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水素カローラの仲間作り、グリーンモンスターの川崎重工が大林組と一緒に仲間入りを表明

川崎重工業株式会社 代表取締役 社長執行役員兼CEO 橋本康彦氏

水素カローラ参戦の仲間に加わった川崎重工と大林組

 トヨタ自動車の豊田章男社長は、トヨタ自動車社長として、そして自動車工業会会長としてカーボンニュートラル社会の選択肢を広げるため、内燃機関の未来を切り開くために水素エンジンを搭載したカローラ(水素カローラ)でスーパー耐久参戦を行なっている。この参戦には、自らがモリゾウ選手として参加することで水素社会のクルマのあり方を実証し、水素社会を一緒に切り開いていく仲間を募っていくという思いも込められている。

 参戦1戦目となった富士の24時間レースでは岩谷産業や福島県双葉郡浪江町などがその思いに賛同。浪江町の「FH2R(福島水素エネルギー研究フィールド)」で作られた100%カーボンニュートラルのグリーン水素を使用してレースを走りきり、水素を燃焼して走るという新たなクルマの可能性を仲間とともに実証して見せた。

自らが代表を務めるルーキーレーシングのレーシングスーツで会見に臨むモリゾウ選手。トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男氏でもある

 そして参戦2戦目となるオートポリスでは、さらに新たな仲間が加わった。それが、オートポリスのある大分県で地熱発電によるグリーン水素を製造する大林組。大林組はオートポリス近くの大分県九重町で地熱発電による水素製造プラントを運営しており、顧客であるトヨタ自動車九州との関連もあってオートポリス戦に挑む水素カローラにグリーン水素を供給。水素カローラの戦いの仲間となり、大林組 蓮輪賢治社長は豊田章男社長とともにオートポリスの記者会見に出席した。

株式会社大林組 代表取締役社長 蓮輪賢治氏

 その記者会見の背景には、トヨタ自動車九州や大林組のロゴとともに川崎重工業のロゴも掲示。コンシューマ製品ではオートバイで知られる川崎重工は、そのオートバイの開発のためのテストコースとして2005年にオートポリスサーキットを取得。現在はオートポリスの運営者でもある。

 ただ、コンシューマ製品としてはバイクで知られるが、川崎重工という名前が示すように日本を代表する重工業会社でもある。発電所のガスタービンエンジンや各種産業ロボットを手がけるほか、モビリティ分野では新幹線やLNG輸送船、最近話題となったブルーインパルスのT-4も川崎重工製だ。そしてそんな川崎重工が近年力を入れているのが水素によるグリーン化。DLE(ドライ・ロー・エミッション)燃焼器での水素燃焼に取り組んでいるほか、旅客機用の水素ジェットエンジン開発も表明している。

 また、大林組とは水素燃焼による発電プラント構築に一緒に取り組んでおり、ロケット用の液化水素では国内最大級のタンクを種子島で運営。世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」も川崎重工が作り上げた船になる。

川崎重工: 液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」進水式

 会見の冒頭、豊田社長はその川崎重工が次戦の鈴鹿で水素カローラ参戦における、水素の「はこぶ」を見せてくれると明かしてくれた。

 その経緯を質問したところ、大林組 蓮輪賢治社長が川崎重工との取り組みについて語ってくれたほか、記者席中程で会見を見学していた川崎重工 代表取締役 社長執行役員兼CEO 橋本康彦氏に急遽返答していただいた。

鈴鹿での川崎重工に期待

 大林組 蓮輪社長は、「神戸のポートアイランドで川崎重工さまと水素燃焼の実証実験をやっています。これも、(大分県での地熱発電と同様)エネルギーインフラの将来に向けて私どもも貢献していきたいという理念の元、川崎重工さまと一緒になってやらせていただいている」と川崎重工を紹介。

 川崎重工 橋本社長は、「私どもは日本、そしてオーストラリアにおいて多くの企業のみなさまと一緒に、オーストラリアから水素を運んでくる。そういった水素を次回(鈴鹿)はトヨタさまが使っていただけるということで、今回来させていただきました」と来場の経緯を解説。

「私どもはサプライチェーンがメインでありますが、合わせましてバイクおよび発電用エンジン、やはりエンジンを使っているわれわれの事業として水素でエンジンを回していきます。そして今エンジンをやっているわれわれの中で水素という未来があるということをみなさんとともにやらしていただきたいと思いますし、こういった形でトヨタさまがここに来られて一緒にやらせていただけるのを大変光栄に思っております」と語る。

 水素事業については、「川崎重工は昨年度水素を事業の軸に掲げるという決心をしております。サプライチェーンをはじめ、バイク、そして航空機のエンジン、そしてガスタービン。いろいろなところでわれわれは水素の可能性をみなさんとともに一緒に歩んで検討していければと思っております」と、2020年に発表したグループビジョン2030について言及した。

 川崎重工のレーシングチームは、ライムグリーンのカラーとその強さから「グリーンモンスター」と恐れられるほどだが、橋本社長をはじめ一緒に来ていた川崎重工の首脳陣は、ライムグリーンとブラックのマスク&ウェアでキメており、さすがカワサキという印象を受けた。

 鈴鹿でのカワサキというと、2019年の8時間耐久レースの優勝が印象的。そんな鈴鹿でどのような水素社会を見せてくれるのか、9月18日~19日に開催されるスーパー耐久第5戦鈴鹿を楽しみに待ちたい。

鈴鹿でのカワサキというと、2019年の8時間耐久優勝が印象的