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アップリカ、医学的観点から安全性&快適性を追求した新チャイルドシート「フラディア グロウ ISOFIX」発表会
産総研開発の「DhaibaWorks」による3Dシミュレーションで、赤ちゃんの姿勢を分析
2016年11月30日 23:03
- 2016年11月30日 発表
- 6万9120円~7万4520円
アップリカ・チルドレンズプロダクツは11月30日、乳幼児向けチャイルドシートの新製品「フラディア グロウ ISOFIX」シリーズを発表した。12月2日より販売を開始し、価格は通常モデルの「フラディア グロウ ISOFIX スタンダード」が6万9120円、メッシュタイプのシェードと取り外し可能なパッドが付く「フラディア グロウ ISOFIX デラックス」が7万4520円。すでに販売中の3点式シートベルトで固定する「フラディア グロウ」との併売となる。
取り付けミスを減らし、本来の性能を発揮できる「安全で快適」な製品
フラディア グロウ ISOFIXは、体重2.5kg(新生児)から18kg(4歳児相当)まで対応するISOFIX準拠のチャイルドシート。シート全体を回転させ、前向き、後ろ向き、横向きのどの方向にも固定でき、背もたれを10度ほどの角度まで倒して“平らなベッド”にして使えるのが特徴となっている。
シートの回転機能とリクライニング角度の調整機能を組み合わせることで、新生児は「ベッド型」で、首がすわり始めたころから1歳半くらいまではイス型の「後ろ向きシート」または「ベッド型」で、さらに体が大きくなった4歳ころまでは「前向きシート」でというように、3パターンの使い分けが可能なのもポイント。
同社は以前からフラットに近いベッド型の製品を提供してきたが、本製品ではクッションの素材や通気性にも最大限に配慮しつつ、イス型使用時の背もたれ角度を可能な限り小さくし、子供の体格に合った快適さを追求しながら安全性を向上させた。ショルダーベルトの付け替えなしにヘッドレストの高さ調整が可能な「フィットアジャスター」や、子供の体格に合わせて座面の奥行きを約4cm増減できる「デプスアジャスター」も備える。
発表会で登壇した同社マーケティング本部の東猴氏は、チャイルドシートユーザーのうち56.2%が取り付けミスの状態のまま使っているという調査結果を示した。また、同R&D本部の河野氏も「子供の体格によっては背もたれに腰をつけて座った時に、ふくらはぎが座面の先端に来てしまう」ことから、座面の奥行きが適切でなく安全に座っていることにならない状態で使っている場合もあると指摘した。
これらの課題に対して、フラディア グロウ ISOFIXでは規格化されたISOFIXに対応して取り付けミスを減らすとともに、各種アジャスターを装備してメーカーが本来想定している性能を発揮できるようにし、本当の意味での「安全で快適」な製品を目指して開発したという。
赤ちゃんにとって最適とされる、正しい仰向け姿勢をサポート
同社が子供にとっての安全と快適さを実現するうえで“平らなベッド”にこだわったのは、仰臥位(仰向け)であることが赤ちゃんの体に最も負担が少なく、発達にもよい影響があるとされているためだ。
同志社大学 あかちゃん学研究センターの小西氏によると、仰臥位で眠るのは人間だけであり、仰向けの状態で手足の動きに一定の規則性があるのも人間のみだという。「仰向けになっていることで手が自由に使える。これが二足歩行の元になったのではないか」と同氏は推測しており、「この生まれつきの姿勢が、後々の発達において極めて重要になる」と強調。「突然死の問題があって、うつぶせはダメという話があるが、うつぶせが危険だからやめるというのではなく、積極的に上を向けることが子供たちの発達の元になる」と分析している。
医学的にも赤ちゃんは体温調整が苦手であること、気道が柔らかく塞がれやすいこと、筋肉・骨格が弱いことといった点から、座り姿勢よりも仰向けで寝ている状態が適切であるとしている。さらに、長時間座らせた状態では脳への血流が減少するほか、米国の小児科学会では、30度や40度の角度で座らせた場合に血液中の酸素濃度が減って心拍数が高まることも報告され、「水平に寝かせたほうがよい」ことが明らかになっていると同氏は話す。こうした研究結果も参考に、フラディア グロウでは“平らなベッド”をコンセプトの1つとしている。
産総研開発の「DhaibaWorks」で体とシートの接触状況をシミュレーション
さらに、産業技術総合研究所(産総研)が開発を進めるシミュレーションソフト「DhaibaWorks」についても紹介。チャイルドシートの実物やカットモデルを用いた試験では確認困難な、子供の体と座面の接触箇所を詳細に観察できるようにし、製品の開発・評価に活かす共同研究を進めていることも明らかにした。
DhaibaWorksは、簡単な操作で3D CGのヒューマンモデルとその姿勢を生成し、製品モデルとの接触状況などを再現できるようにするツール。アップリカとの共同研究では、これを赤ちゃんとチャイルドシートのシミュレーションに特化させ、体の表皮の形状、関節の接続構造、体の各部位の重心や重量といった詳細なデータを網羅した14体の赤ちゃんモデルを作成。日本人の一般的な乳児の寸法データベースに基づいて月齢ごとの体型を忠実に再現したことで、成長に応じた微妙な姿勢変化に対応しながら、チャイルドシート使用時の姿勢を可視化することに成功した。
現在は0~13カ月までの乳児のモデルデータのみだが、産総研でDhaibaWorksの開発を担当する遠藤氏によると、すでに14カ月以上の体型データの作成にも取りかかっており、より幅広い検証が行なえるツールを目指して開発を続けているとのこと。赤ちゃんモデルの皮膚や製品モデルの素材の柔らかさも再現するべく“ソフトオブジェクト”への対応についても検討を進めていると語った。