「Microsoft Car Navigation Day 2008」リポート
マイクロソフトの車載情報端末向け製品の技術者セミナーが開催

セミナー会場に展示されたMicrosoft Auto搭載のデモ機
11月27日開催

 マイクロソフトは11月27日、本社にて「Microsoft Car Navigation Day 2008」と題したセミナーを開催した。本セミナーでは、マイクロソフトが持つ車載情報端末向けOSの現状と今後が紹介され、技術者を中心とした受講者が参加していた。このリポートでは午前に開催されたセミナーの内容を紹介していく。

 マイクロソフトの車載情報端末向け製品というと、OSの「Windows Automotive」が現在では多くのカーナビのプラットフォームとして採用されている。起動時にマイクロソフトのロゴやWindowsのロゴが出ることもないので、あまり知られていないが、すでに40%以上のカーナビで採用されているとマイクロソフト ディベロップメント(マイクロソフトの開発部門会社)ITS戦略統括部の平野氏は言う。

 今回のセミナーでは、そのWindows Automotiveに加え、フィアットの「Blue&Me」やフォードの「Sync」に採用されている「Microsoft Auto」も紹介された。このMicrosoft Autoは主にメディア接続を担うプラットフォーム。Bluetooth接続のハンズフリー携帯電話や音声認識による操作、そしてiPodやZune(マイクロソフトが米国で発売している携帯音楽プレーヤー)などの接続機能を提供する。

マイクロソフト ディベロップメント株式会社ITS戦略統括部統括部長の平野元幹氏。マイクロソフト ディベロップメントは、主に日本での開発を担う会社でマイクロソフト製品の日本語化に伴う作業や新技術の導入支援などを行っている
 最初に登壇したITS戦略統括部の平野氏は、Windows AutomotiveとMicrosoft Autoの現状について紹介。現在車載情報端末向けに提供されている2つのプラットフォームが、2009年中にリリースされる新OS「Motegi(開発コードネーム、サーキットの名前から付けられている)」によって統合されると紹介した。

 Windows Automotiveはその段階で名前が消滅し、Microsoft Autoという名称に統合されるかもとしながら、まだ製品名が決まっていないため、あえてコードネームを明かしての進行となった。

 Motegiでは、Windows Automotiveの持つ機能とMicrosoft Autoが持つ機能が統合され、内部のWebブラウザエンジンもInternet Explorer 7ベースのものになると言う。また提供されるAUIF(Automotive User Interface)も、2008年9月にリリースされたWindows Automotive 5.5に搭載されているAUIF(開発コードネームRAMUNE)ベースのものではなく、現在マイクロソフトが進めているRIA(Rich Internet Application)向けプラットフォーム「Microsoft Silverlight」ベースのものとなる。そのためRAMUNEについては、本格的な開発に使うものではなくTechnical Previewと位置付けられている。

 ただ、どちらもXAML(Extensible Application Markup Language)ベースのものであることには変わりなく、画面UI(User Interface)の開発には、マイクロソフトが発売している「Microsoft Expression Blend」を使用する。HMI(Human Interface)も3Dのリッチなものを定義することができ、容易な開発が可能であるとした。

平野氏のプレゼンテーションで用いられたスライド

マイクロソフト株式会社OEMエンベデッド本部オートモーティブビジネスユニット シニアアカウントマネージャの清水尚利氏
 次に登壇したマイクロソフトの清水尚利氏はMicrosoft Autoについて紹介。先述したフィアットのBlue&MeやフォードのSyncの市場評価が高いとし、とくにSyncについては搭載されている車は2倍早く売れていくとするフォードの意見を紹介した。

 また、11月14日に出荷が開始されたMicrosoft Auto 3.1では、マイクロソフトの提供する検索サービス「Live Search」への接続も可能になっているとし、Microsoft Auto搭載機からのインターネット検索が容易に行えるよう機能追加されているようだ。

 このセッションでは、実際にMicrosoft Auto搭載機のデモが行われ、Zuneをつないでの認識、iPodをつないでの認識、音声操作(英語)が披露された。

清水氏のプレゼンテーションで用いられたスライド。Microsoft Auto:Media CoreのiPodの箇所に書かれている、1ワイヤー、2ワイヤーとは、1ワイヤーが1本のUSBケーブルでの接続、2ワイヤーがコントロールにUSBケーブルを、音声出力にステレオケーブルをという意味

マイクロソフト ディベロップメント株式会社ITS戦略統括部の藤井義也氏
 Windows Automotive 5.5の持つUIについての紹介も行われ、マイクロソフト ディベロップメント ITS戦略統括部の藤井義也氏がデモを交えてその紹介を行った。

 このデモにおいては、3Dの部分については拡張モジュールを書いており、拡張性の高い開発が可能なことも、開発環境の整ったマイクロソフトの製品を使うメリットだろう。実際のデモ映像はメニューが3Dで快適に動き、メインメニューがらサブメニューへ、そして履歴リストからその詳細表示へとなめらかに画面が遷移する様子が映し出された。


藤井氏のプレゼンテーションで用いられたスライドと、紹介された3Dメニュー。デモでは非常になめらかな画面遷移が行われていた。メインメニューの背景もDVD-Videoの動画メニューのように背景が流れ、鳥が飛んでいた

 最後のプレゼンテーションは、同じくITS戦略統括部の五嶋健治氏。Windows Automotive 5.5の主要機能である「Ready Guard」を紹介した。

マイクロソフト ディベロップメント株式会社ITS戦略統括部の五嶋健治氏
 このReady Guardは、最初にReady Guard OS(Tiny Windows CEコア)が起動し、その後Main OS(通常のWindows CEコア)が立ち上がるというもの。Ready Guard OSで静的領域(スタティック領域)を構造体として確保し、その後Main OSへその構造体を引き継いで起動する。こうすることで、初期の起動時間を短縮でき高速に起動できると言う。Ready Guard OSでも起動時のスプラッシュ画面表示やバックビューモニタ表示などのタスクを実行させることは可能なので、ユーザーにそれと意識させることなくMain OSの再起動も可能であるとしていた。 


五嶋氏のプレゼンテーションで用いられたスライド。Ready Guardセッションに一番時間が割かれており、Windows Automotive 5.5の主要機能としてアピールしていた
Ready Guardのデモ。左がコールドブート時(電源断からの起動)、右がウォームブート時(通電中の再起動)。コールドブート時の起動時間が241ms、ウォームブート時の起動時が205msとどちらも高速。またラストモードというメモリー機能も備えるので、最後に聞いた曲名などからの再開もできていた

 そのほか、会場にはルネサス テクノロジのSH7770を搭載したデモキットが用意され、Ready Guard動作の実際や、3D UIの実際の動きを確かめることができるようになっていた。

Ready Guardの動きを実際に確かめられるデモ機デモ機のマイコンボード。ルネサス テクノロジのSH7770を搭載こちらは、3D UIの動きを実感できるデモ機。確かになめらかに動いており、手前のダイヤルで操作できる。また、ダイヤルに対してフォースフィードバックがかけられており、メニューの端まで行くとダイヤルが重たくなるような制御が行われていた

 

 

 

URL
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/ja/jp/
Microsoft Windows Automotive
http://www.microsoft.com/japan/auto/default.mspx
Microsoft Auto
http://www.microsoft.com/japan/auto/ma.mspx

(編集部:谷川 潔)
2008年11月27日