ヱヴァンゲリヲン 箱根補完ツアーに行ってみた


 映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」と箱根町観光協会がタイアップし、配布する観光マップ「ヱヴァンゲリヲン 箱根補完マップ」(以下、「補完マップ」)を、6月4日の先行配布初日に手に入れたので、補完マップに掲載されたスポットを巡ってみた。

 この補完マップはアニメ「ヱヴァンゲリヲン」の作中で、主人公たちが生活する都市「第3新東京市」の場所が、箱根町仙石原に設定されていることから企画されたもの。普段配布されている観光マップとは異なり、作中でに登場した戦場や主人公たちの住む家など、全19スポットが細かく紹介されている特別仕様だ。

 補完マップの範囲は、東は箱根新道の箱根口IC、西は芦ノ湖西岸を北上して長尾峠に至る芦ノ湖スカイラインと箱根スカイライン、北は仙石原から御殿場市街に下っていく乙女道路、南は大観山あたりまでとなっている。

 つまり芦ノ湖とその北の仙石原の全体が地図の左半分にあり、これらの右側に、元箱根から小湧谷などを経て箱根湯本に下っていく国道1号線と、芦ノ湖から二子山などを経てやはり箱根湯本に至る箱根新道の全体が収まっているわけだ。

 補完マップには「公共交通機関利用」と「マイカー利用」それぞれ2パターンずつのモデルコースが紹介されており、箱根の観光名所と作中に出てくるスポットをまわれるようになっている。初めて箱根に足を運ぶ人でも、安心してスポット巡りができるように工夫されているわけだ。

ヱヴァンゲリヲン 箱根補完マップ「公共交通機関利用」と「マイカー利用」のそれぞれに2パターンずつのモデルコースが用意されている

 車好きにとって箱根といえば、“走りのメッカ”というのが一般的なのだろうが、千葉の片田舎に住む筆者は箱根に1度も行ったことがないし、あまりなじみがない。クルマで走るというと比較的近い筑波山のイメージが強く、箱根は観光地じゃないの? というのが正直な感想だった。それがよもや、エヴァンゲリオンファンのメッカになるとは……。

 というわけで、愛車のAW11(初代MR2)とともに初箱根に挑んだ。筆者はまさにエヴァンゲリオンをリアルタイムで見ていた世代。車内ではエヴァンゲリオンのサウンドトラックをかけ、UCCコーヒーのヱヴァンゲリヲン缶を飲みつつ、箱根へ出発したのである。

第3新東京市名所巡り
 箱根に到着し、補完マップを入手した次第は4日の記事に詳しい。いよいよ聖地巡礼の旅だ。補完マップにあるモデルコースを巡ってもよかったのだが、欲張ってできる限りのスポットを回ってみることにした。天候が悪く、観光日和とはならなかったが、人生初めての箱根ということもあり、テンションは上がり気味。

 まず向かったのは、マップを配布していた箱根湿生花園から近い「公時神社」(きんときじんじゃ)。補完マップではスポット番号[08]が振られているが、箱根湿生花園からはクルマで数分の道のりで、スタート地点付近に点在するスポットをすべて回る場合、北に位置する同神社を最初に攻略するのがもっとも効率のよい巡り方だと考えたからだ(以下、[]内は補完マップのスポット番号)。

 神社の駐車場にクルマを停め、境内に入る。ここは、シェルターを抜け出した鈴原トウジと相田ケンスケが向かった先だ。神社の様子は、作中のイメージとは異なるように思える。マップの紹介を確認すると、位置的には公時神社だが、外観の雰囲気は箱根神社に近いということらしい。

 神社の北には、碇シンジと葛城ミサトが第3新東京市(仙石原周辺)を眺めた「金時山」(きんときやま)[14]がある。この山はハイキングコースになっているだけあり、シーズンには登山客で賑わうらしいが、さすがに平日は人通りも少ない。登ってシンジやミサトと同じ景色を眺めたかったのだが、クルマでは登頂できないし、登山にはあまりにも軽装だったので断念。

