日産車体、湘南工場の移転時期を見直しへ
日産車体の高木社長が九州工場竣工会見で言及

九州工場竣工会見で湘南工場について語る、日産車体株式会社の高木茂社長

2009年4月22日会見



 日産自動車の100%子会社である日産車体の高木茂社長は4月22日、福岡県の日産自動車九州工場において記者会見を行い、九州の新工場のフル稼働時期が遅れたことで、湘南工場の閉鎖時期の見直しを検討していることなどを明らかにした。

 この日、日産自動車九州工場敷地内に建設中だった日産車体の新工場を竣工。同工場の位置づけなどについても言及した。

 高木社長は、「湘南工場については、設備の老朽化が進んでおり、更新時期に入っている。だが、地震対策に費用がかかること、近隣に高層マンションをはじめ住宅が密集しており、自動車会社は機密度の高さが求められるにも関わらず、それが難しくなってきたこと、騒音の問題が出ていることなどの理由もある。平塚(湘南工場)は、車作りには向かなくなってきたため、九州へ新工場を竣工した。新工場にあわせて、湘南工場第1地区を閉鎖する方向だったが、現在閉鎖時期の見直しを検討している。具体的な時期については、腹づもりはあるが公表できない。1年以内ということはない。新工場は年間12万台の生産体制としているが、勤務体系の変更などにより、最大でも15万台程度の生産能力が限界と見ており、第2地区を含めたすべての生産を九州に移動させるということは考えていない」とした。

 神奈川県平塚市にある湘南工場は第1地区および第2地区に分かれており、閉鎖の対象となっているのは第1地区。現在、「ウィングロード」「ピックアップ」などを生産。一方、第2地区では「エルグランド」「セレナ」「キャラバン」を生産している。九州に竣工した新工場では、エルグランドの生産を計画しているが、同車種の生産が2010年以降となったことで、湘南工場全体の再編にも影響。それによって、第1地区の閉鎖時期の見直しにも着手したと見られる。

【お詫びと訂正】記事初出時、第1工場の生産車種を「エルグランド」と誤って記述しておりました。お詫びして訂正させていただきます。

 また、経済環境の悪化に伴う生産数量の見通しについては、「日産自動車からの受注によるものであり、当社が見通しを出すわけではない」と前置きしながらも、「ただ、与えられている数値は、昨年よりも年間2割ぐらい減少している」とした。

 竣工した福岡県苅田町の新工場については、「2009年での立ち上げということで公表していたが、これを2009年末の生産開始に置き直した。需要の動向も影響しており、エルグランド、北米向けの『クエスト』は先送りとした。また、設備の準備の問題もある。3月末にはほぼ大物は入ったが、5月末までに準備が整い、6月から試作を開始し、12月から『パトロール』(SUV『サファリ』の海外向けモデル)を生産する。2010年度でフル生産にもっていきたいと考えているが、期待であり、この点は需要動向に左右されるだろう。さまざまな車種へ対応できる生産体制としているが、新たな車を生産する際は、なかなか黒字になりにくい点も覚悟している」とした。

 また、「絶妙なタイミングで新工場が竣工した。これがもう少し遅れていたら、中断していた可能性がある。作ったからにはなるべく早く使わなくてはならない。効率のいい工場なので早く成果を出したい」とした。

 新工場の雇用に関しては、「年間12万台のフル生産体制のときに、1000人の人員が必要となる。雇用形態は決まり切っていないが、本来ならば、自動車とともに、従業員も移動することになる。だが、今回はそうはいかない。どれだけの社員が平塚から来たほうがメリットがあるのかを検討する必要もあり、体制ができなければ、こちらで補充することも考えている。現時点では、いつ、何人が移るかは確定できていない」とした。

 湘南工場の社員とは個人面談を通じて、異動に関して話し合いをしているが、生産開始時点が遅れたことなどもあり、異動する規模は少なくなりそうだと言う。

 新工場は、隣接する日産自動車九州工場とあわせて年間60万台以上の生産規模を誇る日産最大規模の工場になり、部品の調達に関しては、日産自動車九州工場の調達ルートを主に活用すると言う。

 高木社長は、「国内での生き残りを賭けて、どういう工場ならば生き残れるかを考えていきたい。サプライヤーと共存して、国内で生き残っていくことに知恵を使いたい」とした。

(大河原克行)
2009年 4月 24日