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“Be a driver”がコンセプトの手動運転装置付きマツダ「ロードスター」

「第43回 国際福祉機器展 H.C.R.2016」

2016年10月12日~14日 開催

マツダが「第43回 国際福祉機器展 H.C.R.2016」に出展した「ロードスター」手動運転装置付車
アカザーっす(イラスト:水口幸広)

 どうもアカザーっす! 2000年にスノーボードで脊髄をやっちまって以来、車いす歴16年なオレですが、怪我をする前はスポーツカー大好きマンだったんですヨ。怪我をするまでの愛車は、「カローラ レビン(AE86)」にはじまり、「240SX(北米版180SX)」「サバンナ RX-7(FC3S)」など、すべてMTスポーツカー。峠やサーキットでスポーツ走行やドリフトを楽しんでいました。

 しかし、車いすになってからは手動運転装置を使って、左手でアクセルとブレーキ、右手でステアリング操作をして運転しなければならず、結果AT車一択のカーライフ。まぁ、最近のATは人間よりも上手くヒール・アンド・トゥをしたりするので全く問題はないんすけどね。

 でもでも、たとえヘボいヒール・アンド・トゥでも、雨天のツインリンクもてぎの5コーナーでヒール・アンド・トゥをミスって、RX-7をスピンさせてしまうようなオレのヘボいヒール・アンド・トゥだとしても、たまには自分の足でヒール・アンド・トゥをして、スポーツドライビング(的な自己満足)の世界にどっぷり浸りたいんすよ! Car Watchを読んでいるクルマ好きのアンタになら、この気持ちが分かってもらえるハズ!

 とまぁ、そんな思いを胸に秘め、この16年間ずーっとスポーツドライビングは諦めていたワケです。が、ここにきてオレのスポーツドライビング魂を呼び覚ましそうな、4代目「ロードスター」に手動運転装置を装着したメーカーコンプリートカーをマツダが発売するという情報をキャッチ! しかも、東京ビッグサイトで開催される「第43回 国際福祉機器展 H.C.R.2016」で触ることができるだとー!

国際福祉機器展 H.C.R.2016のマツダブース

マツダがつくるクルマは手動運転装置付きでも“人馬一体”!

 というワケで、国際福祉機器展 H.C.R.2016の開催初日にマツダブースへ突撃! あったぜー!4代目ロードスターちゃん。やっぱカッコいいぜ~。日本カーオブザイヤーとワールド・カー・オブ・ザ・イヤーのダブルタイトルを受賞するだけあるわ~。

 入社時に買った初代ロードスターを26年間ずっと乗り続けているという、ロードスターひとすじの中山雅氏がチーフデザイナーを務めただけあって、随所に“ロードスター愛”を感じるぜ! すでに4代目ロードスターを2台ほど(タミヤのラジコンとプラモだがw)所有しているオレには分かる! 分かるぜ、中山ちゃんよぉ!

 なんて妄想全開でいざ乗車! ドアを開けると、運転席の右横には20×25cmほどの黒い板が。実はコレ、サイドシルの上に倒して使う乗降用補助シート。車いすからシートまで身体を運ぶとき、腕力がない障がい者でもいったんこの補助シートに腰掛けることで、楽にシートに乗り移れるという寸法。ちなみにこの補助シートは、真上に引っこ抜くことで簡単に取り外すことも可能。

サイドシルの上に倒して使う乗降用補助シート

 憧れの4代目ロードスターのシートに収まった感想は、思っていた以上にタイト! シートは写真の位置が最後尾で、リクライニングもほぼナシ。まぁ、2シーターのスポーツカーなので当然といえば当然なのですが……。

 日ごろは愛車のレガシィを運転するときに、シートをべったりと倒して車いすを身体の上を通過させ、助手席後方の後部座席に移動させるので、ちょっと違和感。ていうかコレ、車いすはどこにどうやって積んだらいいの?との疑問を説明員さんに投げかけると、「車いすは身体の上から運んで、助手席に置く感じです」とのこと。

憧れの4代目ロードスターの運転席は、思っていた以上にタイト!

 助手席に目をやると、レザー調の車いすカバー(オプション)に収納された車いすが。なるほど、こうやって車いすを収納するんすね! 載せられていた車いすは片側のタイヤが外されたコンパクトな状態だったんですが、自走式の折り畳み式車いすならタイヤを外さなくても載るとのこと。

オプション品となるレザー調の車いすカバー

 ていうか、車いすをくるんでいるこのレザー調のシートカバーがめっちゃイカス! しかも、なにげにスグレモノという気がする。片側をヘッドレストに引っかけて、そのまま助手席の足下までカバーを伸ばし、U字に折り返して車いすをくるむという単純な仕組みなんですが、コレはかなりいいかも! 企画した人は車いすを車内に入れてると、運転中に倒れたりして内装が傷付くってコトを知ってるわ~! こういう細かいトコに気が利いていると、本題の手動運転装置にも期待が高まりますな!

 ちなみに2人で出掛けるときなどは、同乗者に車いすをトランクに収納してもらうとのこと。しかし、ロードスターのトランクはそれほど広くないので、購入をお考えの方はご使用の車いすを持っていき、現物合わせで収納可能かを確認することをオススメします。説明員さん曰く「22インチタイヤの折り畳み式車いすはそのまま入りましたが、24インチタイヤのものは、タイヤを外したりなどの工夫が必要でした」とのこと。

4代目ロードスターのトランク容量は130L(DIN方式)

 そして、このクルマの目玉となる手動運転装置周りをチェック! ほうほう、このレバー形状はミクニライフ&オート(旧社名:ニッシン自動車工業)の手動運転装置「APドライブ」シリーズすね! 隠してもオレには分かりますよ~。なんせこの15年間、ずっとミクニライフ&オートの手動運転装置を使ってますからね~。ていうか、ミクニライフ&オートとタッグを組んで開発するとは、さすがマツダ、お目が高い!

