首都高のETCワンストップサービスを使ってみた
安くて手軽なETC取り付け手段

 2008年10月現在で利用率が75%弱に達したETC(Electronic Toll Collection System:電子料金徴収システム。利用率は国土交通省による)。ETC利用者のみに適用される割引が多数用意されているほか、現在、政府・与党が検討している高速道路料金終日半額策も、ETCの利用が前提となっている。ETCを利用するには、車載器の購入と取り付けという負担が発生するものの、料金所でストップせずにすむ利便性と、割引による経済性を考えれば、導入しても損はないといえるだろう。

 今乗っているクルマの車歴が13年、次の車検まであと1年。違うクルマへの乗り換えを検討中の筆者は、次のクルマの購入と同時にETCを導入するつもりでいたのだが、Car Watch編集部に来てからは有料道路の利用が増えたこと、料金所でクルマを停めるのにうんざりしてきたことなどから、今乗ってるクルマにETCを搭載することにした。

すぐにETCを使えるようになる「ワンストップサービス」
 ETCを利用するには、「ETCカード」「ETC車載器の購入」「ETC車載器のセットアップ」が必要になる。

 ETCカードはクレジットカードと紐付けられたICチップ入りのカードで、車載器に挿入して利用する。料金の請求先(つまりクレジットカードの引き落とし口座)を特定するものだ。

 車載器は、料金所にあるETCレーンのアンテナと交信して、ETCカードに通行料を課金するための機械だ。ご存じのようにほとんど有料道路の料金は、小型車、大型車、トラックなどの車種によって異なるから、車載器は「○○IC(インターチェンジ)からこの道路に入った」「この車は小型車」という情報をETCレーンのアンテナに送る必要がある。したがって、車載器は搭載されるクルマの車種を知っている必要がある。車載器をクルマに搭載すると同時に、車種を覚えこませる作業が「セットアップ」だ。

ETC車載器(デンソーDIU-9200)ETCカード

 通常は、自動車用品店やディーラーで車載器を購入し、セットアップしてもらう(クルマへの装着は、用品店やディーラーでしてもらうこともできるし、自分でやってもよい)。それとは別に、ETCカードは、自分ですでに持っているクレジットカードの会社に発行してもらうなり、新たにクレジットカードを作って、ETCカードも同時に発行してもらう必要がある。

 これらの作業、つまり「ETCカードの発行」「車載器の購入」「ETCのセットアップと取り付け」をいっぺんに、即時にすませられるのが「ワンストップサービス」だ。短気で、細かい作業が苦手な筆者は、これを利用することにした。

 ワンストップサービスは、自動車用品店のほか、財団法人首都高速道路協会が大黒PA(パーキングエリア)、用賀、さいたま新都心の3カ所で行っている。同協会は、道路の緑化や高架下の土地の有効利用、ETC普及など、首都高速道路の利便性向上をめざす団体で、ワンストップサービスはETC普及活動の一環ということになる。

 この首都高速のサービスでは、「首都高カード」というクレジットカードを作り、さらにこのカードでワンストップサービスの料金も払えば、車載器の価格(取り付け料込み)が安くなるという特典がある。

 価格が安いこと、大黒PAが近所にあること、「ドライブの休憩中にETCの取付けOK!」というコンセプトが面白かったことから、これを選択してみた。

2時間弱でETCユーザーに
 大黒PAのワンストップサービスは、まさしく大黒PAの中で行われている。大黒PAにクルマを入れるにはもちろん、通行料を払って首都高速道路に乗り入れる必要がある。ちなみに用賀会場とさいたま新都心会場は一般道でアクセスするようになっている。

 大黒PAに入ったら、いったんクルマを止めて、本館(レストランなどが入っている一番大きな建物)の1階にある、受付に行く。ここでまず聞かれるのが車種で、取り付け可能な車種かどうかを判断される(筆者はここで一つ問題が起きたのだが、これは後述する)。このとき、車検証を持って行くとよい。

 

首都高速道路 大黒PA本館に入ってすぐのところに、ワンストップサービスの受付がある

 取り付け可能であれば、まずは隣の窓口で首都高カードとETCカードを作る。これは通常のクレジットカードのスピード発行と同じ手続きで、申込書を書いてから、カードの審査に30分ほどかかる。引き落とし口座の指定に、口座の銀行印が必要だが、なくても後日郵送で対応できるので問題ない。

 カードの審査が通ったら、ETCカードと仮のクレジットカードが発行される。これをワンストップサービスの窓口に持って行って、取り付ける車載器を選んで購入し、セットアップを申し込む。車載器はアンテナ一体型の三菱電機「EP-538BD」とパナソニック「CY-ET807D」、アンテナ分離型の三菱重工「MOBE-500」とデンソー「DIU-9200」から選べる。機種によって音声案内の有無やカラーバリエーション、価格などの違いがあるので、よく説明を聞いて選ぼう。

 ちなみに価格は、前述のように首都高カードを作って決済すれば、具体的にはアンテナ一体型の2機種が1万1000円から5800円に、アンテナ分離型の2機種が1万6000円から9800円に、ほぼ半額になる。このほか車種によって追加費用が必要になる場合もある。輸入車は2100円~の追加費用が必要だ。筆者は輸入車にデンソーの機種を取り付けたので、9800円に2100円の追加で、合計1万1900円となった。

