ホンダ、業績予想を下方修正
NSX後継車やアキュラ国内導入を中止し、低燃費車を強化

本田技研工業株式会社の福井威夫取締役社長



  本田技研工業は12月17日、東京都青山の本社にて福井威夫取締役社長による会見を実施。2008年の実績見通しや業績予想の修正などを発表した。

  福井社長は、2008年の同社について「ホンダにとって、先進の環境技術を、燃料電池車「FCXクラリティ」や新型ハイブリッドカー「インサイト」などで具現化し、お披露目できた1年だった」とコメント。しかしながら、「9月の金融危機に端を発した自動車産業の急激な変化に、短期間でさまざまな対応を余儀なくされている」と厳しい現状を語った。

  この上で、「11月以降世界中で急速に進んだ市場環境の大幅な悪化と為替状況を反映した」として、10月28日に発表した通期業績予想の下方修正を発表した。同社の業績予想修正は今期3回目。修正後の業績予想は、売上高が前期比13.4%減の10兆4,000億円、営業利益が同81.1%減の1800億円、純利益が同69.2%減の1850億円。2008年の実績見通しは、4輪車が前年とほぼ同様の377万台、2輪車が前年比12%増の1512万台。汎用製品が同7%減の567万台としている。

 4輪車の地域別実績では、北米は「金融危機以降の市場の急速な縮小の影響による」として前年比8%減の143万台、南米は「2008年後半からローンに貸し渋りによる影響で悪化がみられる」としながらも同34%増の15.7万台、欧州は「金融危機が成長国の東欧やロシアを巻き込んでいる」として同1%増の38万台、アジアは「新型シティが牽引するも、世界経済の影響が出始めている」として同7%増の36.7万台、中国は同12%増の47.8万台、日本は前年並の62.2万台としている。

2008年度通期の連結業績見通し事業別の売上台数事業別の世界販売台数見通し
地域別4輪車の販売台数見通し

  今後の事業展開については、「グローバルな生産体制の進化」「先進環境技術の進化」「二輪事業のさらなる進化」の3点の課題に長期的視野に立って取り組み、将来の成長に備えるとしている。このため、経営資源を必要な領域に集中すべく投資や開発案件を一から見直し、市場の変化を注視して取るべきアクションを見極めながらも素早く取り組むとしている。なお、このような認識から役員賞与を今期の業績に合わせて見直すほか、役員報酬も月額報酬を2009年1月より一律で1割削減すると言う。

  今後の具体的な取り組みについては、生産面では、2010年に稼働開始予定であった寄居工場の稼働開始時期を1年以上延期。また、軽自動車を生産する八千代工業四日市製作所の新工場についても2010年に予定している本格稼働を1年強延期するとしている。なお、小川エンジン工場は予定通り2009年7月から段階的に生産を立ち上げ、当初はエンジンの鋳造から加工までのプロセスを担当し、エンジン部品を国内外の生産拠点に供給するとしている。このほか、2009年1月から現在鈴鹿製作所で生産している「ストリーム」を埼玉製作所に移管し、2009年春からは米国、カナダ向け「フィット」を埼玉製作所でも生産開始。

  海外事業では、トルコおよびインドで計画していた生産能力拡大時期を、市場状況を鑑みて延期するとしている。販売面では、軽自動車や小型車市場での販売網強化に取り組む一方で、2010年を目処に国内導入予定であった高級車ブランド「アキュラ」については計画を白紙に戻すとした。また、研究・開発については12月5日に発表したF1撤退に加えて、V10エンジンを搭載した「NSX」の後継車の開発中止、2010年本格稼働予定であった栃木県さくら市の新研究所についても稼働開始時期延期を決定したとしている。

  今後の展開については、先進環境技術の一層の強化を掲げた。まず、新型ハイブリッドカー「インサイト」を2009年春に200万円を切る価格で販売を開始。また、2010年中には「CR-Z」をベースとしたスポーツタイプの新型ハイブリッドカーも投入するほか、今後は中・大型車への適用も視野に入れてハイブリッドモデルのランナップをを強化するとしている。ハイブリッドカーの販売についても、モーターを生産している鈴鹿製作所に新ラインを増設し11月より稼働させたことで、モーターの年産能力を7万台から25万台に増強している。

  このほかの事業分野では、2輪車ではタイにて福井社長が「タイのスーパーカブとも言えるモデル」と位置付けている「Wave100」のフルモデルチェンジを2009年1月に実施。また、電動2輪車の開発も進めており2年後を目処に投入する予定だとしている。汎用製品では、太陽電池事業事業の拡大や新型家庭用小型コージェネレーションユニットの開発を進めているほか、2009年春にはカセットボンベを燃料とする耕うん機「ピアンタ」を投入する。

今後の取り組みと役員報酬の決定事項生産体制の見直しの詳細
販売・開発体制の見直しの詳細ハイブリッドカー戦略の詳細
2輪車事業の今後の展開汎用製品事業の今後の展開

  これらの事業展開を説明した後に、福井社長は「新年を迎えるに当たり、1日も早い世界経済の立ち直りと市場の回復を望む一方で、来年は今年以上に厳しい状況になるという前提で事業計画を策定した」と前置きし、「今回の判断が、数年後に魅力的な新商品や新技術という形で必ず具現化されると考えている。そしてその先にホンダの新たな成長がある」とコメントした。

(左から)福井社長と株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーションの依田誠代表取締役社長
  このほか、発表会ではジーエス・ユアサ コーポレーション(GSユアサ)とハイブリッド車用を中心とした高性能リチウムイオン電池の製造・販売・研究開発を行う合弁会社を設立することで基本合意を締結したことをあわせて発表した。合弁会社は2009年春頃の設立を予定しており、資比率はGSユアサが51%、ホンダが49%となる予定だ。

  新会社では、GSユアサが開発したリチウムイオン電池「EH6」をベースとした、次世代ハイブリッドカーに最適な性能を実現する製品を開発するとしている。GSユアサの依田誠代表取締役社長は、「ハイブリッドカーという新しい市場への挑戦にあたって、ハイブリッドカーの技術やノウハウを持つホンダと設計段階からリチウムイオン電池を共同開発することで、優れたハイブリッドカーができると確信している」と協業についてコメントした。

  なお、GSユアサは三菱商事、三菱自動車工業と合弁会社「リチウムエナジー ジャパン」を設立し、三菱の電気自動車「i MiEV(アイ ミーブ)」向けのリチウムイオン電池生産している。今回のホンダとの合弁会社との関係については「電気自動車用とハイブリッドカー用のリチウムイオン電池は商品分類がはっきり分かれており、お互いが影響することはない」ものの、「長期的に見れば、相乗効果が期待できる」としている。

 

URL
本田技研工業株式会社
http://www.honda.co.jp/
ニュースリリース(業績予想の修正、PDF)
http://www.honda.co.jp/investors/filings/2008/081217Revision_of_Forecasts_J.pdf
ニュースリリース(実績見通し)
http://www.honda.co.jp/news/2008/c081217b.html
ニュースリリース(社長会見骨子)
http://www.honda.co.jp/news/2008/c081217a.html
ニュースリリース(GSユアサ、PDF)
http://www.gs-yuasa.com/jp/nr_pdf/20081217.pdf
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(編集部:大久保有規彦)
2008年12月17日