フェラーリ、サーキット専用車「599XX」を国内発表
チューンドカーにサーキット走行イベントをパッケージ



 フェラーリ・ジャパンは5月10日、フェラーリ・フェスティバル・ジャパン2009会場(静岡県・富士スピードウェイ)で、サーキット走行専用車「599XX」を発表、599XXの技術と、プログラムについて説明した。599XXは3月のジュネーブ・モーターショーで世界初公開されているが、国内での発表はこれが初めて。

 エンツォ・フェラーリ・ベースのサーキット走行専用車「FXX」の後継車。ベース車両は599に変更された。FXXと同様に、価格には年2回のサーキット・イベントと、F1シーズン終了後の「ワールド・ファイナル」と呼ばれるイベントへの参加プログラムが含まれる。この権利は2年分付帯するので、計6回の参加が可能ということになる。また車両の保管、輸送、保険などのサポートが提供される。

Cピラーの外側のフィンは599のデザインのハイライトの1つだが、この外側にさらにフィンを追加するなど、ボディーの各部に空力的な処理が付加されている

 サーキット・イベントは年に7回開催され、任意の2回に参加できる。サーキット走行のほかテクニカルアドバイスを受けられ、ヘルメット、サーキット走行用のウェア、専用のガレージエリア、個室、ランドリーサービス、ラウンジ、ラグジュアリー・ホテルでの宿泊、ディナー、コンシェルジュサービスなどがパッケージされる。

 このほかにFIA GTドライバーや技術者らによる講義や、プライベートテスト走行なども用意される。

 また車両のシェイクダウンはフェラーリのオフィシャルドライバーとともに行い、車両やサーキット走行の説明を受けたり、ドライビング傾向のテレメトリー分析を受けたりすることができる。

 フェラーリ・ジャパンのマルコ・マッティアッチプレジデント兼CEOは発表会見で「FXXが好評だったので、30台の599XXをお届けすることになった。FXXプログラムでは世界各地のオーナーの声を聞くことができたが、599XXでも地域ごとのニーズを汲み上げ、新車の開発にフィードバックしたい」と述べた。

ブラバムBT46/Bやシャパラル2Jを連想せずにはいられない、ボディ底面の空気を吸い出してダウンフォースを得るアクティブフローシステム
ホイール・ドーナッツは空力性能とブレーキ冷却効率を高めるスパルタンなコクピット。2つのシートが用意される

 599XXは「エクストリーム・ベルリネッタ」と位置づけられ、サーキットでのハイレベルな走行に耐えるスペックが与えられている。

 エンジンは599と同じ65度V型12気筒5999ccだが、各部の設計見直しやコーティングによりフリクションロスを減らし、9000rpmの最高回転数を実現。700HPの最高出力は9000rpmで、650Nmの最大トルクは6500rpmで発揮されるという超高回転型のセッティングになっている。トランスミッションは2ペダル6速MTで、変速に要する時間は60ms。

 また安全のために設けられるスタティックマージン(車両を安定させるための余地)を、599の23%から14%に減らし、引き替えにレスポンスと運動性能を向上させる「ハイパフォーマンス・ダイナミック・コンセプト」を採用。エンジンや足まわりの特性をハイ・アマチュアのスポーツ走行に特化し、運転の難易度をやや高くしてあるため、オフィシャルドライバーらのインストラクションが必要になる。

 空力面では車体まわりの気流を積極的に制御する「空力トンネル」を各部に設けたほか、底面の空気を電動ポンプで吸い出すことでダウンフォースを得る「アクティブフロー」システムを初採用。アクティブフローで吸い込まれた空気は、通常モデルのテールランプにあたる部分に設けられたダクトから排気され、車体後部を整流し、空気抵抗を低減する。

 さらにブレーキディスクとホイールリムの間に「ホイール・ドーナッツ」と呼ぶプレートを置き、ブレーキの冷却効率を高めるとともに、ホイール周りの気流を整え空気抵抗を低減する。これらにより200km/hで280kgのダウンフォースを得るとともに、従来よりも空気抵抗を15%削減することができた。

 ブレーキには第2世代のカーボンセラミックブレーキを採用。新素材を使うことで、より高い制動力と安定性を得た。

 このほか、「バーチャルレース・エンジニア」と呼ぶ車両ステータスモニターを搭載。タイヤ、ブレーキ、エンジンフルードの温度や、縦横の加速度、残余パフォーマンスなどをリアルタイム表示、記録することで、スポーツ走行のタイム向上に役立てる。

 フェラーリ・フェスティバル・ジャパンの会場には599XXのブースが特設され、車両が展示された。試作車のため、エンジンルームは公開されなかった。展示車両はイタリアンレッドに塗装されていたが、市販車両と同様に他の車体色も選べると言う。

 599XXは2009年内にデリバリーが開始される予定。価格は未定だが、110万ユーロ程度が見込まれる。

599XXに採用された技術最高出力は最高回転数の9000rpmで発揮される。最大トルクの発生回転数も6500rpmと、超高回転型
バーチャルレース・エンジニア。データロガーのデータをリアルタイムで表示できる

(編集部:編集部:田中真一郎)
2009年 5月 11日