NEXCO中日本、高速道路の長期保全に関する検討会を開催
高齢化が進む高速道路の今後40年間の維持コストをシミュレーション

2009年4月22日開催


 NEXCO中日本(中日本高速道路)は、同社が管理する東名高速や名神高速など、建設から40年以上を迎える道路を今後も効率的に維持していくため、有識者を集め「高速道路ネットワークの長期保全計画に関する検討会」を4月22日に開催した。

検討会終了後のブリーフィングで記者発表を行うNEXCO中日本の保全・サービス事業本部 保全・サービス担当部長 峯村英二氏(写真左)と企画本部 技術開発部長 猪熊康夫氏「高速道路ネットワークの長期保全計画に関する検討会」の委員長を務める東京大学 工学系研究科 社会基盤学専攻 藤野陽三教授

 1964年開通の名神高速が建設から44年、1968年開通の東名高速が40年経過するほか、同社が管理する道路の約6割が建設後30年以上を経過し、従来にはなかった構造物の劣化や損傷が顕在化していると言う。そこで、今後の高速道路補修コストの適正化を図るために開催されたのが、この検討会になる。第1回は、2008年12月に開催され、高齢化した高速道路の現状と、課題の確認が行われ、第2回目となる今回は、その修繕の方法とそれにかかる費用の概算について検証された。

 修繕のあり方について議題にあがったのは、橋梁と舗装の2つ。それぞれ2パターンの修繕シナリオを想定し、40年というスパンで見た場合のコストについて検証された。

 まず橋梁に関しては、損傷が深刻化する前の補修や、腐食を防ぐ予防策を行う「計画保全」と、損傷や劣化がある程度進行してから大規模な補修を行う「事後保全」の2つのシナリオを想定。基本的には従来の方法は事後保全で、対して計画保全では、例えば鋼材の腐食対策として、従来より塗装サイクルを短くするとともに、一般塗装に加えて重防食塗装をしたり、また、塩害地域のコンクリート橋には、小規模な断面補修を短期サイクルで行うほか、腐食を防ぐ電気防食を施したりする。これにより従来なら70年目に必要とされていた塩害地域のコンクリート橋の架け替えが不要になる計算だと言う。

 それぞれのシナリオで、今後40年のスパンでのコストを計算すると、現状ですでに劣化の進んだ橋梁に対する補修が必要となるため、初期は計画保全のほうがコストが掛かるが、30年ほどたつと、塩害によりコンクリート橋の架け替えが必要となり、40年間の累計では、事後保全の方が大きくコストが掛かる計算となっている。

計画保全と事後保全のそれぞれの補修時期や補修内容の考え方。資料提供はNEXCO中日本それぞれの修繕コストのシミュレーション結果。事後保全の赤い部分は、塩害による橋の架け替えの費用

 また、舗装に関しては、従来は表層部約4cmのみの打ち換えを行ってきたが、建設から30~40年経つと、表層の下の上層路盤にも劣化が見受けられ、表層のみを補修しても、劣化のペースが早くなると言う。そこで、舗装に関しては、劣化状況に応じて30~40年で上層路盤も補修を行う場合と、従来どおり表層のみの打ち換えを3年おきに行った場合のコストを試算。

 これによると、現在すでに30年以上経過している路線が多いため、2020年頃までは上層路盤の補修費用が大きく掛かるが、上層路盤を補修した道路は、表層の耐久性が上がり、表層打ち換え費用が抑えられるため、40年というスパンで見ると、従来のまま表層のみを打ち換えるよりも安くなると言う。

上層路盤の補修も行うシナリオ1と表層のみの補修を行うシナリオ2。建設から40年経過した道路の表層の寿命は3年だが、上層路盤を打ち換えると表層の寿命も10年に延びる上層路盤の補修を行う分、当初は費用が掛かるが、その分表層打ち換えのコストが抑えられ、2050年までの計算では、表層のみの維持費を大きく下回る。しかし2060年ころには、また上層路盤の補修が必要となるため、より長いスパンでの試算も必要とのこと

 今回の検討会では、これらの検証結果に対し、いくら予防をしても最終的には立て替えが必要になるのだから、より長いスパンでの試算もすべきといった意見や、劣化状況を測定するための技術開発についても検討が必要といった意見があがったと言う。これに伴い、次回は100年というスパンでのコストの検証や、技術開発に関する検証、また、橋や道路以外の部分における保全に関しても検証を行うとしている。次回の開催は7月を予定していて、最後の検討会になると言う。

(編集部:瀬戸 学)
2009年 4月 22日