ソニー「nav-u」のワンセグ付と低価格モデルを徹底比較<後編> NV-U3VとNV-U3Cを実走行テストで比較する |
ここ数年、カーナビ市場の牽引役となっているPND(Portable Navigation Device)。記憶媒体にフラッシュメモリーを採用し、そこに最大5型程度の液晶モニターを組み合わせることで小型化。クルマはもとより自転車や徒歩移動時など、手軽に使えるナビゲーションシステムとして定着しつつある。
このジャンルには国内外数多くのメーカーが製品を投入しているが、なかでも注目度が高いのがソニーのnav-uシリーズ。ソニーブランドの魅力はもとより、カーナビとしての使い勝手のよさが人気の要因ともなっている。
そこで最新モデル「NV-U3V」と「NV-U3C」を使い、実力をチェックしてみようというのがこの企画。前回は基本機能編として製品の特徴などをお伝えしたが、第2回目となる今回は実際にフィールドで使ってのインプレッションをお届けしよう。
■目的地検索
NV-U3V、NV-U3Cともに検索方法は一般的なカーナビとほとんど同じだ。住所をはじめ、電話番号、ジャンル、名称などから目的地を探すことができる。少し前のPNDだと検索用のデータが少なく目的地をピンポイントで見つけられないこともあったが、今回のモデルは住所が約3400万件、電話番号が約1000万件、ジャンルが約200万件と豊富なデータを収録。電話番号検索に関しては施設のみで個人宅は未収録となっているが、住所検索を利用すればほぼ目的地をピンポイントで見つけ出すことが可能だ。
検索の手順も、ほぼ普通のカーナビと同じ。表示される内容に従ってタッチパネルで選択したり、数字を入力したりすればよい。基本的にはNV-U3V、NV-U3Cともに同様の流れだが、NV-U3Cは目的地を検索後、その施設に複数の出入口などがある場合、それをさらに選択することが可能になっている。細かな部分ではあるが、使ってみると便利であることは間違いなくうれしい進化だ。
文字入力は50音が並ぶのではなく一般的な携帯電話と同じテンキー入力方式。NV-U3Cは画面サイズが小さいぶん少しボタンが押しづらいが、手元で入力する分にはそれほど苦にならない。「ナビは初めて」なんて場合でも、それほど悩んだり、迷ったりせずに使えるハズだ。それより、前回も書いたが「メニュー」「現在地」ボタンの押しづらさのほうが気になってしまう。
また、検索件数が多いとリストアップに時間が掛かるのも難点だ。住所検索で番地まで絞って検索するなら気にならないが、名称検索などで複数の都道府県にまたがったり、部分一致で該当する施設が多い場合などは、「えっ、まだ終わらないの?」と思ってしまうほど遅いことがある。HDDナビに慣れてるユーザーだと、ちょっとストレスを感じるかもしれない。
名称検索によるリストからは「ジャンル」「地域選択」で絞り込みが可能だ。ここでは「イタリアン」で検索、そこから行きたい場所を選べば目的地に設定することが可能だ |
自車位置周辺の施設を検索する「最寄検索」。NV-U3V(左)は「ジャンル」「名称」「ガイドブック」の3パターンだが、NV-U3C(右)はさらに自分で選んだ3つの施設をすぐに探せる「かんたん最寄検索」を用意している | |
NV-U3V(左)では駐車場を、NV-U3C(右)ではガソリンスタンドを探してみた。「検索中……」の文字が表示されていることからも分かるように、件数が多いとリストアップに時間が掛かる |
■新鮮な情報をすぐに反映できる「PetaMap(ペタマップ)」
nav-uに収録されている情報量とその鮮度を補ってくれるのが「PetaMap(ペタマップ)」だ。これはソニースタイル・ジャパンが運営する地図情報サイトで、「食べる」「見る」「遊ぶ」「買う」といったジャンルやキーワード、地図上からスポットを検索できる。気に入ったスポットはUSB接続したnav-uに専用アプリを介して転送したり、メモリースティックデュオを介したりして利用可能。nav-u上では元々収録されているガイド情報と同じように扱えるため、新しくオープンしたスポットなども「PetaMap」を使えば、すぐに情報を見たり目的地として設定したりすることが可能になる。ドライブ前にチェックしておけば、現地での行動範囲がより広がるはずだ。
■ルート探索
ルート探索は「推奨」「有料道路優先」「一般道路優先」「一般道路距離優先」の4パターン。どの条件でも基本的には「王道」的なルート選択で、狭い道路や抜け道的なルートを選ぶことはほとんどない。精度面で狭い道を選びにくいといったハードの制約からくる側面もあるかもしれないが、多くのドライバーにとって走りやすいルートであることは確か。初めてのルートや道路なんて場合でも、安心してナビに案内を任せてしまうことができる。半面、「とにかく最短距離で」といった使い方には向いていない。
案内ルートから外れた場合は、自動的にリルートを行なってくれる。HDDナビと比べると探索の速度は遅く感じるが、実用上はあまり問題ないだろう。
■イラストや音声による充実の案内
