メルセデス・ベンツ、新型Eクラス発表会リポート
東京国際フォーラムで29日まで展示・試乗会開催

E350アバンギャルドとメルセデス・ベンツ日本のテンペル社長と上野副社長

2009年5月26日開催
東京国際フォーラム



 メルセデス・ベンツ日本は5月26日、同日発売した新型「Eクラス」の報道関係者向け発表会を、東京国際フォーラムで開催した。

 なお同フォーラムでは29日まで一般向けの新型Eクラスの展示・試乗会が開催されている。その場で申し込んでも試乗できる枠が用意されている。また、6月から7月にかけて、全国11カ所で展示・試乗会が開催される。会場等の詳細は、記事末尾の展示会・試乗会情報のリンク先を参照されたい。

東京国際フォーラムの中庭に展示されたEクラス東京国際フォーラム周辺を15分ほど試乗できる6月から全国で展示・試乗会が行われる

 

E350アバンギャルド
E300。Cクラスにはスポーティーな「アバンギャルド」に対して「エレガンス」が用意されるが、Eクラスにはエレガンスはない。そもそもCクラスより落ち着いたイメージのEクラスでは、わざわざエレガンスを名乗る必要はないという判断だという
E550アバンギャルド。Cクラスのアバンギャルドは、同社スポーツモデルの象徴である大きなスリーポインテッドスターをグリルの中に備えるが、Eクラスにはない。これもEクラスセダンの性格を考慮してのことだと言う
E350アバンギャルドのV型6気筒エンジンE550アバンギャルドのV型8気筒エンジン
後席は分割可倒式トランクルーム上の赤いシールが貼ってあるレバーを引くと後席が倒れる
トランクルーム左側のスペースはモデルによって異なる。写真左はharman/kardonのサウンドシステムを装着したモデル。写真右はE550アバンギャルドのもので、エアサスのタンクが見える。E300はここにはなにもなく、ラゲッジスペースとなる
ラゲッジアンダートレイアンダートレイをめくるとテンパータイヤや工具があるE550アバンギャルドは前後重量配分を考慮し、テンパータイヤの横にバッテリーを積む。ほかのモデルはエンジンルーム内にバッテリーがある
E300のインテリアATの操作はステアリングコラム外側のDIRECT SELECTで。セレクターレバーを下げるとドライブ、上げるとニュートラル、リバース。パーキングは先端のスイッチを押し込む。シフトパドルも備える
E350アバンギャルドのAMGスポーツパッケージ仕様。Dシェイプのステアリングホイール、ステンレスペダル、白いスティッチなどでスポーティーにまとめられるボディーサイズ拡大の恩恵で後席の足下は広い
メーター内のディスプレイは日本語化されている。フォントは非常に見やすいCOMANDコントローラー。右はダイレクトサスペンションの切り替えスイッチ、左はトランスミッションのモード切替スイッチ。COMANDシステムは全車標準装備カーナビは三菱電機製
3ゾーンエアコンも全車標準

 

クーペ、AMG、直噴ガソリンなどが続々登場
 1946年のメルセデス・ベンツ170Vに始まり現代に至る同社のミッドサイズ・サルーンの歴史を振り返るビデオから始まった発表会。続いたのはやはりビデオによるメルセデス・ベンツブランドを擁する独Daimlerのディーター・ツェッチェCEOのメッセージで、「Eクラスはメルセデス・ベンツの中核車種、今年もっとも重要なモデル」と、Eクラスにかける意気込みを表明した。

 続いてメルセデス・ベンツ日本のハンス・テンペル社長が登壇、「Eクラスはメルセデスのアイコン。全世界で1200万台以上、日本で20万台以上を販売し、ビジネスの大きな柱となっている」とやはりEクラスの重要性を強調、「今の市場を変えるのは生半可なことではできないと分かってわかっている」が「Eクラスが厳しい市場の環境に変化をもたらしてくれることを期待する」と述べた。

 今回発表されたのはV型ガソリンエンジンを搭載するセダンのみだが、テンペル社長は「クーペ」を夏に投入し、その後は「E63 AMG」、4気筒直噴ガソリンエンジン搭載モデル、4MATIC(4WDモデル)、クリーンディーゼルエンジン搭載車が続き、来年にはステーションワゴンが登場するとした。

ビデオでメッセージを寄せたツェッチェCEOテンペル社長Eクラスの今後のリリース予定

 

上野副社長

地球900周分のテスト走行を経て
 テンペル社長に続いて登壇したマーケティング担当の上野金太郎副社長は、新型Eクラスのポイントとして「デザイン」「安全性」「快適性」「環境適合性」の4つをあげ、新型Eクラスがアッパーミドルセダンの新たなベンチマークになると宣言した。

 デザインは、フロントからリアへ続くV字型のラインによる「アローシェイプデザイン」と、1950年代のポントン・メルセデスから引用したリアフェンダーを例に「伝統的デザインを踏襲しつつシャープでダイナミックな新世代のセダンを構築した」と述べた。

 安全性については満載されたハイテク安全デバイスとともに、「メルセデスの歴史は安全性の歴史」と、大きなアピールポイントであることを協調。事故現場での検証、独自の30種類以上のクラッシュテスト、72%以上の部分に高張力鋼板を使った軽量で頑丈な車体などをあげた。

