セガ、営業車を「初音ミク -Project DIVA-」の“痛車”に
ラッピング作業を公開

綱嶋氏(右)の手で痛くなった営業車とセガの馬場氏

2009年6月11日



 セガは、ゲーム「初音ミク -Project DIVA-」のプロモーションとして、同社の営業車で同ゲームの痛車仕様を制作。6月11日に、痛車仕様営業車の制作工程の一部を、報道関係者に公開した。

SUPER GTに参戦中の「初音ミク Studie GLAD BMW Z4」(撮影:奥川浩彦)

痛車作りのエキスパートが施工
 「初音ミク -Project DIVA-」は、7月2日に発売されるPSP用リズムアクションゲーム。パソコン用歌声合成技術「VOCALOID2」を使ったソフトのキャラクターである初音ミクを主人公とした音楽ゲーム。

 痛車になるのは、セガが実際に営業車として使用しているカローラ・フィールダー。初音ミクらをインクジェットプリントしたカッティングシートでラッピングされる。

 施工は埼玉県狭山市のタップ。屋内外看板や装飾を手がける同社は、痛車愛好家には「御社」として知られる痛車作りの老舗だ。車好きには、SUPER GTにエントリーしているカーナンバー808の痛車「初音ミク Studie GLAD BMW Z4」のマーキングをした業者、と紹介すれば分かりいただけると思う。

 同社の痛車作りの歴史は、2007年10月に代表取締役の綱嶋清志氏が、動画共有サイトに「作ってみた」と題して痛車作りの工程を記録した動画を投稿したことに始まる。この動画が話題を呼び、同社に痛車作りの依頼が寄せられるようになり、ついには初音ミクの開発元のお墨付きを得て、SUPER GTマシンやセガの営業車を手がけるようになったのだ。

1時間で営業車がみっくみくに
 作業は狭山市の同社工場で、綱嶋氏手ずから行った。痛車となる紺色のカローラ・フィールダーは、車体左右側面とボンネットにカッティングシートを貼る計画。報道関係者が到着したときにはすでに左右側面の作業は済んでおり、ボンネットにシートを貼る作業が公開された。

 インクジェットプリンタで初音ミクのイラストをプリントした1000×1500mmの大型シートがボンネットに置かれ、まずはガムテープで位置決め。ボンネットの平面に近い部分からから、接着面に空気が入らないようにプラスチックのヘラでこすりながら、慎重に貼り付け作業が始まった。ヘラの滑りをよくし、傷を最小限にするためにシートの上からスプレーで水をかけつつ、作業を進める。

ボンネットのデザイン画位置を決め、ガムテープで仮止めする
シートに水をかけ、ヘラでこすりながら貼っていく
曲率の高い部分やプレスラインなどの複雑な曲面は、ドライヤーの温風でのばしながら貼る
シートのプリントに使用した大型のインクジェットプリンタ(左)と用紙

 ボンネットの曲率の高い部分やプレスラインでは、ドライヤーで温風を当ててシートを伸ばしながら貼っていく。とくに慎重を要する部分ではもう1人作業員が加わり、1人がドライヤーを、1人がヘラで貼り付けを行っていく。

 このインクジェットプリントは、屋外看板などにも使われるインクを使用しており、屋外に放置していても5年程度は退色しないと言う。車に貼り付けた場合は「あまりごしごしこすらなければ、普通の洗車も平気です。ただし、洗車機は避けたほうがよい」とのこと。

 ボンネット全体への貼り付けが終わると、不要部分をカッターで切り取り、ボンネットの縁を折り込んで仕上げる。さらに上からURLなどの文字のステッカーを貼り込んで、開始からほぼ1時間で作業は終了した。

不要部分をカッターで切り取る
URLなどのレタリングを貼り込んで完成
完成した営業痛車
ドアノブやグラス部分も丁寧に処理されている

営業痛車は関東近郊で活躍
 ボンネットだけでほぼ1時間、車体左右側面を含めても1日で作業は終わる。ちなみにSUPER GTマシンのZ4は、車体のベース色もシートで貼り込んである。この1月にマーキングを貼り直したときは「以前に貼ったシートをはがすのに1日、新しいシートのベース色を貼るのに1日、初音ミクなどのキャラクターを貼るのに1時間」かかったそうだ。ベース色のように車体全体に貼り込む作業はさすがに大変なのだが、塗装するようりもシートを貼った方が重量を減らせるため、SUPER GTマシンはベース車からステッカー貼りにしたのだと言う。

 タップでは、セガやSUPER GTマシンのような、企業からの発注だけでなく、個人の愛好家からの注文も受け付けている。セガの営業車のマーキングなら、費用はだいたい15~20万円。ただしこの料金に貼り込む絵柄のデータ作成は含まれない。基本的にデザインやデータ作成はユーザーが行う。

 タップでは月平均1台はこのような痛車制作の依頼を受けている。コミケなど痛車が関係するイベントの前は混雑するそうだ。

 セガで「初音ミク -Project DIVA-」のPRを手がける馬場克美氏によれば、「営業車は関東近郊全域の営業に使われる。営業では月に1000km程度は走る」ということなので、関東地方在住の読者は遭遇する可能性がある。ゲームのPR期間後の同車の処遇については「勢いで作ってみたので、期限とはとくに決めていない。東京ゲームショウが終わるまではこのままの姿でいるのではないか」とのことだった。

(編集部:田中真一郎)
2009年 6月 12日