 取り付けとセットアップの作業は、大黒PA内の「ガレージ」と呼ばれる場所で行うので、クルマをガレージに移動する。ここで、必要であれば車載器の取付位置などを作業員の方と相談する。取り付け作業自体は30分もかからないが、1度に作業できる台数に限りがあるので、申し込みが多ければ1時間、2時間と待つことになる。

 取り付けが完了したら、ETC車載器の取扱(カードの抜きさしなど)について5分ほど説明があって、これで終了である。発行されたETCカードを車載器にさしておけば、このままETCレーンを利用できる。

 筆者は幸いタイミングがよかったらしく、待ち時間なしで取り付け作業に入ることができ、ワンストップサービスの申込から取り付け終了まで、1時間45分ほどですんだ。取り付け作業が30分、カードの審査が30分、残りの45分間はフロントガラスが電波を通すかどうかの検査(すぐに終わる)と、申込書への記入や、各種説明を受けた時間である。クレジットカードとETCシステムの両方について書類を書いたり、説明を受けたりする必要があるので、これが一番時間を取る。

 

仮クレジットカード(左)とETCカード本館から見た大黒PA。ガレージは中央奥の茶色の建物
ガレージ。2台の車が取り付け作業中だったETC車載器の取り付け作業
 

車種によっては取り付けられない
 ところで筆者のクルマはシトロエンのエグザンティアという輸入車なのだが、首都高速道路のワンストップサービスでは、「ETC車載器取り付け不可車種」に分類されている。シトロエン以外でも、一部の車種はフロントガラスが電波を通さない(車載器がETCレーンのアンテナと交信できない)などの理由により、車載器を取り付けることができないのだ。

 実際には、エグザンティアのフロントガラスは電波を通すし、車載器の設置や電源も問題がないので、車載器の取り付けは可能だ。実際に取り付けているエグザンティアユーザーもたくさんいる。しかし、首都高速道路協会としてはトラブルの可能性があるクルマへの取り付けはしないことになっている。

 また、ワンストップサービスでの取付作業は、複数の取付業者が請け負って交代で行っているのだが、業者によっては輸入車の経験が少なく、取り付けられないという事情もあるようだ。ワンストップサービスが使えないなら、ディーラーやほかの業者でのETC取り付けを依頼することになる。

 こうしたクルマにワンストップサービスでどうしても取り付けたいという場合は、

 

  • ディーラー等に車載器の取付の可否を確認し
  • ガレージで検査機によりフロントガラスが電波を通すかどうかを確認する

必要がある。さらに、ETCがうまく動作しない(ETCレーンのゲートが開かない)可能性があり、もしそうなっても首都高速道路協会に責任を問わないという念書にサインする必要がある。

 筆者が行ったときは幸い、作業員の方が輸入車への取付経験が豊富だったので、取り付けることができたが、違う業者が入っていたら、だめだったかもしれない。国産車でも取り付け不可の車種があるので、首都高速道路のETCワンストップサービスのWebページにある取り付け不可車種の一覧で、事前に確認しておくとよいだろう。また、一覧に載っていなくても、検査機で電波が通らないと判定されることもあるので、注意したい。

 

ETCの動作を確認する。作業員がかざしているのが検査機で、ETCレーンのアンテナの役割を果たす。これと車載器がフロントガラス越しに交信できるかどうかをチェックするわけだETC車載器の検査機
車載器本体は運転席の膝のあたりに取り付けてもらった車載器のアンテナ
 

注意点もあるが安くて簡単
 というわけで、ワンストップサービスでは安価かつ手軽にETCを搭載できる。

 ただし、混雑していれば1時間、2時間と待つことになる。連休の前の土日は特に混むそうだ。筆者がサービスを利用した10月25日は、11月1日~3日の3連休を翌週に控えたまさしく混雑日で、実際混雑していた。筆者があまり待たずに済んだのは、偶然に過ぎない。あまり時間がない、という向きは、セットアップだけしてもらって車載器は近所の提携取付店や自分で取り付ける「お持ち帰りサービス」を使うといいだろう。これなら最短40分で済む。

 また、取り付け車種に制限があることにも注意しておきたい。問題がありそうな車種のユーザーは、ワンストップサービス以外の取付手段も検討しておいたほうがよいだろう。

 思い立ったらすぐにETCを取り付けられ、すぐに使えるようになるワンストップサービスは、筆者のようなものぐさで計画性のない人間にとっては非常にありがたいサービスだ。価格の安さも魅力的なので、ETC取り付けを予定されている方は大いに検討に値するだろう。

 

URL
ETCワンストップサービス
http://www.shutoko.jp/etc/guide/onestop.html
取り付け不可車種一覧(PDF)
http://www.shutoko-card.jp/pdf/impropriety.pdf
首都高速道路協会
http://www.mexas.or.jp/
ETC総合情報ポータルサイト
http://www.go-etc.jp/
ETCマイレージサービス
http://www.smile-etc.jp/

(編集部:田中真一郎)
2008年10月28日