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日産、「GT-R Spec V」発表会を開催
水野CVE/CPSが語る、「GT-Rならではの進化」とは

GT-R Spec Vと開発チーム

水野和敏氏
 日産自動車は1月8日、「GT-R Spec V」の発表会を、東京の日産本社ギャラリーで開催した。

 GT-R Spec Vは、2009年型GT-Rを軽量化し、専用のチューニングが施された限定スペシャルモデル。その詳細は関連記事を参照されたい。

 発表会ではGT-RのCVE/CPS(チーフ・ヴィークル・エンジニア/チーフ・プロダクト・スペシャリスト)である水野和敏氏が、Spec V、ひいてはGT-Rに込められた意図を語った。

GT-Rは“生きる力”

Spec Vの販売やメンテナンスは全国7店舗に限定

 「1週間のうち6日間、社長やリーダーとしてものすごく働いている人が、趣味として車に乗る。その半日が、1週間のハードワークを支える、“生きる力”になる」。水野氏はこのように、環境問題や経済問題が取りざたされる現在に、GT-R Spec Vが登場する意義を説明した。「環境を重視した車も重要だが、GT-Rのように“生きる力”となる車を提供することも、日産のようなマルチなメーカーが果たすべき使命」。

 「1週間働き詰めで、ほんの1〜2時間車に乗る一部の方は、より感動を明確にするために、ポルシェやフェラーリのようなキャラの強い車を好む」。Spec Vはそうしたユーザーのために、「ちょっとエキセントリックな特別な限定バージョン」として開発された。ベースとなったGT-Rとは収益などを切り離した存在だという。

 生産台数は「月30台以上は無理」。既報のとおり販売やメンテナンスを行う拠点が全国で7つに限られているが、展示車を全店舗に配備するだけの数も確保できず、全国4カ所の日産ギャラリーのみの展示となる。「こうした商品は、ディーラーに熱血感がなければお客様に迷惑をかける」との考えのもと、取り扱いを希望するディーラーを募集したと言う。

 なお、販売拠点は数もさることながら、対応能力も限られているため、Spec Vに興味を持った場合はまずホームページで情報を収集し、それから店舗に行くことが推奨されている。

カーボンセラミックブレーキと専用ホイールによるバネ下重量の低減と、2シーター化、カーボンのシートやスポイラーの採用による床上の軽量化。「どれだけ軽くなったかではなく、どこを軽量化したかが大切。遮音材をとったりするのは邪道。バネ下や床の上のイナーシャをなくすようにした」(水野氏)
会場にはノーマルGT-RとSpec Vのパーツが並べられ、手に持って重さの違いを確かめられるようになっていた


進化するGT-R
GT-Rは欧米でも支持された。中近東では王族が大量購入
 GT-Rのもう1つの意図は、“日本の匠”で欧州のスーパーカーに挑むこと。そのための武器として“匠の技”が用いられており、GT-Rの製造プロセスが量産車とは大幅に異なるのは周知のとおりだ。こうした匠の技を活用すると、日々現場での製造技術、組み立て精度が向上する。

 これについて水野氏は「匠とかクラフトマンと呼ばれる人は、今日作ったものよりも、明日はもっといいものをお客様に提供しなければいけない。明日作ったものよりも、明後日のほうがもっといいものができる。5年目の職人が作った箪笥が10万円で買ってもらえるとしたら、10年目の職人として作った箪笥は50万円で買ってもらえる。20年目の職人として作った箪笥なら、100万円で買ってくれる。日本にこういうモノ作りの車があってもいいと思う」と言う。

 2009年モデルで値段が80万円上がったのも、原材料費などの理由ではなく、モノとしてのよさが向上したことを反映したのだと言う。「1年前の価格でも10%以上の利益は出ていたが、僕らが磨き上げた匠の価値に対して値付けして欲しい」という意図で、2009年モデルの価格は決まった。

