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ボルボ・トラック、新型「FH」サーキット試乗&説明会【360度動画付き】

初採用のステアリング機構「VDS」や「I-シフト・デュアルクラッチ」などを体験

2019年5月30日 開催

 ボルボ・トラックは5月30日、新型セミトラクター「FH」試乗会を、宮城県のスポーツランドSUGOにおいて実施した。

 試乗会では、全長約3.7km、最大勾配約10%のインターナショナルレーシングコースを使用して、新型FHに採用された「VDS(ボルボ・ダイナミック・ステアリング)」やデュアルクラッチ機構を採用した「I-シフト・デュアルクラッチ」などの新機能を体験できるプログラムが用意された。

ドライバーの職場環境をよりよくすることを考えた新型FH

ボルボ・トラックセールス バイスプレジデント 関原紀男氏

 試乗会であいさつをしたボルボ・トラックセールス バイスプレジデント 関原紀男氏は「ボルボ・トラックは12のブランドを抱える複合的な企業。1927年に創業して、以来90年以上、常に安全、そして革新性を念頭に商品を開発してきました。スウェーデン企業の中でもボルボグループは全世界に商品を供給しており、北欧特有の環境に敏感な風土があり、環境に対応する商品をつくる技術が90年にわたって蓄積されています」とボルボ・トラックの歴史を紹介。

 関原氏は「私どものコアバリューは“品質、安全性、環境への配慮”となり、会社の理念にもなっています。環境と言っても自然環境のほかにも、私どもはドライバーの職場環境も1つととらえて、ドライバーの職場環境をよくすることで、その結果、安全につながっていくという思想を持っています」と、その思想について話した。

UDトラックスやルノートラックなどのトラックブランドを持つボルボ・グループ
ボルボのコアバリューは“品質、安全性、環境への配慮”

 今回、日本に導入する新型FHのコンセプトについて、関原氏は「“革新的なテクノロジーを搭載したトラックが、より身近に”をキーメッセージに、世界中どこを見まわしてもない装備、そういった革新的な技術を持ったクルマを日本のお客さまに体験していただけることをコンセプトにしております」と紹介した。

日本に導入する新型「FH」のコンセプト

「VDS」や「I-シフト・デュアルクラッチ」など採用する新型FH

ボルボ・トラックインターナショナルHub SEA リージョナルプロダクトマネージャー Pawel Olszewski氏

 新型FHについては、ボルボ・トラックインターナショナルHub SEA リージョナルプロダクトマネージャー Pawel Olszewski氏によるプレゼンテーションが行なわれた。

 新型FHは直列6気筒 13リッターターボディーゼルエンジンを搭載。最高出力460HP、最大トルク2300Nmを発生する「D13K460」エンジンと、最高出力540HP、最大トルク2600nmを発生する「D13K540」エンジンの2種類が導入される。

直列6気筒 13リッターターボディーゼルエンジンは最高出力460HP、最大トルク2300Nmを発生する「D13K460」エンジンと、最高出力540HP、最大トルク2600Nmを発生する「D13K540」エンジンの2種類を導入

 Olszewski氏は「欧州と日本の規制は調整が進み、ユーロ6から若干の調整で日本に導入できるようになりました。ヨーロッパやシンガポールに導入するハードウェアをほぼそのまま導入することができましたが、日本にはSCRの技術指針があり、日本向けのソフトウェアを開発しています」と明かした。

セミオートマチックトランスミッションの「I-シフト」

 トランスミッションはMTが廃止され、標準で選択できるセミオートマチックトランスミッションの最新型「I-シフト」(AT2612F)は許容GCW(連結車総重量)をアップ。従来型I-シフト(AT2612D)の60tから、最新型I-シフト(AT2612F)では100tを実現する。超重量物輸送用に対してクローラーギヤをオプション設定している。

クローラーギヤ付きをオプション設定する

 また、540HPエンジン搭載車にはデュアルクラッチ機構を採用する「I-シフト・デュアルクラッチ」がオプション設定された。

デュアルクラッチ機構を採用する「I-シフト デュアルクラッチ」
デュアルクラッチの概要を示すスケッチ

 I-シフト・デュアルクラッチについて、Olszewski氏は「技術についてはスポーツカーでよく知られているものかと思います。新しいデュアルクラッチにより、ドライバーの快適性や運転性を劇的に改善します。また、シームレスな変速により業務においても平均速度を高めることができると思います」とメリットを紹介した。