PNDの登場当初は、その案内にかなり不満を覚えたが、nav-uはほぼ据え置き型のカーナビと同等といってよい。交差点で拡大図が表示されるのはもちろん、実写ベースのイラストによる拡大図やレーンガイド、方面案内看板など、高速道路では入口のイラスト案内、ジャンクションやランプのイラストガイドも用意するなど、多彩な表現で案内をしてくれる。音声による案内も充実しており、交差点名や方面の名称、ジャンクション名などをアナウンスしてくれるため、ある程度は画面を見なくても大丈夫だ。
NV-U3V(左)とNV-U3C(右)の交差点拡大図比較。交差点名やレーンガイドなど、要素そのものはどちらも同じ。画面がワイドな分、NV-U3Vのほうが自車周辺の見通しがよく、画面右側の拡大図もNV-U3Vのほうがより詳細な地図となっている |
NV-U3VにはオプションとしてVICSビーコンユニットが用意されているが、都市部で利用するなら実用性がとても高く便利なもの。渋滞の状況がほぼリアルタイムで分かるのは時間の節約になるし、精神的にも安心感が高い。ルート案内時なら渋滞を考慮して最適なルートを案内してくれるのもうれしい。さらに精度面でも一役買ってくれる。ナビ本体の価格を考えると割高に感じてしまうかもしれないが、都市部で使うなら必需品といってもよいアイテムだ。
■大きく差が出た測位精度
さて、カーナビとして使うには肝心の精度面はどうか。結論から言ってしまえば、GPS衛星からの電波を受けることが可能な場所なら、どちらもほぼ問題ない。長時間電源を入れてなかったり、電源を切ったのと違う場所からスタートしたりする場合は測位に少し時間が掛かるものの、自車位置精度そのものは良好だ。まったくの余談ではあるがクレードルに取り付けず、シートの上にポンと置いた場合は背面にアンテナを持つNV-U3Vより、本体正面にアンテナを持つNV-U3Cのほうが受信率が高い。逆にいえば、NV-U3Vはキチンと取り付けてこそ、実力を発揮できるということだ。
都市高速の下を走る一般道。GPS電波を受信しにくく、高架の上を走っているのか下を走っているのかも判断ができないカーナビが苦手な場所 |
では、電波を受けにくいor受けられない場所ではどうか。それを確かめるべく、2種類の場所でテストを行なってみた。まず「電波を受けにくい」場所として選んだのは都市高速の高架下を走る一般道。都市高速の左右も高いビルで遮られているため、交差点やビルが途切れた場所以外では空を見ることはできないというシチュエーションになる。
こんな場所では、やはり推測航法となる「POSITIONプラス」しか持たないNV-U3Cはキビシイ。信号で停車しているときに自車位置が動いてしまったり、逆に走行中に止まってしまったりと不安定さを隠せない。ただ、短い時間でも測位することができれば正確な位置に復帰してくれるため、実用上はさほど問題を感じない。とはいえ、測位できないときに右左折しなければいけない、なんて場合を考えると少し不安が残るのも確かだ。一方のNV-U3Vは見事。気圧、加速度、ジャイロと3つのセンサーを組み合わせた「POSITION plus G」による測位は安定感がすこぶる高い。電波を受けられなくても(自車位置マークが赤からオレンジに変化)、ほぼ正確な自車位置を示してくれる。当然、停車中に自車位置が動いてしまうようなこともない。高さを検知する3Dジャイロは搭載していないため、一般道走行中に高速と誤認識してしまうこともあるがこれは仕方のない部分。ただし、オプションのVICSビーコンユニットを装着していれば、光ビーコン通過後に一般道と認識してくれる。これは光ビーコンは一般道にのみ設置されている(高速道路にあるのは電波ビーコン)ことを利用した機能だ。
次に「電波を受けられない」場所。これは首都高速トンネルおよびトンネル中の分岐を利用してチェックしてみた。NV-U3Cはトンネルに入ってしばらくすると自車位置マークがグレーになってギブアップ。NV-U3Vはトンネルに入っても進み続け、ほぼ正確な位置をキープ。右折方向の案内ルートを無視して直進しても、キチンとそれを認識してトンネル内でリルート。すぐに修正したルートでの案内を行なってくれた。据え置き型のナビと比べるとNV-U3Vも万能というわけではないが、アラ探しをしない限り十二分に満足できる内容で、PNDとしてはアタマひとつ抜けた精度を実現しているのは間違いない。
■どっちを選ぶ?
カーナビとしての機能を重視するなら「POSITION plus G」を擁するNV-U3Vの優位性は揺るがない。PNDとは思えない精度の高さはそれだけで十分過ぎるほどの選択要素になる。モニターサイズの大きさも視認性や操作性の上でメリットだし、オプションとしてVICSビーコンユニットが用意されていることも大きい。
一方のNV-U3Cはどうかといえば、こちらはコンパクトさと安さが最大のアピールポイント。地図や検索などのデータはほぼ同等なので、持ち運びを重視するなら、これも選択の余地はない。精度に関してもかなりイジワルな使い方をすれば差が付くレベルで、電波受信後の復帰が早いため実用上はそれほど気にならない。ただ、モニターサイズの小ささは、ダッシュボードに置くことを考えるとちょっと不利だ。
以上のようにどちらにもメリット、デメリットがあるため、価格に惑わされず、自分がどちらを優先するかをよく考えてチョイスすることが重要だ。同社のサイトからは説明書のダウンロードが可能なので、購入を考えているなら、事前にチェックしておくとよいだろう。
(安田 剛)
2009年 6月 10日