO中日本:そもそもは政府の「生活対策」としての取り組みがありました。その背景の中「高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)」の中で1000円という金額を設定し、1月16日から10日間にわたって一般の方からのパブリックコメントを募集して、意見もうかがった上で最終的に決めました。

 1000円という金額で案を策定した根拠については、高速道路の利用形態を調査したところ、観光目的のお客様の場合平均で約70kmほどの走行距離となっていました。高速道路料金は現在1kmあたり24.6円、それに料金所の費用となる150円のターミナルチャージを加え、さらに消費税を加えて算出しています。70kmとして計算すると1950円と2000円近くになりますが、その5割引きということで1000円という数字を算出しました。

 1000円についても必ず1000円かかるわけではなく、基本的に料金が5割引きとなり、割り引き後の料金が1000円以上となる場合は1000円になります。

――東京や大阪の大都市近郊区間は別扱いとなっているが、これはなぜか? また、大都市近郊区間は料金算定基準が違うと聞いたこともあるが?
NEXCO中日本:生活対策というのがベースとしてあり、地域の活性化という目的があります。大都市近郊区間は休日でもわりと渋滞が発生していることもあって、必要以上に渋滞を助長しないようにしています。また、対距離制の高速道路料金の算定基準としては1kmあたり24.6円を設定していますが、大都市近郊区間については29.52円が算定基準となっています。これは、もともと大都市近郊区間では用地買収に費用がかかること、片側2車線ではなく、それ以上の車線となっている個所が多いことなどがあります。そのほか道路状況の表示施設などもとくに充実させており、そのため29.52円と高めの料金設定になっています。この29.52円ですが、24.6円と比べて2割増しの料金に設定しています。

 大都市近郊区間は割引きがまったくないのかというと、そうではなく6時から22時までは3割引き、そのほかの時間帯、22時から翌6時までの深夜帯であれば5割引きにしています。この背景として、高速道路の有効活用という側面があり、渋滞を減らすための交通量の分散を図るためのものです。

――2年間が過ぎたら元の料金になるのか? もしくは値上げ?
NEXCO中日本:今回の割り引きは現行の計画だと2年間。2011年の3月までになります。それ以降に関しては、確かに今回のような割引はなくなりますが、今まで行っていた、深夜割引や早朝夜間割引、通勤割引は引き続きあります。まったく割引がなくなるわけではありません。今回の割引は生活対策という側面があり、景気対策という部分が多いのです。

――渋滞が懸念されているが対策はあるのか?
NEXCO中日本:土日祝日上限1000円という割引は、これまでに例のない割引で予測が難しい面もあります。ただ、これまで5割引き、3割引きという割引を行ってきており、その経験をもとに5割引きでは5%~15%ほど増えるのではないかと見ています。これは年間平均という数字ではなく、今週末の実施に伴っての予測です。地方部はこれまで5割引きの通勤割引があり、その時間帯を目指しての渋滞が発生していました。これについては逆に今回の割引施策によって緩和されるのではないかと見ています。

 NEXCO中日本では、「高速日和」というWebサイトで「渋滞予測カレンダー」を公開しています。ここには、6カ月先までの最新の渋滞予測を掲載しており、ドライブなどの参考にしていただければと思います。更新は毎月行っています。

 そのほかの対策としては、混雑が予測されるSA(サービスエリア)には、駐車場の誘導員などを配置します。体制としては、2008年のゴールデンウィーク(GW)以上の人員を配備します。これは、誘導員を配置することでお客様が駐車に迷わないようにし、高速道路本線上まで駐車待ちの車列が伸びないようするためのものです。

NEXCO中日本の運営する「高速日和」。このサイトから料金検索や渋滞予測カレンダーを見ることができる渋滞予測カレンダーでは6カ月先までの渋滞予測を確認できる。全国の高速道路にも対応しており、すでに土日祝日上限1000円の割引情報も加味されている

――割引はETC利用者のみとなっているが、ETCがない人はまったく優遇がないのか?
NEXCO中日本:残念ながらありません。高速道路の有効利用という側面を考えると、車種であるとか、時間帯であるとか、場所であるとかを指定して割引施策を行ってきました。これを機械的に行う必要があり、料金所の収受員がそれらを判断しながら割り引くというのは、作業量も増えますし、細かく条件を判断するのにはやはり時間もかかります。時間がかかるということは料金所渋滞にもつながってくるので、機械的なシステム=ETCシステムが必要になってくるのです。

――従来よりも長距離を走る人が増え、事故の可能性も増大するが対応は?
NEXCO中日本:確かにそういう可能性がないとは言えません。そのためGWなど繁忙期以上の体制を予定しており、たとえば渋滞の末尾などに“渋滞中”などの表示をした標識車を配置します。これにより渋滞末尾に追突するというような事故を防いでいくつもりです。

 この渋滞を防ぐことが事故の減少につながると考えており、NEXCO中日本のWebサイトで「渋滞の原因と対策」というコンテンツを公開しています。たとえば緩い上り坂での速度低下により車列がつながって自然渋滞が起きる“サグ”という現象がありますが、このメカニズムを知ってもらい、ドライバーに気をつけていただくことで渋滞は減少します。先ほどの標識車ですが、このサグによる渋滞が起きがちな場所にも配備し“この先上り坂 速度低下注意”などのメッセージを出すことで少しでも渋滞の発生を防げればと思っています。