[8]地図の先行配布会場である箱根湿生花園から、まずは公時神社に向かう。トウジとケンスケがシェルターを抜け出し、シンジの初号機を見守った場所だが、作中のイメージとはだいぶ違う。なお、この神社は「まさかり担いだ金太郎~」の金太郎を祭神として祀っている。数は少ないが駐車場があるこれが箱根神社。芦ノ湖畔にある

 次に向かったのは主人公たちが通う学校[03]。公時神社の東、クルマで数分の場所が指定してある。近くまで行くと小学校があった。

 続いて綾波レイの暮らす集合団地[04]がある仙石原高原を目指し、南下する。到着してみるとそこはなるほど緑豊かな高原で、ご丁寧に「高原」という標識まで立っている。作中では団地だが、実際の仙石原高原には建物は1つもないのだった。前述のとおりこれが初めての箱根となる筆者は、エヴァンゲリオンで描かれたような都会までは期待していなかったものの、モデルになった場所がまったく建物がない原っぱだとは思わなかった。

 [04]からほぼ1本道をクルマで2~3分ほど走ると、碇シンジと葛城ミサトの住むマンション[05]だ。が、そこにマンション「コンフォート17」はなく、お蕎麦屋さんがあった。ミサトといえば「カレーラーメン」だが、さすがにそのようなメニューはここにはないので、天もり蕎麦で昼食とした。

[04]解体が進む第3新東京市郊外の集合団地が、綾波レイの住む場所。マップに記された場所を訪れるとそこは「高原」だった。該当の方角には、集団団地どころか、建物ひとつ見あたらない。青々と茂る緑が印象的だった[05]葛城ミサトが入居しているマンション「コンフォート17」があるはずの場所には蕎麦屋「堀よし」があったミサトといえばカップ麺にレトルトカレーを注ぎ込んだ「カレーラーメン」だが、堀よしにあるはずもなく、箱根名物の十割そばを食す。写真は天盛りそば。駐車場は少なめ


 [05]からクルマで数分走ると、映画版では第6使徒、TV版では第5使徒のラミエルが吹き飛ばしたとされる戦場[13]。本道から横道にそれた箱根湖畔テニスパークの近くだ。山肌がモヤがかっており、ちょっぴり雰囲気を出している。

 本道に戻り、芦ノ湖を目指す。TV版の第5話で描かれた半水上都市[19]は芦ノ湖の北岸にある桃源台となっている。作中ではビル群がそびえ立っているが、行ってみるとここは観覧船乗り場だった。

 芦ノ湖の真ん中には映画版の使徒ラミエルが登場した場所[16]というスポットがある。補完マップに載っている写真と同じような景色を探して芦ノ湖沿いに南下してみたが、これがどこなのか分からない。正八面体のラミエルが浮遊しているとありがたいのだが……芦ノ湖周辺を3往復ほどしても分からないので引き下がることにした。

[13]TV版では第5使徒として、新劇場版では第6の使徒として登場した使徒ラミエルの攻撃により吹き飛ばされた場所は、箱根湖畔テニスパークの近く[19]桃源台。作中ではビル群がそびえ立つ半水上都市だが、ロープウェイや観光船の乗り場があり観光客で賑わうポイント芦ノ湖は観光船なども回遊する

 元箱根で芦ノ湖を離れ、箱根旧街道に乗り入れる。この旧街道を下っていくと、箱根新道と並び、箱根湯本駅に至る。

 旧街道は勾配の厳しい道が続き、180度カーブが連続する、クルマにも人間にもきつい道のりだ。途中、「下二子山」[17](二子山第2要塞)があるが、木が生い茂り、山に近すぎてよく見えない。このスポットは、どこか離れた場所から見るのが賢明だろう。

 そうこうしているうちに畑宿清流マスつり場付近の急カーブの連続、通称七曲がりで、軽く足がつるというアクシデントに見舞われる。側溝にタイヤをとられそうになるなど、疲労は大きい。

