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トヨタ、車いすの乗降性改善など「JPN TAXI」一部改良説明会。既販車も改善対策を実施

スロープ設置から車いすの固定まで約3分程度に短縮

2019年2月4日 発表

 トヨタ自動車は2月4日、車いす利用者の乗降性を改善するため「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」について、スロープ設置から車いすの固定などにかかる時間を約3分程度に短縮を図った一部改良車両を3月に発売予定であることを明らかにした。

 3月発売予定の一部改良車両では、車いす乗降用のスロープ構造の見直しに合わせて車両側にも改良を加え、スロープ設置から車いすの固定などにかかる時間を約3分程度に短縮を図った。

一部改良車(改善後)
一部改良車両の改良部位内容ねらい
スロープNo.1(歩道など段差がある場合は単独使用)折り畳み3枚折りから、2つ折りに変更。収納袋を廃止し、リアシート下フロアに直接設置。フロア固定バンドをワンタッチ式ロックに変更作業の簡素化
長さを延長単独使用を拡大
スロープNo.2(歩道など段差がない場合の延長用)折り畳み構造から樹脂一体ステップに変更。スロープNo.1との結合ピンを廃止し、載せるだけの結合方式に変更作業の簡素化
車いす固定ベルト、車いす用延長シートベルトリアフロアに常設し、カーペットのポケットに収納作業の簡素化
ラベル貼付け作業が簡単に分かるラベルを各箇所に貼付け作業忘れ対策
3月発売予定の一部改良車両では、スライドドアの開閉時間短縮や料金トレイの位置を下げるなどの使用性の見直しするとともに、衝突回避や被害軽減をサポートするプリクラッシュセーフティに昼間の歩行者検知も対象とした
3月発売予定の一部改良車両。スロープの改良でドライバーの作業を簡略化した

 また、同社ではすでに販売された車両についても、スロープ設置から車いすの固定などにかかる時間を4分程度に短縮を図るなど、車いすの乗降性を高める改善を2月より進めていく。

既販車(改善前)
既販車両向けの改善部位内容ねらい
スロープNo.1(歩道など段差がある場合は単独使用)固定ベルトをつなぐカラビナ(金属リング)を提供作業の簡素化
スロープNo.2(歩道など段差がない場合の延長用)脚を組立式からスライド式に変更作業の簡素化
車いす固定ベルト、車いす用延長シートベルトリアフロアに設置可能で、部品が取り出しやすい収納ポケットを配布作業の簡素化
ラベル貼付け作業が簡単に分かるラベルを各箇所に貼付け作業忘れ対策
すでに販売された車両についても改善対策を施したスロープと無償交換する
トヨタ、新型タクシー「JPN TAXI」の車いす乗降を改善

 同日、同社東京本社で説明会が開催され、トヨタコンパクトカーカンパニー 製品企画ZP2 チーフエンジニア 粥川宏氏が登壇。改善内容の概要や実車を使用したデモンストレーションなどを実施した。

トヨタコンパクトカーカンパニー 製品企画ZP2 チーフエンジニア 粥川宏氏

 ジャパンタクシーは2017年10月23日に発売され、2018年末までに1万598台が登録されている。今回の一部改良は、車いすの利用者やタクシー事業者から車いす乗降用スロープの設置作業が複雑で、実際の使用場面において対応が困難な状況が生じているとの指摘を受けたものと説明した。

 同社では、一部改良車両の発売に加えて、すでに販売された車両についての改善対策を実施していく。具体的には組立作業を簡略化した車いす乗降用スロープなどの改善部品への交換や、作業が簡単に分かるラベルを各箇所に貼り付けるなど、ドライバーの習熟度によって作業時間に大幅な差が出ないような工夫を施したことなどを紹介。あわせて、タクシー事業者さまの協力のもと、乗務員への実車研修をより一層進めていくとしている。

車いすの乗降性の改良内容を紹介するスライド

 粥川氏は「障害者の方々が新しいタクシーに期待されている中で、実際に乗れなかった事例があると聞いております。今回の改良を入れることで、よりたくさんの方に使っていただけるようになっていくと思っております」とコメント。

 加えて、粥川氏は「福祉タクシー、介護タクシーは福祉車両を使って運営しています。ジャパンタクシーによって、これまでのセダンタイプのタクシーと福祉車両の間を近づけることで、今までタクシーを利用できなかった人が、より多く使えるようになればいいなというのがわれわれの思いです。一気にベストなものにならないでしょうし、福祉車両をこの車両で飽和しようと考えているわけではありません。いろいろなカタチのクルマを用意して面で受け止めることで、より優しい社会になっていくように仕向けていくのがわれわれの務めだと思っています。タクシーは予約のいらない利便性がポイントになると思いますので、引き続き改善を続けていきたいです」との考えを示した。