2008年グッドデザイン大賞、iQがFCXクラリティとの対決を制す |
日本産業デザイン振興会は11月6日、「2008年度グッドデザイン大賞」の表彰式を都内で開催した。
優秀なデザインを持つ工業製品やサービスなどを表彰するもので、3000を超える応募の中から1067の製品等に、約70名で構成される審査委員会により賞が与えられる。大賞は、委員会が選出した7つの候補の中から、受賞者と審査委員の投票によって選ばれる。ただし、1位と2位の得票数の差が100票未満の場合は決選投票となる。
今年の大賞候補は、トヨタ自動車「iQ」、無印良品「窓の家」、三菱重工「オフセット枚葉印刷機 DIAMOND300シリーズ」、イトーキ「LANシート」、リコー「GR DIGITAL II」、ソニーコンピュータエンタテインメント「PALY STATION向けアプリケーションでのFolding@homeプロジェクト協力」、ホンダ「FCXクラリティ」。さまざまなジャンルの製品の中に、環境志向の自動車が2台含まれた。
iQ | FCXクラリティ | クラリティのトランク |
クラリティのメータークラスター。中央の青い球が水素燃料の状況を表す | 浮遊感を演出したというクラリティのコックピット | クラリティの後席 |
投票前には7つの候補のデザイナーらが、投票者向けにプレゼンテーションを行った。トヨタからは同社クリエイティブスタジオ グループ長の須賀厚一氏が、ホンダからは四輪開発センター デザイン開発室の長谷川勝氏が登壇。どちらも「従来のクラス分けに縛られない新しいカテゴリーの自動車」「環境性能と楽しさの両立」をデザインのメッセージとして挙げていたのが印象的だった。
投票の結果、1位がiQ、2位がFCXクラリティとなったが、大きなどよめきとともに発表された得票数は281と182。その得票差99と、規定ギリギリで決選投票にもつれ込んだ。
再度の投票結果はiQが561、FCXクラリティが530。トヨタiQが大賞に輝いた。
表彰式でiQの関係者として登壇したiQのチープエンジニアである中嶋裕樹氏は「当社のトップの前にいても“緊張していない”とよく怒られるのだが、決選投票では、会社生活で初めてドキドキした。iQの開発で何が大変だったかとよく聞かれるが、一番苦労したのはまさしくデザイン。(数理モデルを採用し)自然界にヒントを得て、その造形美をクルマに落とし込んだ。結局、エココンシャスなクルマを作る我々が、自然界に助けられたということだと思う」と述べた。
プレゼンテーションを担当した須賀氏は「iQはまったく新しいサイズのクルマで、社内でも“初めて見る形”としてびっくりされることが多かった。これからiQが街を走りだせば、皆さんに今まで見たことがない形と思っていただけると思う。“見たことがない形だけど、グッドデザイン大賞になるということは、これはいいデザインなんだ”と思ってもらえる後押しになる。栄誉あると同時にたいへんありがたい賞」とした。
デザイン部長の丸谷勝己氏は、「iQは、クルマのサイズの概念をまったく変えた、パッケージ革命と言えるまったく新しいタイプの乗用車。デザイン部はその想いを皆様に伝えられるようにデザインにチャレンジした。デザインを通じてワクワクする未来を感じていただくのが我々の仕事であり、それを認めていただけたのは大変ありがたい。クルマにとって環境は逆風だが、iQが新しい市場を創造したり活性化したりということにつながってくれればと期待している。10年前にプリウスでパワートレーン、今回はiQでパッケージを新たにした。ここにとどまらず、次の10年を見据えて新しいデザインにもう1度チャレンジしていきたい」と述べた。
■URL
財団法人日本産業デザイン振興会
http://www.jidpo.or.jp/
ニュースリリース
http://www.g-mark.org/library/2008/award-best15.html
(編集部:田中真一郎)
2008年11月6日