水素・燃料電池の展示会「FC EXPO 2009」が開催
燃料電池車の展示や試乗会を実施。世界一低燃費な車も

「FC EXPO 2009」などが開催されている東京ビッグサイトの模様

2009年2月25日~27日
東京ビックサイト
当日5000円(無料招待券あり)



 リード エグジビション ジャパン主催の水素電池や燃料電池の展示会「FC EXPO 2009 第5回国際水素・燃料電池展」が、東京都有明の「東京ビックサイト」にて2月25日~27日まで開催されている。Car Watchでは、同展示会に出展されている自動車関連の水素・燃料電池技術などを紹介する。

 経済産業省が実施するプロジェクト「JHFC(Japan Hydrogen&Fuel Cell Demonstration Project:水素・燃料電池実証プロジェクト)」ブースでは、同プロジェクトが実施している燃料電池自動車などの実証研究と水素ステーションなどの実証研究についての展示を実施。ホンダの「FCXクラリティ」や、トヨタ自動車の「FCHV-adv」、ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパンの「シボレー エクイノックス Fuel Cell」といった燃料電池車を展示している。

 このほか、日産自動車の「X-TRAIL FCV」に搭載されている新開発の燃料電池スタックや、トキコテクノ製の水素ディスペンサー、首都圏や中部地区、関西地区に設けられた水素ステーションの紹介を行っている。また、東京ビックサイト内にてFCHV-advやX-TRAIL FCV、ホンダの「FCX」、メルセデス・ベンツ日本の「F-Cell」といった燃料電池車の試乗会も実施。トヨタと日野自動車が開発した燃料電池バス「FCHV-BUS」に乗車して、会場付近に設置されている「JHFC有明水素ステーション」などを見学できるツアーも開催している。

FCXクラリティFCXクラリティのトランク。トランク奥に水素タンクを搭載FCXクラリティのボンネット内部の模様
FCXクラリティのコクピットFCHV-advFCHV-advのボンネット内部の模様
シボレー エクイノックス Fuel Cell日産のX-TRAIL FCVに搭載されている新開発の燃料電池スタックトキコテクノの水素ディスペンサー
燃料電池車の試乗会の模様

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)ブースでは、燃料電池自動車や水素ステーション向けの開発技術などが紹介されている。燃料電池自動車向け技術では、前プロジェクトの開発品である「200Wh級4セルモジュール」や車載用リチウム電池、GSユアサ(ジーエス・ユアサコーポレーション)による「0.3kWh級電池モジュール」、パナソニックが開発中の「HEV用ニッケル系リチウム電池」、第一工業製薬とエレクセルによる「FSI系イオン液体およびそれを用いたリチウムイオン電池」を展示。水素ステーション向け技術では、日立製作所による「Si-MOSFET型水素センサ」や、フジキンによる「燃料電池自動車高圧水素充てん機用制御弁」などが展示されている。

 このほか、燃料電池の新利用形態技術として、ヤマハ発動機の燃料電池2輪車「DMFCバイク FC-Dii」、関東農機/JFEコンテイナー/東京ガスの3社による「燃料電池構内運搬車」と「カセット式水素容器」を展示している。

 FC-Diiは、ダイレクトメタノール燃料電池システム(DMFC)を搭載した2輪車。DMFCは最高レベルのシステム効率32%を達成していると言う。燃料はメタノール水溶液を使用し、脱着して充電可能なリチウムイオン電池を併用。1kWレベルでは高水準の出力密度を持つヤマハ独自開発の小型セルスタックを搭載するほか、原付1種としてナンバーを取得しての公道走行も可能だとしている。

 燃料電池構内運搬車は、工場や倉庫などで主に使用される構内運搬車に燃料電池システムを搭載したもの。水のみを排出するため、食品を扱う市場などでも安心して利用できるとしている。また、カセット式水素容器は水素を充填したカードリッジを燃料電池構内運搬車に搭載することで、カートリッジ交換のみで燃料補給が行えるとしている。なお、燃料電池構内運搬車は水素ステーションでの燃料補給も可能だ。

200Wh級4セルモジュールと車載用リチウム電池0.3kWh級電池モジュールHEV用ニッケル系リチウム電池
FSI系イオン液体およびそれを用いたリチウムイオン電池Si-MOSFET型水素センサ燃料電池自動車高圧水素充てん機用制御弁
DMFCバイク FC-DiiFC-Diiのパワーユニット
燃料電池構内運搬車燃料電池構内運搬車に搭載されたカセット式水素容器

 スイス大使館 科学技術部によるスイス・パビリオンでは、燃料電池車「PAC-Car II」を展示している。同車の海外展示は今回が初めてだと言う。

 PAC-Car IIは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の学生プロジェクトから開発された燃料電池車。2005年に開催された「シェル・エコ・マラソン」では、ガソリン換算で5385km/Lの燃費を達成し、燃焼効率の世界記録を樹立。現在もこの記録は破られていないと言う。

 燃料は約1Lのカートリッジ2本に11バールで圧縮された水素2gを使用し、これは8mlのガソリンに相当する。12V、最高出力900Wの電力供給が可能な燃料電池システムを搭載しており、最高速度は32km/h。動力は2つの直流モーターによる後輪駆動で、低動力時は一方または両方にモーターからの動力を分断できる。ボディーにはカーボンファイバー素材を採用しており、車体外形の重量は10kg、全体でも29kgとなっている。このほか、電子制御部で光ファイバー通信を利用するなどして燃料から車輪までの効率を向上させていると言う。

PAC-Car IIコクピットカバーを開けた状態コクピットの模様
PAC-Car IIの動力部。下部にモーターを搭載先端部分の模様ギネス世界記録による燃焼効率の世界記録の認定証

 FC EXPO 2009と合わせて、東京ビッグサイトでは太陽電池技術の展示会「PV EXPO 2009 第2回国際太陽電池展」と「二次電池フェア」も開催されている。PV EXPO 2009では、ホンダの関連会社で太陽電池の製造販売を行うホンダソルテックが出展しており、ホンダのソーラーカーレースへの取り組みや、米国で実験稼働を進めている太陽電池式水電解型水素ステーションを紹介している。

 二次電池フェアでは、GSユアサ(ジーエス・ユアサ パワーサプライ)が出展。GSユアサ、三菱商事、三菱自動車工業の合弁会社であるリチウムエナジー ジャパンが開発したリチウムイオン電池「LEV50」、バッテリーモジュールの「LEV50-4」を展示している。いずれも、三菱自動車が開発している電気自動車「i MiEV(アイ ミーブ)」に搭載されている。LEV50は、3.7V、50Ahのリチウムイオン電池で、従来製品からの小型軽量化と約25%の高容量化を達成している。LEV50-4は、直列に接続した4セルのLEV50とセル監視装置から構成されており、i MiEVには22基搭載されていると言う。

ホンダのソーラーカーレースへの取り組みと太陽電池式水電解型水素ステーション(左から)GSユアサブースで展示されているLEV50とLEV50-4LEV50とLEV50-4の概要
 

(編集部:大久保有規彦)
2009年 2月 25日