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【インタビュー】10月19日発売「グランツーリスモSPORT」のプロデューサー 山内一典氏に聞く
「7」でなく「SPORT」となった理由などが明かされる
2017年7月28日 22:02
- 2017年10月19日 発売
- 通常版:6900円(税別)
- 初回限定版:9900円(税別)
10月19日に発売が決定したPlayStation4専用ソフトウェア「グランツーリスモSPORT」の開発を手がけるポリフォニー・デジタル東京スタジオで7月26日、報道関係者を集めた「グランツーリスモSPORTスタジオツアー」が実施された。
会場では、「グランツーリスモ」シリーズプロデューサーの山内一典氏が、グランツーリスモSPORTについてプレゼンテーションを実施するとともに、スタジオ内部が披露された。ツアーでは山内氏にインタビューする機会を得たのでそのようすをお伝えする。
アーティストとエンジニアが作り出すのがグランツーリスモ
──今回初めてスタジオツアーに参加しました。山内さんがスタッフを紹介するときに、グラフィックデザイナーといった担当領域の役職で呼ぶのではなく、“アーティスト”と紹介していたのが印象に残りました。
山内氏:ポリフォニー・デジタルには200名の社員がいて、そのうち100名がアーティストです。アーティストとエンジニアが作り出すのがグランツーリスモなので、私たちには日常的なことなのです。
──10月19日に発売日が決まりましたが、今の開発の状況は?
山内氏:最後のツメと言うか、グランツーリスモは色んな要素を全部調和させなければならなく、グラフィックス、サウンド、ユーザーインターフェース、最後の調和の部分によってユーザーの体験が大きく異なってくるので、最後の部分をツメているところです。
──発売を前にクローズドベータテストが行なわれましたが、どういったポイントをテスト、評価していたのでしょうか?
山内氏:クローズドベータテストはとてもシンプルで、グランツーリスモの「スポーツモード」をテストするものです。スポーツモードでは、サーバークライアント型の対戦モデルを使用していて、それはオンラインのレースをリプレイを記録するものでもありますし、遠隔地同士の対戦を実現するものなんです。ベータテストではサーバー側のプログラムがどれくらいのトラフィックに耐えられるのかというのを見ています。それによってサーバー構成のデザインが変ってきますので、そういったロードテストが1つ。
あともう1つは、スポーツマンシップレーティングといった、レースをすることで変動するプレイヤーのレーティングの評価アルゴリズムだったり、評価式、そのポイントのチェックです。
──グランツーリスモのスポーツモードでは、ドライバーレーティングやスポーツマンシップレーティングでドライバーが評価されて、対戦相手がマッチングされていくわけですね。
山内氏:マナーのいい人どうしがマッチングされ、マナーのわるい人同士がマッチングされるしくみです。
──マナーのわるい人たちが集まるレースというのは、あまり想像したくないですね……。
山内氏:このあいだクローズドベータテストをやってみて分かったのですが、やはりスポーツマンシップレーティングが低いレースというのは、なんと表現していいのか地獄のような様相でして、これはなかなか這い上がれないなあと感じます。
──それはなにか手当をしないといけないわけですね。
山内氏:そこは難しい部分ですね。クルマに乗ると人って性格が変わりますでしょ。例えば休日にクルマに乗って街に出るだけで、普段僕らが社会で見ないような、露骨な人の悪意を感じることが簡単にありますし……。ゲームであればなおさらですので、そこはきちんと評価してマナーのいい人どうしがマッチングされる世界を作らないと、簡単に人の悪意に接することになる状況というのはよいことではないですよね。
正確さを増したステアリングフィール
今回のスタジオ見学会では、Thrustmasterとグランツーリスモが4年間共同開発したというハイエンドステアリングコントローラー「Thrustmaster T-GT」の操作体験もできた。引き続きその印象について質問してみた。
──ゲームに収録されているGT3マシン(メルセデスAMG GT3など)をドライブしました。レース車両は操作が難しいイメージがあったのですが、GT3マシンの乗りやすさ、操作性のよさに驚きました。実車のレース車両でもやはり進化が進んでいるのでしょうか?
