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NVIDIA、自動車のデザインとシミュレーションを同時実行できるという「Quadro GP100」発表

自動車設計の生産性を向上。AI(人工知能)/ディープラーニング向けのGP100ベース

NVIDIAが発表したQuadro GP100。写真でわ分かるように、2枚のカードをNVLinkで接続し、マルチGPUとして利用することが可能(出典:NVIDIA)

 半導体メーカーのNVIDIAは2月5日(現地時間)、同社のプロフェッショナル向けGPU「Quadro(クアドロ)」の最新製品となる「Quadro GP100」「Quadro P4000」「Quadro P2000」など6製品を発表した。

 最上位製品となるQuadro GP100は、従来はAI(人工知能)/ディープラーニング向けのTesla P100だけに利用されていたGP100(ジーピーワンハンドレッド、開発コードネーム)ベースのQuadroとなり、2016年発表されたQuadro P6000/P5000よりも上位に位置づけられるQuadroの最上位SKUとなる。Tesla P100が独自モジュールで提供されているのに対して、Quadro GP100はPCI Expressの拡張カードの形で提供される。

 NVIDIAによれば、Quadro GP100は高い処理能力を持っているため、従来はデザインとシミュレーションがそれぞれ別のPCを用意して行なうなどの運用が一般的だったが、それらを同時並行で進めることも可能になるという。

サーバー向けTesla P100のみ利用されていたGP100を採用したQuadro GP100

 今回NVIDIAが発表したQuadroの最上位製品となるQuadro GP100は、昨年NVIDIAがTesla P100として発表したGP100のダイを利用した製品となる。GP100はNVIDIAがPascal(パスカル)と呼ぶ最新世代のGPUアーキテクチャを採用し、HBM2と呼ばれる広帯域のメモリ帯域をサポートするメモリを搭載しているほか、GPUとGPUをNVLinkと呼ばれる専用バスで接続することができる。浮動小数点演算時の性能は、倍精度(FP64)で5TFLOPS、単精度(FP32)では10TFLOPS、半精度(FP16)では20TFLOPSの性能を実現している。

2016年4月に米国サンノゼで開催された「GTC 2016」で発表されたGP100。従来はサーバー向けのTesla P100のみで採用されていた
PascalアーキテクチャのGP100の特徴(出典:NVIDIA)

 Quadro GP100はこのGP100を搭載しており、PCI Expressカードの中にに封入している。CUDAコアは単精度時で3584個、16GBのHBM2メモリを搭載している。また、ディスプレイ出力として4つのDisplayPort 1.4+DVIという構成が可能で、最大で4K(4096×2160ドット)/120Hzの4枚構成ないしは、5K(5210×2880ドット)/60Hzの4枚構成まで可能になっている。また、NVLinkの機能を利用して、マルチGPU構成にして利用することが可能で、最大2枚までのQuadro GP100カードを接続して、演算性能を引き上げることが可能になっている。

サーバー向けのTesla P100には搭載されていなかったディスプレイ出力などがQuadro GP100には用意されている。5Kのディスプレイ出力を4系統可能に(出典:NVIDIA)

 NVIDIAのプロフェッショナルグラフィックスを担当しているアレン・ブルゴーニュ氏は「従来、自動車の設計などはワークステーションに内蔵されているGPUの性能も十分でなかったりすることで、レンダリング用のサーバーを別途使って作業するというのが一般的だった。また、性能が十分ではないこともあって、デザインとシミュレーションをそれぞれ別の工程として作業するのが一般的だった。しかし、Quadro GP100を利用すれば、ワークステーションのGPUだけでデザインのプロセスとシミュレーションを同時にこなしたりすることが可能になる」と述べ、Quadro GP100を利用すればレンダリングサーバー並の性能をワークステーションにもたらすことができるので、自動車設計の生産性向上につながると説明した。

Quadro GP100の特徴、もちろんISV認証も取得されている(出典:NVIDIA)
従来の開発プロセス、サーバーの空き状況などにより同時並行とはいかなかった(出典:NVIDIA)
Quadro GP100を使うとデザインとシミュレーションを同時に行なうことが可能に(出典:NVIDIA)

 NVIDIAのブルゴーニュ氏によれば、CAEソフトウェアの「Abaqus 2017」を利用した場合、CPU8コア+Quadro GP100は、CPUの16コアに比べて約3倍速く、CPUが32コアの場合に比べて約2倍速いという。なのに、ソフトウェアにかかるコスト(ソフトウェアのライセンスはCPUコア数に応じて高くなる)はCPU16コアの場合よりも安く上がるため、トータルでのコストパフォーマンスが向上すると説明している。

CPUのみと、CPU+GPUでCAEを行なった場合の性能とソフトウェアコストの比較(出典:NVIDIA)

メインストリーム向け、エントリー向けも追加

 このほか、NVIDIAは「Quadro P4000」「Quadro P2000」「Quadro P1000」といったメインストリーム向けの製品、さらには「Quadro P600」「Quadro P400」といったエントリー向けの製品も追加している

Quadro P4000、Quadro P2000、Quadro P1000、Quadro P600、Quadro P400のスペック(NVIDIA発表)
製品名Quadro P4000Quadro P2000Quadro P1000Quadro P600Quadro P400
形状PCI Express(1スロット)PCI Express(1スロット)PCI Express(1スロット)LPPCI Express(1スロット)LPPCI Express(1スロット)LP
アーキテクチャPascal
CUDAコア17921024640384256
メモリ8GB GDDR55GB GDDR54GB GDDR52GB GDDR52GB GDDR5
ディスプレイ出力4xDP 1.44xDP 1.44x mDP 1.44x mDP 1.43x mDP 1.4
ディスプレイサポート4x4K/120Hz、4x5K/60Hz4x4K/120Hz、4x5K/60Hz4x4K/60Hz、4x5K/60Hz4x4K/60Hz、4x5K/60Hz3x4K/60Hz
VR対応----

 アーキテクチャはPascalベースになっているが、CUDAコアの数、メモリ容量、ディスプレイ出力などが異なっている。また、Quadro P4000はVR対応となっているが、Quadro P2000以下のSKUはVR未対応とされていることが大きな違いとなる。

NVIDIAのQuadroシリーズの位置づけ(出典:NVIDIA)
Quadro P4000(出典:NVIDIA)
Quadro P2000(出典:NVIDIA)
Quadro P1000(出典:NVIDIA)
Quadro P600(出典:NVIDIA)
Quadro P400(出典:NVIDIA)

 NVIDIAのブルゴーニュ氏によれば各製品の価格は発表時では未定。製品はNVIDIAのチャネルパートナーとなるボードベンダなどを経由して販売される予定で、販売開始は3月を予定しているということだ。

従来のMaxwell世代のQuadroとの性能比較データ(出典:NVIDIA)
価格は未定、3月からボードパートナーなどチャネル事業者を通じて提供される予定(出典:NVIDIA)