首都高、タンクローリー火災事故のあった5号池袋線を全面開通 復旧までの課程や対策などを説明。工事費は約20億円に |
全面開通間近の5号池袋線の模様 |
首都高速道路(首都高)は10月14日、5号池袋線が同日12時に全面開通したことを発表し、都内にて記者会見を実施した。
5号池袋線は、8月3日に熊野町ジャンクション(JCT)で発生したタンクローリー火災事故によって、2層構造となっている上層部の床面にひび割れ、床面を支える主桁が熱で変形、路面が沈下するなどの損傷を受けたほか、下層部にも吸音板のアルミ材が火災によって溶け落ち、舗装面に付着するなどした。このため、事故直後は5号池袋線の板橋JCT~北池袋出入口が通行止めとなったほか、熊野町JCTで5号池袋線に合流している中央環状線(C2)の山手トンネルも板橋JCT~西新宿JCTが通行止めとなっていた。
タンクローリー火災事故発生直後の状況 |
鎮火直後の状況 |
首都高では数回に渡って復旧工事を実施し、8月9日の5号池袋線の暫定1車線開通を皮切りに順次事故区間を開通させ、当初の予定より1時間早い10月14日12時に全面開通となった。段階的に開通した経緯については、通行止めによって首都高のみではなく周辺一般道へも渋滞が発生するなどの影響が出ているため、可能な限り段階的に開通させたとしている。
当初11月としていた全面開通予定が早まった要因については、社内体制では情報共有によって首都高グループ各社による緊急応急対策がスムーズに機能した、緊急コールセンターの設置、常時監視による早期発見と二次被害の回避、などとしている。復旧工事では、鋼板の製造、橋桁組立、架橋を一貫して行える業者の協力や、24時間体制による昼夜連続作業実施、工程短縮技術が現場から発案され実行された、といった事例を工期短縮の要因として挙げている。このほか、警察庁や関係する道路管理者、利用者や周辺住民らの協力があったためともしている。
なお、復旧工事については全面開通後も上層裏面の吸音板設置や、下層橋桁の補強などを実施する予定で、2008年度内にはすべての工事を完了させる見込みだ。また、社団法人全日本トラック協会に安全運転の啓蒙活動の要請や、社団法人日本自動車工業界に横転防止安全装置の普及拡大の要請を行ったほか、カラー舗装や注意喚起板の増設といった安全対策の充実、ITSの活用などの安全性向上技術の検討を実施するとしている。
事故の影響については、首都高東京線の渋滞率が約50%増加。4号新宿線の高井戸出入口から、6号三郷線の三郷出入口までの所要時間も61分から131分に増加したという。なお、山手トンネルが開通した後は、渋滞量が約35%減少、高井戸出入口~三郷出入口の所要時間も事故前とほぼ同程度に回復したという。乗継の迂回路や開通見込みなど、利用者からの問い合わせは累計で約2万6000件にのぼり、特に5号池袋線が開通した8月9日には1日で1437件の問い合わせがあったという。
事故による損失については、復旧工事全体で約20億円の工事費が発生したほか、通行料金収入では8月~9月において前年同期比で約25億円の減収が見られたという。首都高では、より正確な復旧工事費、景気状況やガソリン高騰、天候などの影響を差し引いた減収額を2008年度内には精査し、原因者となるタンクローリーを保有する運送業者に請求する予定だとしている。
5号池袋線の損傷状況 |
炎上したタンクローリーの搬出の模様 |
会見に出席した首都高速株式会社の佐々木克巳代表取締役社長 |
事故については「首都高としてもかつてない大事故で、早期復旧に向けて昼夜検討を行ってきた」としたうえで、「引き続き運転者の方々には安全運転を留意していただきたい。また、首都高も含めて都心の道路ネットワークが脆弱であることも明かとなり、道路ネットワークの拡張についてはもっと真剣に考えなくてはいけないだろう」と感想を述べた。
このほか、景気後退やガソリン高騰を起因とする利用者の低減、加えて今回の事故など収益減少の要因が重なっていることについて「今回の事故も含めて料金収入への影響も大きく、首都高の経営に与える影響は小さくないだろう。事故による損失の請求はきちっと行うが、景気が悪い中でも利用者が増加するよう、これまで以上の経営努力を行う必要があるだろう」とコメントした。
■5号池袋線復旧工事の10ステップ
会見会場では、5号池袋線での事故発生から全面開通までの復旧工事の模様が10ステップの課程に分けて説明された |
■URL
首都高速株式会社
http://www.shutoko.jp/
5号池袋線情報
http://www.shutoko.jp/route5/index.html
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【9月25日】首都高、10月中旬に5号池袋線を全面開通
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20080925_37806.html
(編集部:大久保有規彦)
2008年10月14日