 「だからといって、5年目の箪笥を買った人が馬鹿かと言えば、そうではない。5年目の箪笥でそのよさを知ったら10年目の箪笥に買い換えて欲しい」と水野氏は言う。今現在のGT-Rを買ったユーザーのために、3年間の特別性能保証、アンチチッピング塗装、通常の4倍以上の耐久試験などにより、中古車の価値を維持する努力がなされている。

2009年型GT-Rの進化ポイント 登場1年を経て製造現場のスキルが上がり、車体やエンジンの精度が向上した
欧州スーパーカーの、ニュルブルクリンクのラップタイムと価格の関係で説明した水野氏。GT-Rの価値を同じ基準で計れば、Spec Vはお買い得 やはり欧州スーパーカーとGT-Rを、ニュルブルクリンクのラップタイムやパワーウェイトレシオと、価格の関係でプロットしたグラフ 中古車の価格を保つことで、GT-Rの価値も維持する


「人車一体」を実現するには
 そして、Spec VがGT-Rのデビューから1年を経て登場したのも、「1年間が必要だった」ということだ。現在の製造現場のスキルをもって、登場時よりよい精度で組み上げられたボディでなければ、Spec Vの足回りは実現できなかったという。

 「電子技術を使うには、その母体となる機械の精度がよくなければならない」という水野氏の考えに基づき、2009年型の改良とSpec Vの設計は行われた。その目指すところは「人車一体」、「フラットコントロール」だ。

 「人車一体とは、“人のお尻のすぐ下にタイヤがある”ということ」だが、実際にはタイヤと人の間には、サスペンションをはじめ数百のパーツが介在する。このすべてのパーツの“ガタ”がなくなれば、タイヤと人がつながることになる。

 もうひとつの「フラットコントロール」という目標は、「タイヤのミューに頼っていては実現できない。均等荷重で4つのタイヤに常にグリップを作り出す車で、初めてフラットコントロールができる」という考えのもと、均等荷重を作り出せるボディの作り込みやパッケージレイアウトが採用されたという。

目指したのは人車一体。タイヤと人間の間にある多数のパーツの精度を上げて、人車一体に近づく 水野氏の図より。タイヤを太くしてグリップを増やす(右)のではなく、ボディのパッケージや作り込みでグリップを得る(左)
ビルシュタインのショックアブソーバーはスポーツ走行専用ということで、減衰力固定式 Spec V専用チタンマフラー カーボン製のウーファーカバーもSpec V専用
キャリパーはノーマルGT-Rと同じもの。ローターのカーボンセラミックは耐久性も検証されており、全数検査ののち出荷される
ブレーキキャリパーを冷却するためのエアダクトがフロント下部に増設された。これもカーボン製 エグゾーストエンドもチタン製。Spec V専用のカーボン製リアディフューザーには、マフラーを冷却するためのダクトが付く Spec V専用のキーケースも用意される。3万9500円

来年は「M Spec」を出す
 このように、Spec Vは特殊な一部の層に向けた「走り志向」のバージョンとして登場した。水野氏は、来年もまたGT-Rの進化を示す「M Spec」バージョンを出すと言うが、それがどのようなバージョンになるのかは明らかにされなかった。

357kW(485PS)、588Nm(60kgm)を発生する専用チューンのVR38DETT。ステアリングの「ハイギヤードブースト」スイッチを押すと、約80秒間、トルクが608Nm(62kgm)になる。オーバーテイクスイッチとしても使えるが、上り坂でより高いギアを使えるようになり、燃費が向上すると言う
ノーマルGT-R(右端)との内装の違いは、黒一色になり、ディスプレイ周囲などにカーボン風の装飾が加えられたこと

 

URL
日産自動車株式会社
http://www.nissan.co.jp/
ニュースリリース
http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2009/_STORY/090108-01-j.html
製品情報
http://www.nissan.co.jp/GT-R/SPECV/
関連記事
【2008年12月8日】日産、「NISSAN GT-R」をマイナーチェンジ
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081208_38236.html
【2009年1月8日】日産、「NISSAN GT-R」のハイスペックモデル「Spec V」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090108_38388.html

(編集部:田中真一郎)
2009年1月9日


 



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