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テスラで移動、CES 2022会場地下にできた謎の白いトンネル「Vegas Loop」に乗ってみた

Vegas Loopのトンネル。クルマが1台通れるサイズのトンネルになっていて、コストを考えてこうなっているのだと考えられる

 1月3日(現地時間)から米国ラスベガス市が開催されているCES 2022では、自動車関連のメーカーも多数参加しており、ソニーが「VISION-S 02」を発表、展示していることなどが話題になっている。1月5日(現地時間)から展示会もスタートし、2年ぶりとなる対面形式の巨大展示会が久々の開催となっている。

 そうしたCES 2022のメイン会場はLVCCという略称で呼ばれるラスベガス・コンベンション・センターで、2022年のCESでは新しくできた西館(West Hall)が自動車関連に割り当てられており、もし現地でCESに参加しているのであれば、西館は見逃せない展示会場となる。ただ、その西館は従来西側にあった巨大駐車場をつぶして作られたという経緯もあり、本館に相当する中央館(Central Hall)や北館(North Hall)とは結構距離がある場所に入り口がある。そのため、歩いて行くと軽く15分以上はかかるような場所にあり、場所によってはもっと時間がかかるかもしれない。

 とにかくでかくて、その中を移動するだけで軽く1日の運動量を超えてしまうほどの運動になってしまうので、毎年最終日ごろにはイベントを自主リタイアする人が続出するぐらいだ。筆者もその1人で、このLVCCこそキックスケーターとか用意してくれないかなぁと毎年思っているが、さすがに多くの来場者がいる中をキックスケーターは危ないと主催者も考えるのか、そうしたソリューションはいまだかつて提供されたことはない……。

 だが、歩くのやだなーと思ってしまう筆者と御同類の皆さまも、2022年以降のCESではもはや心配ご無用だ。実は2022年から完璧なソリューションが用意されているのだ。

西館駅から中央館駅までの走行の様子

VEGAS Loop、現在はCESの会場地下のみだが、将来的にはLas Vegas全域に展開予定

VEGAS Loopの路線図、西館、中央館、南館の3つの駅を結んでいる

 その完璧なソリューションは「Vegas Loop」という新しい地下トンネルだ。地下トンネルと言っても、それを長々歩かせるというものではなく、駅に駐車場が用意され、その駐車場に車が止まっており、CESの来場者が乗ると順次発進していくという形で運行されているのだ。車両は一般道ではなく駅と駅の間に作られているトンネルを通るので、信号もないし、渋滞もない。このため、駅で乗る人があふれていない限りはすっと乗れて、あっという間に目的地についてしまう。

LVCC中央館駅の入り口。エスカレーターで下ったところに駅がある
LVCC中央館駅。左側は南館行き、右側は西館行き。目的地に応じて乗る場所が違う。筆者が試した時には待ち時間ゼロで乗ることができた

 走っているのはご存じバッテリEV専業自動車メーカーであるテスラの車両。というのも、このVegas Loopを運営している企業「Boring Company」に、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏が投資したという経緯もあり、利用されている車両がテスラになっているのだ。現時点では人間のドライバーが乗ってテスラの車両に用意されているADASの機能を利用して運転しているが、将来的には本格的な自動運転(レベル4やレベル5)が実現されれば、ドライバーレスで運行することができるようになるだろう。

止まっている車両はすべてTesla

 このBoring Company、現在はLVCCの地下に作ったトンネルを運行しているだけだが、将来的にはラスベガスの全域に同様のトンネルを作って、駅を増やしていく計画だ。特にCES期間中は、参加者の移動で市内の道は渋滞だらけになるのが通例で、2022年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり参加者は大幅に減っているのだが、それでも渋滞が発生している状況だ。その意味では、地下にトンネルを作り、そこを専用の車両で運行するというVegas Loopは渋滞解消の切り札になる可能性は高い。

「苦行」だったCESの会場まわりもより楽々になり、渋滞に無縁であっという間に目的地についてしまう

トンネルの入り口。乗客がのった車両は次々とこのトンネルに吸い込まれていく

 Boring Companyが運行しているVegas LoopのLVCC路線は、西館、中央館、南館というLVCCのホールを結んでいる。それぞれのホールに駅が用意されており、CES参加者はその駅から乗るという形になっている。今回はCESの参加者も含めて特に料金などは取られない形になっており、駅に行って案内係に行き先を告げるだけで乗ることができる。

目的地の西館駅は地上にあるので、クルマはトンネルから出て到着する
西館駅は地上にある

 駅にはパーキングスペースが用意されており、乗客が乗るとテスラ車両が順次発進していく。トンネルは1台分の車両が通れる程度になっており、一部トンネルの出口あたりは対面通行になっていたが、基本的には一方通行で運行しているので、事故もドライバーが必要以上にスピードを出さない限りは起きそうにない(もちろん起こる可能性はゼロではないが……)。車両のモニターとかを見る限りはテスラ車両に用意されているレベル2のADASを利用しているように見え、ドライバーはハンドルに手を置いているだけというように見える。どうも人間のドライバーは何かあったときの対処するために乗っているだけという形なのだろう。

 いずれにせよ、毎年2日目ごろには「もう歩くのイヤだ~」と感じていた筆者にとっては最高のソリューションの登場で、面白いけど身体的には厳しかったCESの会場めぐりも2022年はだいぶ楽になりそうだ。