NEXCO東日本、地元小学生による上信越道拡幅工事現場の見学会

道路維持車両に乗り込む生徒

2009年5月26日開催
上信越自動車道 信濃町IC/薬師岳トンネル



 NEXCO東日本(東日本高速道路)は5月26日、上信越自動車道 豊田飯山IC(インターチェンジ)~信濃町ICの4車線化を今秋に控え、地元の小学生を対象とした現場見学会を、両ICの中間にある薬師岳トンネルと、信濃町ICで開催した。

 参加するのは、薬師岳トンネルにほど近い、信濃町古間小学校の児童。2、3年生と4~6年生の2つのチームに分け、「トンネル内見学」と「維持管理車両の乗車体験」を交互に行った。

道路維持車両はなぜ黄色いのか?
 Car Watchは4~6年生のチームに同行し、まずは信濃町ICで維持管理車両の乗車体験に参加した。体験できたのは、「除雪兼散水車」「除雪車」「湿塩散布車」「ロータリー除雪車」「スノーローダー」「高速道路パトロールカー」の6台。子供たちは各々興味のある車両に乗り込んだり、各車両を実際に使用している人たちから詳しく説明を聞いたりした。

 除雪兼散水車は、その名前があらわしているとおり、除雪と散水を行う車両。通常時は散水車として利用するが、前面に“スノープラウ”を着けることで除雪も可能になるのだ。散水は下面だけでなく、バルブの切り替えにより側面へも行える。車両上部には“放水銃”が備えられており、これにより、初期火災への対応ができるほか、消防車のバックアップが行えると言う。

除雪兼散水車除雪兼散水車の前部。除雪する場合はここにスノープラウを装着する放水銃で放水しているところ
よく見る散水の光景トンネルの側面放水用のノズルも搭載

 除雪車は、路面に積もった雪を路肩へと寄せるための車両。興味深いのは、走行車線を走行しながら、追越車線を除雪できる“サイドウィング”と呼ばれる除雪機構。普段は車体前面に備えたスノープラウで1車線を除雪するが、サイドウィングにより2車線の除雪が可能だという。また、凍り付き、硬くなった雪は、車体下部に備えた“グレーダー”で取り除く。通常、スノープラウやサイドウィングに採用されている刃の部分(雪を掘り起こす部分)にはウレタンが使われているが、グレーダーには金属が使用されている。

除雪車側面にはサイドウィングと呼ばれる追越車線用の除雪ユニットを搭載底部にはグレーダーと呼ばれる硬い雪(凍った雪)用の除雪ユニットを搭載する
グレーダーの刃に該当する除雪部分は金属製でできているスノープラウやサイドウィングの刃に該当する部分は硬いウレタンが材質になっている

 湿塩散布車は、路面に塩化ナトリウムをまいて、雪が固まらないように“予防”するための車両だ。前面にはスノープラウが装着できるので、そのまま除雪作業を行うことも可能。

湿塩散布車雪が固まらないように、路面の凍結温度を下げるため塩化ナトリウムをコンテナに入れている。ちなみに、塩化ナトリウムが風で飛ばないように湿らせている

 ロータリー除雪車はロータリー部分で高く積もった雪をかき集め、排雪機構から遠くへと飛ばすことができる。

 スノーローダーは、ショベルカーと似た雰囲気の車両だが、前面のスノープラウにより除雪できる。小回りが効くので、PA(パーキングエリア)の駐車場などで使われている。

ロータリー除雪車路面に積もった雪を前面のロータリーの力で吸い込み、排雪口から数メートル先まで飛ばすことができるスノーローダー

 車両体験が終わると質問コーナーがあり、“なぜ道路維持車両は黄色いのか?”といった質問が出た。ちなみにその答えは、「道路維持作業用自動車」の認可を取るための条件が、「車両の塗色は黄色でかつ、白のライン入。黄色回転灯を装備していること」というものだからだそうだ。

高速道路パトロールカー興味津々と見学して回る用意された6台の車両の説明受けているところ

 

薬師岳トンネル。新潟側から撮影。手前が工事中の上りトンネル

工事中のトンネル内で各種実験
 乗車体験を終えると次は工事中のトンネル内の見学だ。バスで一般道を走り、信濃町ICから薬師岳トンネルの工事現場に移動した。4車線化に伴い、薬師岳トンネルは現在使用中のトンネルの隣に、もう1本トンネルを掘っている最中だ。現在のトンネルは上下車線が対面通行になっているが、4車線化されると、現在のトンネルが上り車線(群馬方面行き)、新しいトンネルが下り車線(新潟方面行き)として使われる。

