VW、史上最高と言う新型「ゴルフ」の発表会を開催
「視覚的な品質」「触覚的な品質」など五感品質をクラス最高のものに

6代目となる新型「ゴルフ」を前に立つ、フォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長のゲラシモス・ドリザス氏(左)と、Volkswagen AG研究開発部門 車両開発・試作担当専務のDr.ハラルド・ルダネック氏

2009年4月9日開催



6代目となった新型ゴルフ

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは4月9日、6代目となる新型「ゴルフ(Golf)」の発表会を、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)にて開催した。ゴルフの詳細な仕様および各部写真は別記事として後掲するが、ここではその発表会の模様をお届けする。


ゴルフの変遷について紹介するドリザス氏

世代を重ねるごとに自らを乗り越えてきたゴルフ
 発表会において、フォルクスワーゲン グループ ジャパン社長のゲラシモス・ドリザス氏は、「フォルクスワーゲンの歴史を語る上で、1974年に誕生した初代ゴルフは欠かすことのできない車です。ゴルフはフォルクスワーゲンの偉大な先駆者『ビートル』の空冷式リアエンジン、後輪駆動から、水冷式フロントエンジン、前輪駆動に180度方向転換して登場しました。ジウジアーロの手によるシンプルかつ機能的なデザイン、“ゴルフマチック”と言われたコンパクトかつ効率的なパッケージングなどで日本をはじめ世界中に強烈的な衝撃を与えました」とそのオリジンを紹介。

 2代目以降の進化についてふれつつ、ワゴンタイプの「ゴルフ ヴァリアント(Golf Variant)」やミニバンタイプの「ゴルフ トゥーラン(Golf Touran)」へとバリエーション拡大を行えたのも、基本となるハッチバックタイプのゴルフが優れていたためだと言う。常にゴルフは世代を重ねるごとに自らを乗り越え、時代の“象徴的な車(アイコンカー)”であったと、これまでのゴルフの実績について語った。

プレゼンテーションは地球の映像が投影される形で開始され、初代ゴルフの映像や、人々の触れあいをテーマにした映像の投影から始まった。新型ゴルフの環境への配慮と、生活に加わる豊かさを象徴しているのだろう
ビートルと初代ゴルフの比較。どちらも自動車史に残るエポックメイキングな車「進化し続けるゴルフ」と題したスライド。新型ゴルフは5代目ゴルフよりもシャープなデザインとなっている

新型ゴルフが“史上最高のゴルフ”であると確信
 6代目となる新型ゴルフについては、本社であるVolkswagen AGの取締役会長のProf.Dr.マルティン・ヴィンターコルン氏のビデオメッセージが紹介され、Volkswagen AGの車両開発・試作担当専務Dr.ハラルド・ルダネック氏が来日し、発表を行った。

 ビデオメッセージの中でヴィンターコルン氏は、「“クラスレスな車の象徴”であるゴルフの最新モデルはこれまでの美点を受け継ぐとともに多くの進化を遂げた」と紹介し、「新型ゴルフが“史上最高のゴルフ”であると確信しています」と強いメッセージを発信。新型ゴルフが高品質だからこそ、品質に厳しい日本市場でも成功すると確信していると結んだ。

Volkswagen AG取締役会長Prof.Dr.マルティン・ヴィンターコルン氏のビデオメッセージ。“史上最高のゴルフ”であり、その高品質ゆえに厳しい選択眼を持つ日本のユーザーに評価されるであろうと語る
史上最高のゴルフ

 会長のビデオメッセージを受けてドリザス氏は、コルン会長がチーフデザイナーのワルター・デ・シルバ氏や開発担当役員のDr.ウルリヒ・ハッケンベルク氏と共に議論を戦わせつつ開発を行ってきたエピソードを紹介。自動車メーカーのトップがそれほどまでの気持ちを込めたのが新型ゴルフであり、その仕上がりは“史上最高のゴルフ”と絶対の自信を持って市場に投入するのだと言う。

本社から来日したルダネック氏。新型ゴルフの品質について語った

 続いてルダネック氏が新型ゴルフについて解説。新型ゴルフは、開発に1万8000人のエンジニアがかかわっており、その結晶であると言う。「1974年以来、全世界で2600万台以上販売されたゴルフは、ドイツでは“ゴルフクラス”と呼ばれる層が存在するほどのものとなっている。世代が変わるたびに、ゴルフらしさを受け継いで独自の特徴を出してきた。最高の品質、正確さ、デザイン、長く続く価値、これが新型ゴルフの主要な課題であった。新型ゴルフは、低燃費のTSIエンジン、高効率な7速DSGトランスミッション、新しいサスペンションを備えている」と言い、特に品質について強調。

 ゴルフの品質については、「偶然の産物ではなく、35年間にわたって徹底的に改良してきた結果」と語り、乗る人の五感、「視覚的な品質」「触覚的な品質」「臭覚で分かる品質」「音の品質」「ダイナミクスを通じての品質」があると紹介した。新型ゴルフはこれらのすべての分野において、高い品質を実現し、新たな基準を打ち立てているとした。

 音の品質、音響特性と静音性については、クラス最高となるもので、重大な開発目標となっていたと明かし、日本のユーザーニーズや交通環境にもマッチすると言う。フロントウインドーには、音の減衰効果のある遮音層を挟み込んだ3層の中間膜を使用。また、フロントのダッシュボードなどのパーツにさまざまな静音のためのシートを用いていると言う。フロントのサイドウインドーも10%ほど厚くし、そのほか遮音材もフォーム材からフリース素材にしたことで、軽量化を図りつつ静音性を高めている。その結果120km/hの速度で走行したとき、4dBほど静かになっており、音のエネルギー量を半分以上減らすことができたとした。ルダネック氏は新型ゴルフを「聞くことでも品質感を感じられる、聞こえないことによってゴルフの品質が伝わる」車だと言い、その静音性には抜群の自信を持っているようだった。