 また、交通巡回も頻繁に行い、落下物の発見や故障車への対応も強化しています。

渋滞の原因と対策コンテンツ内にあるサグの説明。渋滞のメカニズムをドライバーに知ってもらうことが、渋滞の軽減につながる

――3月28日の開始時は、高速道路を乗り継ぐと上限1000円が複数回徴収されるが、4月29日から一旦高速道路を降りて再び乗っても上限1000円となる乗継特例が始まる。この乗継特例には乗継特例が使える区間の設定があらかじめ決まっている。この特例区間はどうして決まったのか?
NEXCO中日本:乗継特例と特例区間の設定に関しては、主に大都市近郊区間をまたぐことによって高速道路ネットワークがつながっている所に設定しています。例えば、仙台から静岡に行くような場合、東北道仙台IC(インターチェンジ)→浦和本線料金所→首都高→東名東京本線料金所→静岡ICとなるのですが、3月28日の開始時は東北道の地方部となる仙台宮城IC→加須ICで1000円、東名の地方部となる厚木IC→静岡ICで1000円の、計2000円がかかります(そのほかに、加須IC→浦和料金所、首都高、東京料金所→厚木ICの料金がかかるが時間帯によって割引額が異なる)。これは利用者にとって、不便となりますので浦和料金所と東京料金所を6時間以内に通過していただければ1000円とするというものです。

 料金徴収の基本的な考え方として、1回乗って降りて上限1000円というものがあり、例えば中央高速で八王子ICから東富士五湖道路の須走ICまで行く場合、八王子IC→富士吉田本線料金所で950円、富士吉田本線料金所→須走料金所→須走ICで520円の合計1470円となりますが、4月29日以降は八王子IC→富士吉田本線料金所→須走料金所→須走ICを上限1000円にします。ただし、富士吉田本線料金所→須走料金所間は2時間という指定があり、この指定時間内に双方の料金所を通過していただくという条件が付きます。

 乗継特例は、ほとんどの場合、料金所と料金所との間で指定時間とともに設定されています。やや分かりにくいのですが、それが基本的な考え方となります。

――土日祝日上限1000円の適用は、どのようなときに適用されるのか?
NEXCO中日本:土日祝日をまたいでもらえれば適用されます。土日祝日にICを通過し高速道路を走る場合や、高速道路から出る場合はもちろんですが、金曜日に高速道路に乗り翌週の月曜日に出てもかまいません。また、金曜日に乗って翌々週の月曜日に降りてもらってもかまいません。そのようなお客様は、まずいらっしゃらないと思っていますが。

 ただ、本四高速については、金曜日に乗って月曜日に降りるというのはできなくなっています。距離も短いので土日祝日内に乗るか降りるかする必要があります。

 また、先ほどの乗継特例ですが、この特例を使うためには乗継料金所の両方で土日祝日内である必要があります。たとえば、浦和本線料金所を日曜日の23時に出て、東京料金所を6時間以内の月曜日1時に乗っても適用されません。そのほか乗り継ぎ時には、乗り継ぎ前の出口IC通過日から2日以内(翌々日以内)に乗り継ぎ後の出口ICを出ていただく必要があります。

――乗り継ぎ時の金額表示は4月29日以降変わるのか?
NEXCO中日本:ETC車載器の表示、ETC利用証明書の記載とも、乗り継いだ際には1000円、1000円として別々に表示されます。ただし、精算時には正しく1000円のみの引き落としとなります。

――ETC利用証明書は領収書代わりに使っている会社もあるが問題ないか
NEXCO中日本:ETC利用証明書は利用の証明書として発行しています。領収書として発行しているわけではないため、現状対応は予定していません。

――ETCのマイレージポイントはどういう単位でたまるのか?
NEXCO中日本:支払った金額に応じてとなります。

――1000円で走れる最長距離のルートは?
NEXCO中日本:大都市近郊区間を除いた区間となりますので、青森東→[青森道]→青森JCT(ジャンクション)→[東北道]→郡山JCT→[磐越道]→新潟中央JCT→[北陸道]→上越JCT→[上信越道]→更埴JCT→[長野道]→岡谷JCT→[中央道]→土岐JCT→[東海環状道]→豊田東JCT→[伊勢湾岸道]→四日市JCT→[東名阪道]→伊勢関→[伊勢道]→勢和多気JCT→[紀勢道]→紀勢大内山です。総走行距離が1238.9kmで、通常2万4150円の料金が1000円になります。

 NEXCO中日本によると、高速道路料金についての質問が現在数多く寄せられているそうだ。これについては、高速日和内にある「ドライブコンパス」が、すでに新料金体系に対応してるので、活用してほしいとのこと。4月29日から始まる乗継特例に対しては今後の対応となる。

3月24日時点で新料金割引に対応しているのがドライブコンパス。高速日和内に用意されている

 

(編集部:編集部:谷川 潔)
2009年 3月 26日