山内氏:僕もこの3年ぐらいGT3マシンでレースをしていますが、本当に性能が上がって乗りやすいですね。ダウンフォースもすごく出ていますし、今のGT3マシンというのは1990年台のGT500クラスのパフォーマンスがありながら、すごく乗りやすいマシンになっていますね。
──ニュルブルクリンク(北コース)で7分切れちゃいますね(もちろんゲームの話)。
山内氏:GT3カーであれば、6分40秒ぐらいで走れちゃうんじゃないでしょうか。
──そのマシンが持つステアリングフィールを表現するステアリングコントローラーについてお聞きしたいのですが、ステアリングに伝わってくる情報量が豊かになっている印象がありました。
山内氏:あのステアリングというのは、1つは正確さにこだわりました。実はこれまでのステアリングホイールというのは、ソフトウェア側で例えば0-100といった値を入力しても、トルクの値が0-100のリニアなカーブになっていない変な形になっていて、ソフトウェアがコントロールするようにちゃんと動いていなかったのです。そこをちゃんとしようと、計測する方法もなかったので、まずはトルクメーターを作るところからはじめました。
そして、モーターの出力を最大トルクにふるのでなく、長時間プレイしたときの安定性のほうにふっていて、常に安定したトルクが出るようにしてあります。それとトランスデューサーと呼ばれるデバイスがあの中に入っていて、音と振動の中間の周波数を出して、ちょうどスピーカーとバイブレーターのあいだぐらいなのですが、それを使って30~80Hzぐらいの、そういう領域の振動を作りだしています。それをすることで路面のサーフェースのザラザラ感であるとかが、ステアリングを通じて伝わってくるようになっています。そのあたりの表現が可能になっています。
──コーナーリングでステアリングを切っているときに、ダウンフォースの強弱だったり、タイヤの柔らかさ、路面の状況というのが、きちんと伝わってくる印象を受けました。
山内氏:グランツーリスモはある意味、実車よりもステアリングフィールが豊かです。実車は案外そこに気を使われていないことが多く、レーシングカーは特にそうですね。
タイトルが「7」でなく「SPORT」となった理由は?
──これまでのグランツーリスモでは、バーチャルのゲームで育った子供たちが現実のモータースポーツに飛び込んでいくというカタチがありましたが、今度はFIAと一緒にバーチャルのなかでモータースポーツが始まることになりました。今後のリアルとバーチャルの境界線について、山内さんはどのように考えていますか?
山内氏:僕のなかではすでにその境界線はないんです。FIAの皆さんと一緒にこれからのモータースポーツを作ろうというのも、元々はFIAからの提案でした。今、実際にモータースポーツをされている方のほうが、現状のまま向こう100年は続かないという危機感を持たれていて、確固としたリアルとか、確固としたバーチャルとかがあるという時代は終わっている感じがしていて、非常に混沌としていると思います。
──タイトルが「7」でなく「SPORT」となった理由というか、なにか意思があったのでしょうか?
山内氏:(タイトルを決める)そのときはスポーツのことで頭がいっぱいだったというのが非常に大きくて、結果的に出来上がったのは、スポーツの要素が10%~15%、残りの85%はそれ以外の要素ですよね。ですから(ナンバリングするとしたら)、GT7をとおりこして、GT7.5ぐらいになっていると思っています。
──オンラインでの対戦が、今後の遊び方のメインになってくるのでしょうか?
山内氏:そうではないですね。やはりスポーツモードは全体の一部だと思います。気分によって色々変わると思います。自分だけでゲームを楽しみたい時もありますし、友達と一緒に楽しみたい時もありますし、まったくもって大会に出て自分の腕を試したい時もありますし、いろんな遊び方があると思います。
──ポリフォニー・デジタルの持つ豊かな表現力を、現実にあるハード商品に落とし込んでいく展望などはありますか?
山内氏:それはおおいにあると思います。ビジョングランツーリスモのプロジェクトもそうですが、グランツーリスモがクルマ業界からセクシーな要素を引き出すためのツールになっていると思います。今後もその役割は大きくなっていて、グランツーリスモと自動車メーカーが共同で素敵なものを生み出す機会は増えていくと思います。
──東京モーターショーも開催されますが、何かプロモーションの用意があったりするのでしょうか?
山内氏:東京モーターショーではもしかしたら、なにかビジョングランツーリスモのクルマが発表されるかもしれませんね。まだ決定ではありませんが……。
──最後に、グランツーリスモの開発で区切りがあると、山内さんはクルマを購入されていると聞きますが、今、気になっているクルマはありますか?
山内氏:今、気になっているクルマはBMWの「M2」ですね。直6、MTでサイドブレーキも(ハンドブレーキですし)。3.0リッター直6ターボなんてのはバランスとしてもいいですし、パワーもそれなりに出ますし……。今、自動車メーカーの個性がどんどん減ってきていて、あのM2は久々にBMWらしいクルマがまだ生き残っていたんだという感じがしますね。
──発売日を楽しみにしております。ありがとうございました。