 しばらく道なりに走ると急に温泉街に入り、箱根湯本駅[06]に到着した。箱根湯本駅は新宿からやってくる小田急線の終着駅であり、ここから強羅へ上っていく箱根登山鉄道の始発駅である。ここは、TV版で葛城ミサトが碇シンジを迎えにきたシーンの舞台だ。また映画版では箱根登山鉄道が戦闘で吹き飛ばされるシーンもある。さすがに駅前ということもあり、有料駐車場が数カ所あるのでクルマを停め、確認しに向かう。途中、お土産屋のおばちゃんに名物と思われる梅干しをすすめられたが、丁重にお断りして駅に向かう。箱根登山鉄道の車両を見るため、切符を買って駅に入ってみた。

 箱根湯本駅から今度は国道1号を上って、箱根ロープウェイの早雲山駅[18]を目指す。TV版ではこの箱根ロープウェイは武装ロープウェイになっていた。途中、日帰り温泉の看板が多くあり、心惹かれるが、今回はエヴァの聖地巡りを優先する。

[06]TV版第4話で、命令を無視して逃げ出した碇シンジを葛城ミサトが迎えにいくシーンでお馴染みの駅は箱根湯本駅。作中はオーソドックスな駅として描かれているが、実際はモダンな建物。駅前だけあって、バスやタクシーなどの交通量は多い。見に行く際は気をつけて第4使徒シャムシエルと航空隊の戦闘に巻き込まれ吹き飛ばされる箱根登山鉄道。駅に入るのに入場券が見あたらなかったので、初乗り130円の切符を買って入場。しかし駅から出ようとすると自動改札に止められた。駅員さんに申し出ると、鉄道ファンと間違われた[18]TV版では本部防衛網の擬装兵力の1つになっていた箱根ロープウェイ。箱根登山ケーブルカー終点の早雲山駅から大湧谷、姥子を経て芦ノ湖畔の桃源台に至る

 次に、碇シンジが家出した先「大桶谷」[15]を目指す。気分は家出捜索人である。早雲山駅から大涌谷駅はロープウェイで行けるが、車でも迷うことはない。大桶谷は箱根火山の噴煙が噴出している観光名所だ。ここの酸性熱泥でゆでた「黒たまご」が名物で、1つ食べると7年寿命が延びると言う。しかしここは有毒な硫化水素が噴き出しているので、長時間の滞在は危険だという注意看板が設置されている。ちなみに乗用車の駐車料金は500円だった。

[15]家出をした碇シンジが2日目の朝に辿り着いた大涌谷。火山ガスが立ち込めるこの場所は観光名所としても有名だが、火山ガス(亜硫酸ガス・硫化水素ガス)は有害なため、長時間立ち止まらないようにとの注意書きがある。有料駐車場がある
大涌谷ではこの地特有の酸性の熱泥によって作られる黒たまごが名物

 さて、一通りのスポットを見終え、スタート地点兼ゴール地点の箱根湿生花園に戻る。途中、箱根湯本駅で撮り忘れた写真があったのを思い出し引き返したりしたのを含め、箱根初心者の箱根エヴァンゲリオン名所巡りの旅は、計4時間30分という長旅になった。

クルマで行くのがおすすめ
 さて、今回スポットを巡ってみて分かったのは、より多くのスポットを見たければクルマで行ったほうがよいだろうということだ。しかも、今回筆者が回ったスポットは、効率よく巡ればおよそ2時間で見終えると地元の方に伺った。筆者は箱根初心者だったので時間がかかったが、渋滞にでも巻き込まれない限りはすんなりと回れるはずだ。山中など見ることのできなかった場所も多くあったが、作品で描かれた場所に生で行くことができたのは、とても満足。エヴァンゲリオンに詳しい仲間とワイワイ言いながら巡るとさらに楽しいだろう。

 ただし、箱根は山なので、アップダウンの激しい道をひたすら走ることになる。クラッチやブレーキなど、あらかじめクルマのコンディションには気を配っておく必要があるだろう。筆者の愛車はドリンクホルダーの具合が悪く、箱根を走り回る間に入れていたヱヴァンゲリヲン缶コーヒーが倒れ、中身を車内にぶちまけてしまった。アップダウンに強い(立て付けのよい)ドリンクホルダーを探さなくてはと、強く決意したものだ。

(飯塚 直)
2009年 6月 8日