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NVIDIA、自動車のデザインとシミュレーションを同時実行できるという「Quadro GP100」発表
自動車設計の生産性を向上。AI(人工知能)/ディープラーニング向けのGP100ベース
2017年2月6日 08:00
半導体メーカーのNVIDIAは2月5日(現地時間)、同社のプロフェッショナル向けGPU「Quadro(クアドロ)」の最新製品となる「Quadro GP100」「Quadro P4000」「Quadro P2000」など6製品を発表した。
最上位製品となるQuadro GP100は、従来はAI(人工知能)/ディープラーニング向けのTesla P100だけに利用されていたGP100(ジーピーワンハンドレッド、開発コードネーム)ベースのQuadroとなり、2016年発表されたQuadro P6000/P5000よりも上位に位置づけられるQuadroの最上位SKUとなる。Tesla P100が独自モジュールで提供されているのに対して、Quadro GP100はPCI Expressの拡張カードの形で提供される。
NVIDIAによれば、Quadro GP100は高い処理能力を持っているため、従来はデザインとシミュレーションがそれぞれ別のPCを用意して行なうなどの運用が一般的だったが、それらを同時並行で進めることも可能になるという。
サーバー向けTesla P100のみ利用されていたGP100を採用したQuadro GP100
今回NVIDIAが発表したQuadroの最上位製品となるQuadro GP100は、昨年NVIDIAがTesla P100として発表したGP100のダイを利用した製品となる。GP100はNVIDIAがPascal(パスカル)と呼ぶ最新世代のGPUアーキテクチャを採用し、HBM2と呼ばれる広帯域のメモリ帯域をサポートするメモリを搭載しているほか、GPUとGPUをNVLinkと呼ばれる専用バスで接続することができる。浮動小数点演算時の性能は、倍精度(FP64)で5TFLOPS、単精度(FP32)では10TFLOPS、半精度(FP16)では20TFLOPSの性能を実現している。
Quadro GP100はこのGP100を搭載しており、PCI Expressカードの中にに封入している。CUDAコアは単精度時で3584個、16GBのHBM2メモリを搭載している。また、ディスプレイ出力として4つのDisplayPort 1.4+DVIという構成が可能で、最大で4K(4096×2160ドット)/120Hzの4枚構成ないしは、5K(5210×2880ドット)/60Hzの4枚構成まで可能になっている。また、NVLinkの機能を利用して、マルチGPU構成にして利用することが可能で、最大2枚までのQuadro GP100カードを接続して、演算性能を引き上げることが可能になっている。
NVIDIAのプロフェッショナルグラフィックスを担当しているアレン・ブルゴーニュ氏は「従来、自動車の設計などはワークステーションに内蔵されているGPUの性能も十分でなかったりすることで、レンダリング用のサーバーを別途使って作業するというのが一般的だった。また、性能が十分ではないこともあって、デザインとシミュレーションをそれぞれ別の工程として作業するのが一般的だった。しかし、Quadro GP100を利用すれば、ワークステーションのGPUだけでデザインのプロセスとシミュレーションを同時にこなしたりすることが可能になる」と述べ、Quadro GP100を利用すればレンダリングサーバー並の性能をワークステーションにもたらすことができるので、自動車設計の生産性向上につながると説明した。
NVIDIAのブルゴーニュ氏によれば、CAEソフトウェアの「Abaqus 2017」を利用した場合、CPU8コア+Quadro GP100は、CPUの16コアに比べて約3倍速く、CPUが32コアの場合に比べて約2倍速いという。なのに、ソフトウェアにかかるコスト(ソフトウェアのライセンスはCPUコア数に応じて高くなる)はCPU16コアの場合よりも安く上がるため、トータルでのコストパフォーマンスが向上すると説明している。
メインストリーム向け、エントリー向けも追加
このほか、NVIDIAは「Quadro P4000」「Quadro P2000」「Quadro P1000」といったメインストリーム向けの製品、さらには「Quadro P600」「Quadro P400」といったエントリー向けの製品も追加している
Quadro P4000、Quadro P2000、Quadro P1000、Quadro P600、Quadro P400のスペック(NVIDIA発表)
製品名 | Quadro P4000 | Quadro P2000 | Quadro P1000 | Quadro P600 | Quadro P400 |
---|---|---|---|---|---|
形状 | PCI Express(1スロット) | PCI Express(1スロット) | PCI Express(1スロット)LP | PCI Express(1スロット)LP | PCI Express(1スロット)LP |
アーキテクチャ | Pascal | ||||
CUDAコア | 1792 | 1024 | 640 | 384 | 256 |
メモリ | 8GB GDDR5 | 5GB GDDR5 | 4GB GDDR5 | 2GB GDDR5 | 2GB GDDR5 |
ディスプレイ出力 | 4xDP 1.4 | 4xDP 1.4 | 4x mDP 1.4 | 4x mDP 1.4 | 3x mDP 1.4 |
ディスプレイサポート | 4x4K/120Hz、4x5K/60Hz | 4x4K/120Hz、4x5K/60Hz | 4x4K/60Hz、4x5K/60Hz | 4x4K/60Hz、4x5K/60Hz | 3x4K/60Hz |
VR対応 | ○ | - | - | - | - |
アーキテクチャはPascalベースになっているが、CUDAコアの数、メモリ容量、ディスプレイ出力などが異なっている。また、Quadro P4000はVR対応となっているが、Quadro P2000以下のSKUはVR未対応とされていることが大きな違いとなる。
NVIDIAのブルゴーニュ氏によれば各製品の価格は発表時では未定。製品はNVIDIAのチャネルパートナーとなるボードベンダなどを経由して販売される予定で、販売開始は3月を予定しているということだ。