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トヨタ、吉田守孝副社長が「TNGA」と「カンパニー制」を両輪とする「もっといいクルマづくり」について解説

2020年ごろまでに販売する約半数をTNGAモデルに切り換える

2018年8月3日 開催

トヨタ自動車株式会社 副社長 吉田守孝氏

 トヨタ自動車は8月3日、東京都文京区の東京本社で2019年3月期 第1四半期(2018年4月1日~6月30日)の決算内容説明会を開催。この中で、トヨタ自動車 副社長の吉田守孝氏による「トヨタのもっといいクルマづくり~『愛車』をつくり続けるために~」と題するプレゼンテーションが実施された。

 吉田氏は、「現在、トヨタのもっといいクルマづくりは『TNGA』と『カンパニー制』を両輪として進めております。クルマのポテンシャルを大幅に高めた上で、賢く共用化するのが『TNGA』、車種ごとにこだわりを持って『愛車づくり』を実行するのが『カンパニー制』でございます」と説明。

 それぞれの分野における直近の取り組みとして、TNGAではクルマのベースとなる基本部位を一新。ユーザーにひと目見てかっこいいと思ってもらえるような魅力あるデザイン、1回乗ったらずっと乗っていたいと思うような気持ちのいい走り、さらに安全・安心、燃費など、購入者にとっての愛車となる基本性能、商品力を大幅に向上させていると語った。

 その一方で、TNGAでは「全体最適」と「共用化」を推し進めて原価低減を徹底。プラットフォームやパワートレーン、そのほかの主要なコンポーネントなど、クルマの基本性能を左右する機能部品が“TNGA部品”であると示し、車両原価で6~7割を占めていると紹介した。

 カンパニー制では、TNGAで磨き上げた部品やシステムをベースに、各カンパニーで車種ごとのこだわりを持って製品化することで愛車として仕上げるとコメント。レクサスでは「ブランド」「高級感」、ミッドサイズビークルカンパニーでは「1人でも多くのお客さまの笑顔」、TC(トヨタコンパクトカー)カンパニーでは「コンパクトで手に入れやすいこと」、GR(GAZOO Racing)カンパニーでは「気持ちのいい走り」にこだわっていると吉田氏は語った。

 また、各カンパニーでは「プレジデント」がトップダウンで意思決定。企画、設計、生産技術、製造が「四位一体」のチームとなり、ユーザーから愛される「もっといいクルマづくり」のために、チームの1人ひとりがていねいに品質にこだわってクルマを仕上げているとした。これにより、開発から生産開始までの期間で効率化が進み、効果が出はじめているという。

「もっといいクルマづくり」は、基本部分を共有化する「TNGA」と、車種ごとのこだわりをクルマに反映させる「カンパニー制」を両輪として進められている
TNGAでは性能にこだわりつつ、同時に全体最適も視野に入れて開発を実施
カンパニー制では「四位一体」で車両を生産

 2017年からこれまでに、TNGAによる新型車が7モデル発売されているが、吉田氏はそれぞれでかっこいいデザインや気持ちのいい走行性能、先進的な安全装備などを備えており、ユーザーなどから高く評価されているとコメント。さらに中型クラスの「プリウス」「C-HR」「カローラ スポーツ」はすべて同じ“TNGA部品”を採用しており、セダン、SUV、ハッチバックなど、さまざまなボディバリエーションを派生させる時の開発、生産が容易になっていると解説した。

 その半面、ユーザーからは「いいクルマになったけど、価格が少し高くなった」との指摘があることを現状の課題として認識しており、大幅な性能向上や先進安全装備の充実などを行なって商品力を高めているが、まだ「お客さま目線」になりきれていないと自己分析した。さらに今後は各国で規制強化が想定され、クルマの情報化や知能化、電動化といった技術の進歩が進んでいく中で、トヨタが生き残っていくためには競争力の強化やスピードアップ、経営基盤の強化が必要になると吉田氏は解説。今後はこれまで以上に商品とTNGAの強化、先行技術開発、愚直な原価低減、開発現場へのTPS(トヨタ生産方式)導入などを行なってTNGAを進化させていくとした。

