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日産、歴代フェアレディZオーナーに「Z PROTO」特別公開 「プロトと言ってもほとんどこのままで出ます」

内田社長もお忍びで来場。「手に届くような形で出せればいいなと思っています」

2020年10月11日 実施

代官山 T-SITEでフェアレディZ プロトタイプ「Z PROTO」を特別展示

 10月11日、東京 代官山にある代官山 T-SITEにおいて、9月に公開されたばかりの日産自動車のフェアレディZ プロトタイプ「Z PROTO」の特別展示が行なわれた。

 これは、毎月第2日曜日に代官山T-SITEの駐車場で行なわれているクルマ好きに向けたイベント「モーニングクルーズ」の一環として実施されたもので、今回のテーマは「フェアレディZ」。当日は台風の影響で中止の可能性もあったが、時おり雨がぱらついたものの曇り空の下でイベントは進行。会場ではZ PROTOを囲むようにオーナーカーのS30型、S130型、Z31型、Z32型、Z33型、Z34型がモデル別に並べられ、Z一色の中Z PROTOが披露された。

 イベントにはZ PROTOを手掛けた日産自動車 グローバルデザイン本部エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターの田井悟氏、チーフプロダクトスペシャリストの田村宏志氏が参加してのトークショーが実施されるとともに、代表執行役社長兼最高経営責任者の内田誠氏もお忍びで参加し、報道陣の囲み取材に応じた。

歴代フェアレディZが代官山 T-SITEの駐車場を埋め尽くした
チーフプロダクトスペシャリストの田村宏志氏(左)と撮影に応じていただいたのが内田社長。申し訳ありません、フードとマスクではじめ分かりませんでした……

 Z PROTOは9月16日にその姿が披露されたスポーツカー。エクステリアでは初代S30型のシルエットやフロント&リアのアイコニックなモチーフを引き継ぎつつ、歴代Zの持つ黄色をボディカラーに採用。S30型のデザインを彷彿とさせるフードのバルジ形状やティアドロップ形状のLEDヘッドライトを用いるとともに、歴代Zの持つアイコンとして四角いジオメトリックなグリル開口を継承。

 また、サイドシルエットは長いノーズから続くルーフラインの先に垂直に切り立つテールエンド、フロントフェンダーよりもわずかに低く、なだらかに傾斜するリアのデザインによって、S30型がもつサイドシルエットを表現。リアまわりでは、S30やZ32などいくつかの歴代Zが持つテールランプからインスピレーションを得たデザインテーマを現代風にアレンジするなど、随所に歴代モデルを感じられるデザインを採用しているのが特徴だ。

 パワートレーンの詳細はまだ発表になっていないものの、V型6気筒ツインターボエンジンに6速MTを組み合わせていることをアナウンスするとともに、ボディサイズは4382×1850×1310mm(全長×全幅×全高)、19インチホイールにフロント255/40R19、リア285/35R19(Z PROTOではダンロップの「SP SPORT MAXX」を装着)サイズのタイヤを装着することが明らかになっている。

アンベールされたZ PROTO
Z PROTOのボディサイズは4382×1850×1310mm(全長×全幅×全高)。現行のZ34型と比べると122mm長く、5mm広く、5mm低いスリーサイズ
会場ではエンジンも公開!? と思いきや、ランプ類を点灯するための作業をするためにちょっとだけボンネットフードをオープン

プロトと言ってもほとんどこのままで出ます

 さて、イベントでは田井氏と田村氏によるトークショーが展開され、Z PROTOの特徴について各人が紹介。その中で田村氏は、「弊社はGT-RとZを持っていますが(新型は)一体どうなっているんだという声を各所で言われました。そういう意味でやっとお見せできてよかったのと、プロトと言ってもほとんどこのままで出ます。このクルマをお見せできて感無量です」と、プロトタイプでありつつほぼ完成形であることを報告。

日産自動車株式会社 チーフプロダクトスペシャリストの田村宏志氏
日産自動車株式会社 グローバルデザイン本部エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター 田井悟氏