 快適性については、ダイレクトステアリングやダイレクトコントロールサスペンションなどのハイテク装備以外にも、高剛性ボディーが不快な振動や騒音を低減していることや、シートの進化、ボディーサイズ拡大による居住性の向上などをあげた。

 環境適合性については、Eクラスに投入された環境技術を「Bule EFFICIENCY」と総称し、駆動ロスの少ない補機類や適宜動作を止めるオルタネーター、Cd値0.25のボディー、転がり抵抗の少ないタイヤなどにより、5~11%燃費が改善されたとした。

 最後に新型Eクラスは、世界のさまざまな地域の、渋滞、サーキット、砂漠、寒冷地などの状況下で、のべ3600万km、地球900周分のテスト走行を行ったと紹介した。

ダッシュボード上のパークトロニックのインジケーター。前後バンパーに障害物が近づくにつれてライトが増え、音が鳴るアテンションアシストレーンキープアシストでステアリングを振動させるバイブレーター
アダプティブハイビームアシストの仕組み。前走車や対向車がいなければハイビーム、いるときはまぶしくないように配光を変える
歩行者がぶつかるとボンネット後端を跳ね上げて、歩行者への衝撃を弱めるアクティブボンネット。写真はダミーをぶつけて動作を実験しているところ
赤外線で夜間に前方の映像をとらえるナイトビューアシストプラス。歩行者を検知する機能もある高張力鋼板を多用した補機類などの改良で燃費を改善
新型EシリーズのラインアップEクラスは人が安らげる空間、ということで「コクーニング・コンセプト」を広告では打ち出す日本仕様のカーナビなどを装備。地デジにも対応する
安全の歴史はメルセデスの歴史新型Eクラスの4つのポイント
さまざまな条件下で3600万kmのテスト走行を行った

 

アテンションアシスト開発を担当したハーブ氏。アテンションアシストのデモの前で

アテンションアシストは単なる居眠り防止にあらず
 新型Eクラスにはアダプティブハイビームアシスト、レーンキーピングアシストといったハイテク安全装備が多数装備されているが、なかでも興味深いのは「アテンションアシスト」だ。

 アテンションアシストはドライバーの状態を車が検知して、疲労していたり注意力散漫になっていたりするときに音とメッセージで警告を発し、事故につながるような事態を防ぐ。ドライバーの顔をカメラで撮影し、目を閉じている状態が続くと警告を発する技術がすでに他社で存在しているが、Eクラスのアテンションアシストは、ドライバーの運転やオーディオをはじめとする装備の操作、走行状態をモニターすることで、ドライバーの状態を検出、解析するのが大きな特長だ。

 「カメラなどの特別なデバイスなしに、ドライバーの状態を検出したかった」とこのシステムの開発を担当したヨッヘン・ハーブ氏は言う。検出に使用するパラメーターは70以上にのぼるが、なかでも大きな役割を果たしているのがステアリングの舵角で、舵角センサーは通常よりも精細に舵角を検出できるものを採用した。

アテンションアシストの警告表示ステアリング操作をはじめ、70以上の項目からドライバーの状態を検出する

 このシステムでは、ドライバーの運転特性をシステムが測定するのに走行開始から約20分間を要する。1度エンジンを切るとそれまでのドライバーの情報はリセットされるので、同じドライバーが再度運転しても、やはり測定に約20分間かかる。

 収集したドライバーの運転特性を保存しておき、同じドライバーが乗ったときにその情報を呼び出せば、再度の測定は不要になりそうなものだが「ドライバーの個人情報を車に記録しておくことは、法的に許されていません」(ハーブ氏)のだそうだ。シートやミラーの調整値を記憶させておく機能は実用化されてすでに長いが、そちらは法に触れないのだろうか。答えは「ドライバーが自分で登録した情報を保存するなら問題ありませんが、車が収集した情報は保存しておけない。私たちも指紋やパーソナルキーに情報を記録しておけないかと考えましたが、運転を初めて20分で眠くなったり疲労するケースはまれだと判断しました」だった。

 発表会や資料では「居眠り防止」と紹介されがちなアテンションアシストだが、ハーブ氏は「単に居眠りを防止する機能ではない」と言う「ヨーロッパでのジャーナリスト向け長距離試乗会で、居眠りをしていないのに警告された例がありました。そのジャーナリストは、運転しながらEクラスのさまざまな装備を操作して試していて、それをシステムが“注意力散漫”と判断したのでした。つまり、アテンションアシストは居眠りだけでなく、ドライバーの意識が運転以外に向きすぎていることも検知するのです」。

 アテンションアシストの開発には世界各国の750人のテスターが参加し、100万km以上を走行したとのことだ。

メルセデス・ベンツの歴代ミディアムクラスが展示された(この展示は26日のみ)。写真の車はメルセデス・ベンツ170V(137/191型、1946~1955年)メルセデス・ベンツ180(W120/121、1953~1962年)。「ポントン(ポンツーン)・メルセデス」と呼ばれた
W110(1961~1968年)。テールフィンを持つ通称「羽ベン」W114/115(1968~1976年)。縦目のベンツ
W123(1975~1985年)。コンパクトメルセデス「190E」が登場するまで、これがメルセデスのエントリーモデルだった今でも愛用者の多いW124(1984~1996年)

(編集部:編集部:田中真一郎)
2009年 5月 27日