瀬戸大橋のてっぺんに登れるスカイツアーに参加した
地上175mの塔頂から鳥の気分で景色を満喫

瀬戸大橋の塔頂にある水平台からの景色。橋の先には四国が見える

2009年4月18日
参加費500円



 Car Watchで以前、ツアー募集告知の記事を掲載した「瀬戸大橋スカイツアー」。これは、本四高速(本州四国連絡高速道路)が開催している瀬戸大橋を見学するツアーで、瀬戸大橋のケーブルを吊っている主塔の上まで登れるというもの。2003年の夏から開催され、ここ最近は毎年春と秋に開催されている。今回は4月18日、19日、25日、26日に開催。定員600人のところ、7374人の応募があったという人気ぶりで、すでに申し込みは締め切られているが、参加できたので、その模様をお届けする。

 記者が参加したのは初日となる4月18日の12時からの枠。途中定員6名のエレベーターなどがあるため、ツアーは30分置きに15名程度の班になって行われる。参加者にはヘルメットと軍手が貸し出され、またメガネを使用している人には、脱落防止のメガネひもが貸与される。橋の上から物を落とすと非常に危険なので、このあたりは厳重に注意される。また、途中にはハシゴを登ることもあるため、荷物は背負ったり肩にかけられたりするものに限られる。

 ツアーのスタート地点となる与島PA(パーキングエリア)に参加者全員がそろったところで、ツアーの工程と注意事項などが説明される。解説をしてくれたのは、本四高速の岡山管理センター 道路維持課 課長の石橋清美氏だ。ツアーは全工程約1時間30分で、途中管理用通路を徒歩で渡って主塔まで移動する。この通路の足下は格子状になっていて、下が丸見えとのこと。管理の都合もあり途中で引き返すことはできないため、自信がない人は断念することを勧められる。

出発前に各種注意事項の説明やツアーのルートが説明されるルートはふもとのコンクリートでできたアンカレイジから上り、橋げたを徒歩で渡って主塔と呼ばれる最も高い塔の上まで上るというもの最終目的地の主塔。前のグループの参加者の頭が見えているのが分かるだろうか

 準備ができたところでツアー開始。途中与島PA内にあるケーブルの原寸大のカットモデルを使った説明などが行われつつ、橋の付け根になるアンカレイジと呼ばれる橋台に向かう。アンカレイジは、橋を吊っているケーブルを固定するもので、まさにつり橋の要なのだと言う。

瀬戸大橋を吊るケーブルの模型。1本で車3台をつり上げられる強度を持つ特殊な5mmのピアノ線を、127本使って六角形の束を作り、それを234本まとめることで、直径約1mのケーブルになっているのだとかアンカレイジについて説明が行われる。近くで見ると巨大なアンカレイジは、ケーブルを固定するアンカーとなる部分で、コンクリートはどうしてもひびが入るため、定期的に補修しているのだと言う写真左側のコンクリートのブロックがアンカレイジ。ケーブルを地面に固定するブロックになっていることが分かる

 アンカレイジの中は吹き抜けになっていて、その壁面に設けられたエレベーターを使って橋げたまで上がる。さらに階段を上がると、管理用通路になる。瀬戸大橋は2階建て構造になっていて、1階部に線路、2階部に道路が走っているが、管理用通路があるのはこの1階部で、その高さは約65m。足下は予告どおりのオープングレーチング床板で、高所恐怖症でなくても足がすくむ。しかしさすがに頑丈な橋で、電車が通っても揺れるようなことはない。下さえ見なければ、恐怖を感じることはなさそうだ。むしろ当日はとても天気に恵まれて、瀬戸内海の深みのあるブルーと突き抜けるように澄んだ空の色はとても目に鮮やかで、いつまで見ていてもあきないほどだ。

階段を使って巨大なアンカレイジに上っていく。ここから先は普段は入れないエリアだアンカレイジの中は吹き抜けになっている。上には橋げたが見え、左右の壁がそれぞれ2本のケーブルのアンカー部となる壁面のレールを使って昇降するエレベーターで、橋げたの高さまで上る
自動ドアもないエレベーターは振動や音も大きい管理用通路に到着。すぐ隣には鉄道の線路が走っている管理用通路の床板はオープングレーチングで地面が透けて見える
管理用通路だけでなく、かがまないと通れないような場所が随所にある天気に恵まれ、管理用通路からは、瀬戸内海の雄大な景色を眺めることができた出発地点の与島PAを望むこともできる

 通路の途中には、与島PAの混雑状況を監視するためのカメラがあったり、線路と管理用道路の間に巨大な箱があったりする。この箱は、“おもり”とのこと。実は瀬戸大橋の建設当初、瀬戸大橋に新幹線を通す計画があったのだと言う。しかし計画は中止になってしまい、新幹線用の線路は敷かれることがなくなってしまったのだとか。しかし吊り橋というのは、吊るものの重量も計算して設計されているため、通るはずだった新幹線の代わりにこのおもり乗せているのだと言う。

与島PAの混雑状況を監視するためのカメラ巨大な金属の箱は新幹線の代わりの“おもり”この角度から見ると、本来新幹線が通るハズだったであろうスペースが空いているのがわかる

 主塔のわきまで来たところでさらに階段を上り、車の走る道路の横まで来る。すぐ横を通る車は迫力だが、ドライバーから見ても、橋げたの途中に歩行者が現れる様は驚きだろう。ここから主塔の中に入り、エレベーターに乗り込む。主塔の中はまるで潜水艦の中のように狭くて入り組んでいて、移動も大変だし道に迷ってしまいそうだ。