 今後の展開として吉田氏は、TNGAモデルの市場導入をさらに拡大。2020年ごろまでに、トヨタで販売する約半数の車両をTNGAモデルに切り換えるという計画を披露。このためグローバルに展開している約30の工場でTNGAモデルの生産を行なうとした。

全体最適で共用化を高めたTNGAモデルだが、多彩な価格帯やボディバリエーションを展開。商品力の強化と個性化を両立している
TNGAモデルを市場投入したあとの振り返りでは、ユーザーから車両価格のアップが指摘され、まだ「お客さま目線」が足りないことを反省点としている
2020年ごろまでに販売車両の約半数をTNGAモデルに切り換える計画

守り続けるDNAがユーザーを笑顔にする

「愛車にこだわり続けたクルマづくり」を続けていくと語る吉田氏

 また、吉田氏は「少し余談になりますが」と前置きしつつ、スライド内で自身が学生時代に手に入れた「2代目セリカ」の写真を紹介。親友と北海道まで行ったときのものというこの写真に写るセリカについて、「私にとってセリカはかけがえのない相棒で、愛車のセリカにたくさんの思い出を詰め込んでトヨタに入社して、40年間、クルマの開発に没頭してまいりました」とコメント。これを受け、6月に発売した「クラウン」と「カローラ スポーツ」について語り、クラウンは「挑戦と革新によって進化を続けてきた日本を代表する高級車」、カローラは「世界中のお客さまに親しまれる、世界一の大衆車」と表現。さらにクラウンとカローラの初代モデルを運転した2枚の写真を紹介し、「ステアリングを握った瞬間、自然と笑顔になりました」とコメント。長い歴史でそれぞれに技術が進化しているものの、一貫して守り続けているそれぞれのDNAが初代モデルから受け継がれており、変わっていないことを実感して笑顔になったのだと説明した。

 トヨタではクラウンやカローラだけでなく、ランドクルーザーやハイエース、センチュリーといった50年以上の伝統を持つ車種があるのは同様の理由があり、ユーザーを笑顔にさせる愛車は、時代や技術が変わったとしても変わることがない普遍的なものだと吉田氏はコメント。クルマはこれから情報化や知能化、電動化が進み、現在よりもっと安全で便利になり、地球環境に優しくなっていくほか、モビリティやビジネスのあり方も変わっていくが、トヨタでは「愛車にこだわり続けたクルマづくり」を続けていくと宣言。「愛車のポテンシャルを作るのがTNGA、どんな愛車に仕上げるかはカンパニー制になります」とした。

上にあるのが、吉田氏が「親友と北海道まで行ったとき撮影した」という2代目セリカとの記念写真
時代や技術が変わっても、トヨタでは「愛車」という考えを軸に開発を続けている
もっといいクルマづくりにコネクティッドなどの新しい技術を加え、クルマを「相棒」に進化させていく

 プレゼンテーションの最後に吉田氏は、「このクルマをめぐる『100年に1度の大変革』を、トヨタは大きなチャンスと捉えています。『愛車』にこだわり続けた『もっといいクルマづくり』に加え、お客さまにこれまで考えもつかなかったような新たな価値をご提供するとともに、事業を拡大していく絶好の機会として、情報化、知能化、電動化に向けて戦略的に経営をシフトさせていきます」。

「近い将来、クルマはこれまで以上にお客さまに寄り添って、お客さまのことをより深く理解する『相棒』に進化していきます。また、『e-Palette』のように、あるときはお店まで、あるときは診療所まで行き、あるときは生活の場として機能する、『クルマと生活』『クルマと社会』がつながるコネクティッドな未来が近くに控えております。私たちトヨタはそのような未来のモビリティ社会を、誰にも負けない世界最高の技術力と発想力で現実のものにしていきますので、ぜひご期待いただきたいと思います」とコメントして締めくくった。