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東工大とSGI、スパコン「TSUBAME3.0」を今夏稼動に向け開発

NVIDIAのGPU採用など、AI(人工知能)やビッグデータ解析への利用想定

2017年2月17日 発表

今夏稼動予定の東京エ業大学 学術国際情報センターの次世代スパコン「TSUBAME(Tokyo-tech Supercomputer and UBiquitously Accessible Mass-storage Environment)3.0」

 東京工業大学と日本SGIは2月17日、東京エ業大学 学術国際情報センターの次世代スパコン「TSUBAME(Tokyo-tech Supercomputer and UBiquitously Accessible Mass-storage Environment)3.0」を今夏稼動に向けて開発・構築を開始すると発表した。

 今回、TSUBAME3.0の開発にあたって政府調達「クラウド型ビッグデータグリーンスーパーコンピュータ (TSUBAME3.0)」が実施され、日本SGIが落札。今後、東工大はSGI、米NVIDIA、関連各社とともに開発を進めていくとしている。

 TSUBAME3.0が持つ倍精度の理論演算性能は12.15ペタフロップス(1秒間に1万2150兆回の浮動小数点演算が可能)と、スーパーコンピュータ「京」を上まわる世界最高レベルの性能とする。また、単精度での演算性能は24.3ペタフロップス、半精度での演算性能は47.2ペタフロップスとなる。既存のTSUBAME2.5とTSUBAME3.0を併せて運用することにより、東工大のスパコンとして半精度以上で64.3ペタフロップスの演算性能を提供でき、国内最大のスパコンセンターになるとしている。

 同大学では、科学技術計算の多くはデータサイズ64bitの倍精度を必要とするが、人工知能(AI)やビッグデータ分野では16bitの半精度での処理が可能であり、TSUBAME3.0では需要が急増しているAIやビッグデータ分野での利用を期待している。

今夏稼動に向け開発するスパコン「TSUBAME3.0」の記者発表会

 同日記者発表会が開催され、東京工業大学 理事・副学長 岡田清氏、同 理事・副学長 安藤真氏、同 学術国際情報センター センター長 山田功氏、同大学 学術国際情報センター 教授 松岡聡氏とともに、日本SGI 代表取締役社長 望月学氏、Hewlett Packard Enterprise SGI 最高技術責任者 兼 SVP イン・リム・ゴー氏、NVIDIA 日本代表兼米国本社副社長 大崎真孝氏、データダイレクト・ネットワークス・ジャパン 代表取締役 ロベルト・トリンドル氏、インテル アジア・パシフィック・ジャパン HPC担当ディレクター 根岸史季氏が登壇して、開発の狙いやコンセプトなどについて話した。

東京工業大学 理事・副字長 安藤真氏

 東工大の安藤氏は「今夏の稼働に向けてシステムの構築を開始するTSUBAME3.0は、本学で運用しているスパコン TSUBAMEのバージョン3.0にあたるもの。これまでスパコンが対象としていた高性能科学技術計算はもちろん、近年必要性が叫ばれているビッグデータの解析、人工知能への応用、近年注目されている分野でも使いやすいマシンを視野に入れて設計を行なった。また、“みんなのスパコン”として使われていたTSUBAME2.5を引き続き使っていき、本学で実施される最先端の研究にも活用していくことが我々の考えているアイデア。国内外の学術、産業界での利用に供することで、我が国全体の科学技術の発展に寄与していきたい」と挨拶した。

日本SGI 代表取締役社長 望月学氏

 一方、日本SGI 代表取締役社長の望月氏は「東京工業大学のTSUBAMEは、研究者、産業界、学術関係、ハイパフォーマンスコンピューターの世界のみならず、“みんなのスパコン”として非常に多くの方が利用しているシステムです。TSUBAME3.0で採用される計算コンピューターとして、我々のスケールアウト型スーパーコンピューターのフラグシップであるSGI ICE XAが採用されました。システムはさまざまな構成要素があり、プロセッサーのインテル、GPUのNVIDIA、高速ストレージのデータダイレクト・ネットワークスなど、多くのベンダーの協力を得て、この夏の稼働に向けて邁進していきたい」と挨拶した。

東京工業大学 学術国際情報センター 教授 松岡聡氏

 TSUBAME3.0については、東工大の松岡氏が解説。松岡氏は「TSUBAME3.0プロトタイプの成果をもとに設計要素の全てを達成することができたのが、今回我々が胸を張っているところ。スパコンとして最も性能がよい世界を代表するスパコンの1つであることが非常に大事。またビッグデータスパコンとして、従来型のシミュレーションも大事ですが、今注目を浴びているビッグデータ解析、人工知能といった新しい分野に対して、今まで我が国にはないようなタイプのスパコンとしてプラットフォームになることが重要で、それに対する要件を満たした。グリーンスパコンとして、TSUBAME2.5と同時運用することもありますが、電力性能がよいだけではなく、電力効率も世界トップクラスでなければいけないということで、今回もその目標を達成した」と話すとともに、「さらにクラウドスパコンとして、ビッグデータ、AI。スパコンにおいても従来型の運用法ではなく、クラウドでの利用や運用が非常に求められている。クラウド的な運用の要件を技術的チャレンジとして入れ、今後運用で実現していく」などと説明した。

東京工業大学 学術国際情報センター 教授 松岡聡氏によるTSUBAME3.0のプレゼンテーション
NVIDIA 日本代表兼米国本社副社長 大崎真孝氏
TSUBAME3.0のシステムの計算ノード部に、TESLA P100 for NVLink-Optimized Serversを4基搭載

 NVIDIA 日本代表兼米国本社副社長の大崎氏は「NVIDIAではこの10年、ディープラーニングの研究開発を容易にするためソフトウェアを開発してきました。TSUBAME3.0は国内で最強のHPC(High Performance Computing)であり、AIのスーパーコンピューターになります。AIコンピューティングを主軸とするNVIDIAにとって、非常に意味のあるリリースになります」とコメントした。

ハードウェアの特徴について説明するHewlett Packard Enterprise SGI 最高技術責任者 兼 SVP イン・リム・ゴー氏
各計算ノードはインテル Xeon プロセッサー E5–2680 v4を2基、 NVIDIAのGPU「TESLA P100 for NVLink-Optimized Servers」を4基、256GBの主記憶、ネットワークインターフェイスとしてインテル製「Omni-Path HFI 100Gbps」を4ポート搭載
TSUBAME3.0のシステムの計算ノード部にはSGIのSGI ICE XAを採用し、540台の計算ノードを収容する。ストレージシステムにはデータダイレクト・ネットワークスの容量15.9PBのLustre ファイルシステムを使い、これに加えて各計算ノードにも容量2TBのNVMe対応高速SSDを搭載。計算ノード及びストレージシステムはOmni-Pathによる高速ネットワークに接続され、またSINET5を経由して100Gbpsの速度でインターネットに接続される
TSUBAME3.0は冷却システムを最適化。屋外に設置される冷却塔によって外気に近い温度の冷却水を少ない電力消費で供給。これを主要なプロセッサの冷却に使用する
TSUBAME2.5の計算ノード
データダイレクト・ネットワークス・ジャパン代表取締役 ロベルト・トリンドル氏
インテル アジア・パシフィック・ジャパン HPC担当ディレクター 根岸史季氏