首都高、大橋JCT工事に用いたシールド機公開
大橋シールドトンネルが貫通

10月23日開催



中央環状新宿線大橋JCTの説明図。緑色のループ部分が大橋JCTで、オレンジ色が3号渋谷線と接続する高架道路。右側の水色が大橋シールドトンネルとなる
  首都高速道路は、現在工事を進めている首都高速中央環状新宿線の大橋シールドトンネルが上下線とも貫通したこととあわせて、同工事に用いたシールド機を10月23日に公開した。

松見坂立杭に到達したシールド機
  大橋シールドトンネルは首都高速4号新宿線と3号渋谷線を結ぶ首都高速中央環状新宿線の一部となるもので、総延長431.7m。山手通りと淡島通りの交差する松見坂交差点付近の松見坂立杭から、東急田園都市線池尻大橋駅にほど近い大橋JCT(ジャンクション)と接続する大橋立杭を結ぶトンネル。大橋JCTおよび、大橋シールドトンネルはCar Watchの創刊日である9月24日の記事(「大橋ジャンクション」の建設現場を公開する「おとなの社会見学」)でもお届けしているが、今回公開されたのはその工事に用いられたシールド機となる(前回は、シールド機の後部しか見られなかった)。

上方から見下ろした大橋立杭。見えているのは上層部のトンネル。扇状のブロックは、シールドトンネルの外壁となるセグメントだ。このセグメントを張り巡らせ、その圧力を受けつつシールド機は前方に進んでいく
  今回の公開は、松見坂立杭から入ったシールド機が大橋シールドトンネルの上段(内回り、4号新宿線から3号渋谷線方向)を大橋立杭まで掘り終え、そこで転回。さらに下段(外回り、3号渋谷線から4号新宿線方向)を松見坂立杭まで掘り終え、シールド機による工事が終わることを受けてのもの。この後役目の終わった直径12.94m、重量約2000tのシールド機は解体され、中の機械部分は再利用、表の刃の部分や外装などはリサイクルされ100%のリサイクル率を達成するという。

  シールド機の見学のためには、前回と同様大橋立杭から入り松見坂立杭まで歩いていくのだが、トンネル内に耐火パネルが貼られているなどここ1カ月でずいぶん工事が進んだ印象を受けた。松見坂立杭に到着すると下段トンネルから顔を出しているシールド機が見られた。とても巨大で、この後行われる解体作業もずいぶん工数がかかるものと思われる。

前回の取材から1カ月経ち、セグメントの表面に耐火パネルが取り付けられた大橋シールドトンネル。一部耐火パネルが取り付けられていないところもあるが、これはまわりから耐火パネルを取り付けていき、最終的にトンネル上方で調整するためとのこと耐火パネルのアップ。トンネル内壁は、この耐火パネルを取り付け終われば作業がほぼ終わりとのこと。後は、トンネル内壁に白いラインを引く塗装工程があるそうだ上層トンネルの下部ではまだまだ工事中。路面の位置は上部に見える踏み板から1m~2mくらい下になる

松見坂立杭の下層トンネル部から顔を出すシールド機。上層トンネルと下層トンネルの位置関係が分かる人の大きさと比べると、直径12.94mという数字の大きさが実感できる。シールド機の回転方向は時計回り、回転数は1分に1回転とのことシールド機がこの松見坂立杭まで戻ってきたことで、大橋シールドトンネルは貫通したことになる。この後このシールド機は解体されこの松見坂立杭から地上に運び出される
シールド機の中央部分。シールド機から出っ張っているものがビットと呼ばれる刃である。このビットで掘削していくビットは、およそ人の手のひらほどの大きさ。それほど鋭利な角度とはなっていないシールド機には数多くの隙間が空いているが、これは上方から泥水を噴出し、下方から削った土とともに回収するため。泥水は油のような役目を持っている
ビットには大きく分けて2種類のものが付いている。下の板状のビットが先行ビットで溝を作り、上方のメインビットでその土を剥いでいく。この土地の掘削地盤に合わせて設計されている板状の先行ビット土を引っ掻くのに適した形状を持つメインビット
シールド機の側面部。結構グリスが付いていたが、これは後方からの止水も兼ねてのものということらしい松見坂立杭下方から上方を望む。地面は遙か上だシールド機近くには、完成時の写真もパネル展示されていた。竣工当時は白と青の鮮やかなカラーだったが、現在はさすがに削れてしまい金属面むき出しの迫力ある姿

内壁の工事や3号渋谷線への接続準備が進む大橋JCT
  大橋シールド機の公開の後は大橋JCT見学へ。あれから1カ月が経ち、JCT内の壁面工事や3号渋谷線へ延ばすための準備も進んでいるようだった。大橋JCTから3号渋谷線への接続はベント工法と呼ばれる架設工法が使われるようで、JCT上部にはすでにその基部が設置されていた。

今回公開された大橋JCT完成スケッチ。屋上部に階段状の公園らしきものが見受けられる周辺のマンションを含めたイメージ図。目黒川沿いに桜が咲き、説明の中でも周囲の景観に配慮したJCTであることが強調されていた屋上から撮影した大橋JCT周辺の景観。ループ状になっているのがお分かりだろうか。奥に見える高架が3号渋谷線

  最後に大橋JCTの屋上に案内されたが、ここは以前と変わらず。担当者によると、この屋上部分の工事は最後のほうになるそうで、緑化公園などのさまざまな案は出ているがまだ決定していないとのこと。大橋JCTの完成日時も現時点では2009年度(2010年3月末まで)としか発表されていないが、環状線(C1)の渋滞の減少も見込まれているだけにその完成が待ち遠しい。

大橋JCT内部の下層車線。前回の記事と比べてもらえば分かるが壁面の化粧が始まっている災害対応施設の配置も指示されており、設置が近いことがうかがえるこれがベントと呼ばれる架橋。上層車線を3号渋谷線方向に延ばしていく工事のため、下層車線部に設置されていた

27階建てのマンション「プリズムタワー」。その手前は建設中の大橋JCTの一部。1カ月でずいぶん進んだ大橋JCTの屋上部は、1カ月前と同じくとくに手が入れられてはいないようだ。デザインなどもこれから決定するとのこと取材途中で見かけた「クアトロサイドカッター機(CSM工法)」。大橋JCTの工事にあたって間組から提案があり、それを首都高が採用したもの。固い地盤でも開削でき、またその開削面積も小さくすることで、周辺環境への影響が抑えられる工法。そのキーとなるのがこのクアトロサイドカッター機。高さは8575mmにも達する

 

URL
首都高速道路株式会社
http://www.shutoko.jp/
首都高速道路中央環状線
http://www.c2info.jp/index.html
大橋ジャンクション 
http://www.c2info.jp/junction/ohashi/ohashi.htm
首都高の技術、つくる技術|クアトロサイドカッター機(CSM工法)
http://tech-shutoko.sakura.ne.jp/create/csm3.html
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【2008年9月24日】「大橋ジャンクション」の建設現場を公開する「おとなの社会見学」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20080924_37784.html

(編集部:谷川 潔)
2008年10月23日