 ステアリング装置には、積荷量や路面状況に左右されない一貫性のある安定したステアリング感覚を実現するというVDS日本仕様の全車に標準装備される。

 Olszewski氏は「VDSは、より正確に車両を運転することができ、特に後退時にそれを実感することができます。VDSにより操作力を85%低減することが可能で、ドライバーがリラックスでき、ストレスも減らすことができます。メリットの1つは、高速走行時でも方向安定性を維持できること。また、路面が凸凹していてもキックバンクの振動がステアリングに伝わることはありません。ステアリングを中立の位置に戻してくれるサポートがあったり、ブレーキをかけるときなどさまざまな状況において安定性を維持することができます」とそのメリットを紹介した。

「VDS(ボルボ・ダイナミックステアリング)」の特徴を紹介するスライド
新型FHは衝突被害軽減ブレーキ付きアダプティブクルーズコントロール、車線逸脱警報、レーンチェンジサポート、ドライバーアラートサポートなどの安全機能を標準装備する
衝突の危険性が高まるとフロントウィンドウに赤い表示でドライバーに警告
警告表示が出てもドライバーが反応しない場合、自動的にブレーキが作動する

サーキットで新型FHの「VDS」や「I-シフト・デュアルクラッチ」を体感

ボルボ・トラックの新型「FH」サーキット試乗会【360度動画】

 会場には新型FHの4×2を2台、新型FHの6×4を2台、計4台の試乗車が用意され、記者もその中の1台でサーキット1周を試乗することができた。試乗した新型FHの軸配列は4×2、540HP仕様でオプションの「I-シフト・デュアルクラッチ」を搭載。キャブタイプはグローブトロッター ラグジュアリー仕様となる。トレーラーは2軸トレーラーで10tのウェイトを積載している。

新型FHの6×4
新型FHの4×2

 ドライバー席でシートポジションを調整していよいよ試乗スタート。グランドスタンド前のストレートには、VDSの効果を確認するために凸凹路が用意された。

 新型FHに採用されたVDSは、ステアリング装置を電動モーターで制御する一種のステアリングバイワイヤーとも言えるシステム。完全なバイワイヤーではなく、前輪とステアリングホイール間の緩衝部分としてトーションバーを仕込むことで常時物理的な連結を保っている。

 VDSではこうした凸凹路など、路面からの入力で前輪とステアリングホイールの間に変位が発生すると、モーターによる力でステアリングへの影響を抑え込む制御を行なっている。実際に凸凹路を走行すると、確かにキックバックを感じることはなく、ドライバーは行きたい方向にステアリングを保持するだけでいいといった操作感を体験することができた。このVDSでは横風を受けたときなどにも制御が働き、直進安定性を高めるという。

試乗会場に展示された「VDS(ボルボ・ダイナミックステアリング)」の特徴を紹介するパネル
デュアルクラッチ機構を採用する「I-シフト デュアルクラッチ」の特長を紹介するパネル
超重量物輸送用としてオプション設定している「クローラーギヤ付き I-シフト」

 凸凹路に続いて第1コーナーをクリアすると、バックストレッチまでアップダウンのあるコーナーが連続する。VDSはステアリングの動きを1秒間に2000回感知するセンサーを備えており、そういった連続するコーナーを走行しても、ドライバーによるステアリングの入力に対して応答の遅れなどはなくクルマはドライバーの狙い通りに動き、VDSの自然なステアリングフィールを確かめることができた。

 8%の下り勾配となるバックストレッチでは補助ブレーキ性能を体験。3段の補助ブレーキに加えて、補助ブレーキのレバーに設置されたスイッチを押すと、シフトダウンによるエンジンブレーキが自動的に働き、重量級の車両を減速させる。

 最後は最終コーナーに続いて10%の上り勾配となる場面で「I-シフト・デュアルクラッチ」の加速性能を体感した。最終コーナー手前で減速して低速域から全開加速すると、継ぎ目のないスムーズな変速とともに、坂の頂上に向けて力強い加速を体験することができた。

新型FHのドライバー席
夜間のアイドリングストップ時に車内温度を維持するビルトインのパーキングクーラー
ドライバーサポートシステムを紹介するパネル

 1周を走行して感じたのは、VDSやI-シフト・デュアルクラッチといった新機能のみならず、ディスクブレーキを採用することで乗用車のようなブレーキの操作感覚を実現させているなど、普段は乗用車しか運転しない記者にとって、乗用車と変わらない操作感覚に驚かされた。