 ちなみにオレはこの15年間、ミクニライフ&オート製の手動運転装置を使って遊びに取材にと20万kmほど運転しましたが、故障は1回もナシ! しかも車種ごとにその特性に合わせて開発したアダプターを使って取り付けるので、フィット感も最高なんすよ! このロードスターはスポーツカーなので、着座位置を低くレイアウトした関係上、トランスミッションが運転席まで張り出したレイアウト。しかし、このフロアに張り出したふくらみに合わせる形で、手動運転装置のベースフレームを配置。左足の邪魔にならないよう、手動運転装置をギリギリまで左に寄せているんですね! 凄いぜミクニライフ&オート! 気が利いてるぜマツダ!

トランスミッションが張り出したロードスターの足下スペースに、手動運転装置のベースフレームを配置

 この手動運転装置の操作方法は、レバーを引いてアクセル、押してブレーキ。ウインカーやホーン、ハザードなどのスイッチもレバーに設定されています。と、実はここまでなら個人的にロードスターを買って、ミクニライフ&オートに持ち込めば似たような仕様のクルマを作ることが可能なんですよね。でも、そこは“人馬一体”を標榜するマツダがつくる手動運転装置車。これだけでは終わらんよ!というワケで、この手動運転装置付きロードスターの最大の魅力は、ステアリングスポークの右側に追加されたこの「DOWN」と書かれた丸いボタンなんすヨ。

 コレがなにかと言うと、ATをシフトダウンさせるボタン。ロードスターは、ステアリングの裏側左右に付いているパドルシフトでもギヤのアップダウンが可能で、右側でシフトアップ、左側でシフトダウンとなっているのですが、足が不自由なオレの場合は、左手ではアクセルとブレーキを操作する手動運転装置を握っているわけで、パドルを使ってシフトダウンしたければ、この手動運転装置から手を放すしかない……って、危険だろ!

 でも、このシフトダウンのボタンがあれば、左手で手動運転装置を押し込んでブレーキングをしつつ、右手の親指でシフトダウンが可能なんすよぉぉぉ! マジかよー! 超使ってみたいんすけど~!

シフトアップとダウンを右手だけで操作できるように、ステアリングに純正装着されたパドルシフトを使ってシフトアップ、追加された「DOWN」と書かれたボタンを押してシフトダウンする

 実は、オレの愛車の「レガシィ」にもパドルシフトが付いており、手動運転装置にシフトアップ&ダウンボタンが内蔵されたミクニライフ&オート「APドライブ オーエックスバージョン」(現在は廃盤)を取り付けているのですが、ステアリングに付いているコッチのほうが絶対に気持ちいいハズ! ていうか、オレも自分のクルマなのに、とっさのときに何回か間違えたコトあるしな! やはりシフト関係はステアリング周りに配置されるべきなんだよ!

こちらは愛車の「レガシィ」。手動運転装置にシフトアップ&ダウンボタンが内蔵された、ミクニライフ&オート「APドライブ オーエックスバージョン」(現在は廃盤)を装着している

 そんな手動運転装置付きのロードスター。価格は未定で発売は年内を予定しているとのことですが、待ちきれないすよ~。はやく試乗したいよ~! コーナー進入でブレーキングしつつ、シフトダウンボタンを押させてくださいよ~。でもって値段はプラス2~30万円あたりでまとめてくださいよ~。お願いしますよ~。

普段の足として使うなら車いすの積み下ろしが簡単なアクセラかも!?

 ロードスターの次は、隣にあった手動運転装置付きアクセラもチェック! こちらも手動運転装置の架装はミクニライフ&オートのものを使用。ロードスターとほぼ同様の装備だが、このアクセラにはパドルシフトが付いていないこともあり、シフトダウンボタンはなし。代わりに、運転席側からでも助手席を倒せるレバー(オプション設定)が付いている。

「アクセラ」手動運転装置付車。このクルマにも乗降用補助シートが装備されている

 当然ながらアクセラのほうがロードスターよりも車内が広いので、車いすは助手席の後ろに積むことになるんすけど、その際にこのリクライニングレバーがあると積み下ろしがめっちゃ捗るんですよね~。

オプション設定の助手席を倒すレバー

障がい者にも“Be a driver”の楽しさを届けてくれるマツダ

 いや~しかし、このリクライニングレバーにしても、ロードスターのシフトダウンボタンや車いす用カバーにしても、マツダは本当に手動運転装置を使ってクルマを運転している障がい者のニーズをよく理解したクルマづくりをしていると思います。

 車いすになって以来、国際福祉機器展ではバリアフリーを謳っているクルマをチェックしているのですが、そのほとんどが介助者目線でつくられたバリアフリーカー。もちろん、そういうニーズは多いのでしょうし、メーカーとしては正解なのでしょうが、オレみたいに自分でクルマを運転している、クルマ好きな車いすユーザーに向けた製品をマツダがつくってくれたコトが、本当に嬉しいです。

 以前、自分の記事で紹介した、携帯型手動運転装置「ニコ・ドライブ」(10万8000円)も一部のマツダディーラーで試乗ができたり、最近のマツダは本音で障がい者を分け隔てなく扱ってくれている気がします! すべてのドライバーに心ときめくドライビング体験を提供するとのキャッチコピー“be a driver”は伊達じゃないすね! この調子でひとつ、RX-7の復活もお願いしま~す!