 ここでは「排水性舗装の体験」「避難連絡坑への入坑」「融雪装置の実験」「防火設備の体験」「路面への寄せ書き」を行った。子供達はみなヘルメットとマスクという格好になり、工事中のトンネル内に入って見学がスタートした。

 排水性舗装の体験は、一般的な舗装と高速道路で使われている排水性舗装の違いを知るもので、舗装に水がどれだけ浸透するかを見る。クリアボックスの上にそれぞれの舗装が敷かれ、舗装にジョウロで水をかけると、排水性舗装の方は水をドンドン通す(クリアボックス内に流れる)のに対し、一般的な舗装では水が溜まっていくばかり。高速道路では、当然一般道よりもスピードを出すので、水たまりなども事故につながってしまう。現在ではほとんどの路面で排水性舗装を採用しているそうだ。この舗装は消音効果(だいたい3dB)もあるとのこと。

トンネル内での見学会一般的な道路に利用される舗装と高速道路などで利用される排水性舗装の水捌け実験

 

避難連絡坑(非常口)

 避難連絡坑はいわゆる“非常口”で、薬師岳トンネルの場合、現在のトンネルと新しいトンネル(つまり上下線)をつなぐもの。上りトンネルで事故があれば下りトンネルへ、下りトンネルで事故があれば上りトンネルへ避難できるようになっており、トンネル内に一定の間隔で設けられている。

 工事中の上りトンネルから連絡坑に入ってみると、広く明るい。人が避難に利用するほか、消防車、救急車、パトカーといった緊急車両も通行するためだ。通常は扉で封鎖されているが、その扉にも人用の出入口と車両用の出入口が備えられている。上りトンネルがまだ工事中なので、連絡坑もまだ開通していないが、設けられた小さな穴から下りトンネルを覗き込むことができた。

避難連絡坑の中には、穴を掘っている時の様子をパネルにして展示実際にはトンネルとトンネルを結ぶ避難連絡坑だが、まだ未完成のため開通していない。写真では、奥に設けられた穴から隣接するトンネルを覗くことができた避難連絡坑は車両だけでなく人も利用する。その際は、扉に用意されたより小さなドアをあけて行き来する

 融雪装置とは、舗装の下に設置されているヒートパイプのこと。外部の熱を奪い蒸発する「作業液」と呼ばれる液体をパイプ内に入れてあり、地熱や温泉熱、地下水熱、下水熱といったさまざまな熱エネルギーから雪を溶かすための熱を生み出す。

 融雪装置体験ではこのヒートパイプの構造を、手の熱を使って体験してみようというもの。作業液として代替フロンを入れたパイプを手で握り、手の温度でパイプに接している氷を溶かす実験を行った。手をこすりあわせて熱を作り、パイプを握ると徐々に熱が伝わり、パイプが温かくなる。ちなみにこの融雪用ヒートパイプは一度設置すると、電気代、燃料代といったランニングコストが必要ないので、バス停などのスポット融雪に最適だと言う。

ヒートパイプを模した筒状のガラス装置。液体の入った下部を手で温めると熱を発し、上部が熱くなる仕組みだ。写真では雪の替わりに氷りを用いて実際に溶かしているヒートパイプの構造

 防火設備の体験では、トンネル内の事故車両が発火したと想定して、非常電話から道路管制センターへ状況を説明、消火栓から初期火災消火用ホースを取り出して放水といった一連の流れを見せ、その後、用意されたなぞなぞに答えるというもの。一連の流れがヒントになっていたり、説明が答えになっていたりとアマく作られていると思いきや、中には意表を突いた問題があった。たとえば、「道路管制センターはいったいどこにあるのでしょうか」の答えの選択肢は「埼玉県」「新潟県」「愛知県」の3つ。ほとんどの子供達は隣県ともあって新潟県と答えたが、正解は埼玉県。このほかにも、「トンネル内で、火災が発生した場合、トンネル入り口情報板はどのような表示がされるのでしょうか」という問題などが出題された(正解は「進入禁止 火災」)。

 一通りのトンネル内見学が終わると、記念としてトンネル内の路面に寄せ書きを書くというイベントが行われた。子供達は自分の名前や好きなキャラクターを描き、最後に寄せ書きを前にして記念撮影を行ってすべての内容が終了した。

発火する事故車両を発見し、非常電話から道路管制センターへ状況の説明を行っているという想定のシーン車両に放水しているところ消火栓から初期火災消火用ホースを取り出している
最後に行われたなぞなぞ大会寄せ書きを書いているところ。自分の名前や動物などバラエティに富んだ寄せ書きが路面に描かれた寄せ書き

(飯塚 直)
2009年 5月 28日