主塔のわきの階段を使って車道部まで上る。車道部の高さはおよそ80m階段を上っている途中で電車が通過した。JRの5000系快速マリンライナーだ階段を上ると車道のすぐ脇に出る
反対の塔からは、先のグループが出てくるところだったこれから上る水平台を見上げる。ここからでもすごい高さだ潜水艦のハッチのようなドアを通って塔の中に入る
塔の中にあるエレベーターは自動ドアで一般的なつり下げタイプのものこのエレベーターは上だけでなく、下の海際の辺りにも降りていけるのだという

 最上階に着き、せまい通路を抜けると、本日の最高地点、水平台に出ることができる。その高さは175m。しかし足下が透けることもなければ、柵も高いので、管理用通路よりもむしろ不安は少なく感じる。水平台の上からは、道路を走る車が豆粒のように見え、彼方にパノラマに広がる水平線には、地球の丸さを確認することができるほど。まさに鳥になったような気分で、スカイツアーの名前の意味を実感することができた。さらに全員で集合写真も撮影してもらえ、最後に写真をプリントした「主塔制覇認定証」をいただける。

地上175mにある水平台に到着。ここでしばしの歓談タイムとなる水平台から見た本州側の景色。左手前に与島PAが見える。まさに鳥になったような気分だこれは与島PAから撮影した瀬戸大橋だが、一番手前の主塔の上から撮影したのが左の景色だ
水平台の上から撮ったパノラマ写真。向かって左が四国側、右が本州側となる

 メインイベントを満喫したところで、帰路は往路とは反対側の塔を通って戻ることになる。エレベーターを使って道路わきまで降り、先ほどとは逆車線側の管理用通路を通って、アンカレイジまで戻る。逆車線側から見える景色もまた先ほどとはまた違った絶景で、眼下には新緑に囲まれた島や、廃校になってしまったという学校を見ることができる。

帰路は水平台の上に開いたハッチからはしごを使って塔の中に入る塔の中は通路が狭く、入り組んでいて、三脚など荷物の多い記者はひと苦労狭い穴をいくつも抜けてようやくエレベーターにたどり着く
往路とは反対車線の道路脇に出るが、同じような景色なので方向が分からなくなりそうだ階段を下って管理用通路まで降りるが、必然的に足下を見なければならないこの下りの階段が一番怖く感じる

 橋の東側は、島民の住宅側ということもあって、線路のわきには防音壁が設けられていたり、騒音を計測するためのマイクが設けられていたりする。

橋の西側を通る往路とは違った景色が楽しめる。東側は漁協や島民の民家が並ぶ。緑色の屋根は小学校だとか西側にはなかった防音壁が設けられている騒音測定用のマイクも設置されている

 アンカレイジの少し手前で、橋げたから大きく外側に飛び出した部分についての説明が行われた。パッと見には外側に飛び出した非常階段のようにも見えるが、さらに外側に、飛び込み台のように突き出た部分もあり、これが何のためにあるものなのか、想像もつかない。

 実はこの部分は、橋げたを下から咥えこむような形で付いた外面作業車と呼ばれる装置で、言うなれば巨大なゴンドラ。橋げたを点検する際にはこの作業車が橋に沿って移動し、作業車に乗った作業員が橋げたの側面や下面を点検したり、塗装したりするのだと言う。飛び込み台のような部分は作業台で、内側にスライドすることで、橋げたの内側のほうも作業ができるようになっている。

橋げたから外側に大きくせり出した謎の部分。まるで飛び込み台のように突き出たところもある遠くから見るとこれが巨大な作業台だということがわかる外側に突き出た作業台部分は、橋げたの内側にスライドできるようになっている

 さらに線路の上部には、橋げたに沿った方向のレールと、直角方向のレールが設けられていて、このレールを移動する内面作業車を使って、橋げた内部の点検を行うのだとか。

線路の上部には縦方向と横方向にレールが設けられていて、内面作業車が縦横に移動できるとのことボルトは上から塗装やマーキングがされていて、万が一ゆるめば、塗装がはがれたり、マーキング位置がずれて、目視で確認できるようになっている

 線路の下をくぐり、往路で使った通路側へと移動したら、あとは来た道を戻る。アンカレイジの中には、今回のツアーで見られなかった部分を説明する、模型やカットモデルが用意されており、解説をしてもらうことができた。最後はPAまで戻って記念写真をもらい、解散となる。

アンカレイジの中で、今回見ることのできなかった部分の解説が行われる。ケーブルの中には送風がされていて、湿気がたまらないようにしているとか、また、海中の基礎となるコンクリート防護のために、外部を覆っている鋼製ケーソン外壁は、海中のため再塗装が難しく、代わりに電気を流すことで海中にある石灰分を電着させているのだと言うアンカレイジの構造を説明する模型もあった。コンクリートの内側でケーブルは分散し、固定されている

 こうしてツアーを終えてから、あらためて瀬戸大橋を眺めると、それまでのただ見た目だけのスケールの大きさとは違った迫力を実感することができる。100年以上耐えられるように設計されたと言う瀬戸大橋だが、その保全のために行われている、非常に細やかで、かつ巨大なスケールでのメンテナンスは、驚きと感心の連続で、最初は長いかと思った1時間30分という時間があっという間に感じられたほど。次回は10月頃開催の予定で、9月中にはWebサイトで募集を告知するとのことなので、近所と言わず、遠方の人もぜひ応募してみることをお勧めしたい。

与島PAにある与島プラザの屋上に設けられた展望台から撮影

【お詫びと訂正】記事初出時、「参加費無料」と誤って記述しておりました。正しくは「参加費500円」となります。お詫びして訂正させていただきます。

(編集部:瀬戸 学)
2009年 4月 22日