 また、司会からZ PROTOのどの部分が一番好きなところかと聞かれ、田井氏は「クルマ全般と言えるのですが、リアクォータービューでしょうか。ここにはいろいろな要素が圧縮されていて、クルマを運転していると(他車の)フロントって見えないじゃないですか。後ろからついていきながら“いいなアレ”って言っていただけるようなところでしょうか」、田村氏は「クルマを運転しているとだいたい他車のテールを見ているんですよね。ここではもしかするとこれが何のクルマなのか意識して見ていないかもしれないですが、サブリミナル的にずーっと他車の後ろにいると。そのときの印象というのを一番大事にしているので、ちょっと離れたところから見た時のテールデザインからメッセージが出せればと思っています。だから後ろのデザインは何回も直してもらっています」と、Z PROTOでは特にリアのデザインを重要視したとコメント。

田井氏、田村氏ともにZ PROTOの好きなところはリアビューと回答

 一方、Z PROTOで“ここは見逃すな!”というポイントについて質問を受けた田村氏は、「特にないです。皆さんが実際にここにきてこの空気の中で見てもらえるというのが、この上ない私の晴れやかな気持ちです。やはり(室内展示での)照明って難しくて、画面で見るのと実車を見るのではだいぶ印象が違うんですよね。残念ながら今日は晴れていませんね。いつか太陽のもとで見ていただくとまた別の印象になると思います」、田井氏は「田村さんと被ってしまいますが、Z PROTOを発表したときいろんなインターネットの記事を見て、ちょっと本物を見てほしいと思ったんですよね。今日は曇っていますが、このくらい形がしっかり見せられる黄色が作れる時代になったのです。黄色ってすごく難しくて、本当はもっと映像で(きれいに)見せられると思ったのですが、やはり通しで見たときにこんなにくっきりと分かれたボディサイドの明るい面と影面すら飛んでしまうというのはビックリしました。なので(自然光のもとで)ここを見ていただきたいというのが一番です」とそれぞれ述べた。

 また、田井氏は「実はこのクルマ、完成した日までリアのFairlady Zのエンブレムが水平に付いていたんです。で、“これ水平じゃないんじゃない? 斜めでしょ”と私が言って斜めになったんです」との開発秘話も明かされたほか、Z PROTOベースの市販車がいつ発売になるのか聞かれた田村氏は、「それはお忍びで来られている内田社長じゃないと分からないな~(笑)。内田さんはZ32を好きで乗っていたというのがあって、このプロジェクトを通した張本人です。そういう意味で会場に来てくれて本当に嬉しい。まあ、GT-R プロトができてから××か月で市販車が出てきたじゃないですか。言えないけどだいたいそこは(笑)」と、そう遠くない将来に市販車が登場することを示唆した。

リアのFairlady Zのエンブレムは、Z PROTO完成ギリギリのタイミングで斜めのレイアウトに変更になったという

 なお、イベント後に囲み取材に応じた内田社長にZ PROTOを発表したことについての反響を聞いたところ、「僕の友人が遊びにきて、写真では分からないから実車を見に行きたいと言うんです。で、形を見るといわゆる240Zからきているようなフロントの美しさ、そしてZ32のようなリア。実車を見た感想として非常にきれいだと言っていただけて非常に嬉しかったですね。やはりクルマはカッコよくないといけない、見て美しくないといけない、乗って楽しくないといけないと思うので、それを満足できていると言ってもらったのがうれしかった」とコメント。

 また、Z PROTOを見た実直な感想を聞いてみると「やはりパッと見て美しいというのがスポーツカーは一番ですよね。また手に届くような形で出せればいいなと思っています。Zはやはりそういうクルマですし、乗りたいなと思うようなクルマになってほしいと思います。まだプロトタイプですが、さらによくしていくように頑張っていきます」とのこと。実車が登場するのを楽しみに待ちたい。

囲み取材に応じていただいた内田社長(左)と田村氏(右)。「手に届くような形で出せればいいなと思っています」とのこと、プライスにも注目したい