遮音性を説明するスライド。各部の遮音性能を高め、遮音材なども工夫してある。右はフロントウインドーの構造図。PVB(ポリビニルブチラール)シートが3層挟み込まれ、遮音性能を高めてある

 エクステリアデザインについても、「シャープさと力強さを与えた。クリアなボディーライン、水平を強調したラジエーターグリルのラインは水晶のようにきらめく左右のヘッドライトまで伸び、その結果ガッシリとした頑丈な雰囲気を与えている。新型ゴルフには初代ゴルフのデザインを思い起こさせるような要素を入れている。それは、ボディーサイドに見られるシャープなエッジを持つ“トルネードライン”」と語り、このようなシャープなラインを実現できるのも、その背景に自動車メーカーとして高い組み立て精度を持つからだと言う。

 このトルネードラインを持つ新型ゴルフは、「前の世代よりアクセントのある3次元的なボディーは、すべての面に緊張感があり、以前よりも精悍なキャラクターを作り出している。これはフォルクスワーゲンブランドの新しいデザイン言語でもある」とし、今後発売されていくフォルクスワーゲン車のキャラクターデザインになっていくことをうかがわせた。

新型ゴルフのドア上部からリアコンビランプにかけて水平方向に流れるトルネードライン。このラインの精度の高さもフォルクスワーゲンならではと言うイメージスケッチ。サイド部にトルネードラインが入っている

 近年の車に求められる安全性については、「新型ゴルフでは9つのエアバッグを搭載している。フロントに2つ、フロント/リアサイドに4つ、カーテンエアバッグを2つの8つに加えて、運転席の足元に容量18Lのニーエアバッグを新たに装備した。さらに新型ゴルフでは衝突の強度も認識する。これは従来の加速度センサーに加えて、衝突時のボディーの特徴的な変形音を音響センサーによって検知し、エアバッグやシートベルトテンショナーの反応時間を短縮した」と言い、より車の衝突状況を把握することで、的確に安全装備を働かせられるようになっている。そのほかむち打ち低減ヘッドレストなども装備し、新型ゴルフは、ユーロNCAP(ヨーロッパ市場で販売されている車の安全性評価基準)で、最高の5つ星を獲得している。

運転席側の透視図。ドライバーの足元にニーエアバッグが新設され、計9つのエアバッグを装備VWのエンブレムが開くと現れるリアビューカメラ(オプション装備)。バックギアと連動して動作し、カーナビ画面に映像が表示される新型ゴルフのインテリア。各種装備の位置も人間工学の観点から再検討されていると言う
オプション装備のHDDカーナビ「RNS 510」現在開発中のカーナビの写真も公開された。Googleと連動してナビゲーションサービスを行う

日本市場には当初2グレードを投入
 日本市場については、ドリザス氏から2グレードを投入することが発表された。最高出力90kW(122PS)/最大トルク200Nm(20.4kgm)の1.4リッター直噴ターボエンジンを搭載する「Golf TSI Comfortline」と、最高出力118kW(160PS)/最大トルク240Nm(24.5kgm)の1.4リッター直噴ツインチャージャー(スーパーチャージャー+ターボ)を搭載する「Golf TSI Highline」で、燃費は10・15モードでそれぞれ16.8km/Lと16.2km/L。いずれもツインクラッチ7速DSGトランスミッションを搭載し、AT限定免許でも運転できる。

 ドリザス氏は、この2グレードの投入と共に「フォルクスワーゲン プロフェッショナルケア」という新しいメンテナンスプログラムを導入すると発表した。プロフェッショナルケアは初回車検満了時までの3年間、点検整備作業などを工賃無償で受けることができるというもの。点検整備作業には、1年目・2年目の法廷1年点検とフォルクスワーゲン独自のメーカー指定点検が含まれる。この導入の目的を「輸入車のメンテナンスに関する不安感を減らすもの」と言い、「新型ゴルフはフォルクスワーゲン プロフェッショナルケアが付帯して、Comfortlineで275万円、Highlineで312万円と、競争力のある価格を実現できた」と語った。スポーツモデルであるGTIの国内市場の導入については、年末を考えており、将来的にはパサートCCにも搭載されているサスペンションコントロール機構「DCC」の装備モデルも予定しているとした。

日本市場には2グレード投入される。年間販売目標は1万2000台で、従来モデルとあわせ1万6000台の販売を予定している。これは先代の登場時とほぼ同様の数字で、経済環境は厳しくとも、ダウンサイジングのトレンドはゴルフの追い風になると予測するComfortline、Highlineそれぞれのエンジン性能曲線。どちらも1500rpmから最大トルクを発揮している
フォルクスワーゲン プロフェッショナルケアの説明スライド。新型ゴルフには最初から付帯されるサービスドイツではすでに実施されている買い換え促進策も記者からの質問に答える形で紹介された。新車にすることで、安全面で向上や、動力性能向上により渋滞の現象を見込め、CO2の排出抑制にもつながるとした

 フォルクスワーゲンの最量販車種であり、世界のコンパクトカーのベンチマークともなっているゴルフ。フォルクスワーゲン自身が史上最高のゴルフと言う、新型ゴルフの登場は新たなコンパクトカーの基準となるのだろう。特にルダネック氏が言う、五感で感じる部分については、ディーラーにおいて試乗するなどして感じてみてほしい。

(編集部:編集部:谷川 潔)
2009年 4月 9日