NEXCO東日本、星の王子さまPA(仮称)計画発表
関越道 寄居PAをリニューアル

寄居 星の王子さまPA(仮称)計画 記者発表の模様

2009年6月22日発表



 NEXCO東日本(東日本高速道路)は、「星の王子さま」とコラボレーションした、寄居PA(パーキングエリア)のリニューアル「寄居 星の王子さまパーキングエリア(仮称)計画」について、6月22日に記者会見を行った。

 この計画は、NEXCO東日本初の試みとして、関越道 花園IC(インターチェンジ)~本庄児玉IC間にある寄居PA(上り線)に、フランス人小説家サン=テグジュペリの著書である星の王子さまの世界観を再現した癒しの空間を提供するというもの。日本における星の王子さまのライセンス管理をしている「Le Petit Prince(ル・プチ・プランス)」と、星の王子さまのグッズ販売や店舗運営を行う「セラム」との提携によって実現したもの。建築デザインは、箱根にある「星の王子さまミュージアム」も手がけた「グラフィクスアンドデザイニング」が行い、2010年夏ごろのオープンを目指すと言う。


サン=テグジュペリ著「星の王子さま」Le Petit Prince(TM) Succession Antoine de Saint-Exupery
NEXCO東日本代表取締役 井上啓一社長

 会見には、NEXCO東日本の代表取締役 井上啓一社長、ル・プチ・プランスとセラムの代表取締役 鳥居明希子社長、また、来賓としてフランス共和国のフィリップ・フォール駐日大使らが登壇した。NEXCO東日本の井上社長は、「当社ではSA(サービスエリア)、PAの従来のイメージを斬新なものにしていきたいと考えている」と今回の企画の意図について説明し、「星の王子さまは、子供の心を失ってしまった大人への示唆に富んだ作品で、世界中で広く愛読されており、その世界観は癒しに満ちている。これがPAの役割、具体的にはドライブの緊張から潤いや癒しを取り戻す空間のイメージに合致するものと考え、今回の計画に至った」と、星の王子さまとのコラボレーションに至った経緯について説明した。

ル・プチ・プランスとセラムの代表取締役 鳥居明希子社長

 続いて鳥居社長は星の王子さまについて、「1943年にニューヨークで出版され、これまでに180以上の国と地域の言葉で翻訳され、現在までに世界中で約9000万部販売されている。20世紀、聖書についで多く販売された本として話題になった」と説明した。そして、その中でも有名な「肝心なことは目に見えない」という一文を挙げ、「かつては子供であったにもかかわらず、本質的なことを忘れてしまった大人たちに、この大事なメッセージを思い出してもらいたい」とその活動の目的について述べた。同氏が10年前に作った「星の王子さまミュージアム」について「ここは、自分自身を見つめ直す時間や空間を提供し、それによって日ごろ忘れてしまっている肝心なことを思い出してもらいたいと思って作った。今回は常設の施設としては2弾目となるが、基本的な目的は箱根と一緒の考え方」だと述べた。

 また、「レストランも南フランスのプロバンス地方の料理を中心とした家庭的なフレンチを提供したいと考えていて、ショッピングコーナーでもフランスの食べ物や雑貨品などを販売したい」「来年夏にオープンを予定しているが、来年はサン=テグジュペリが生まれて110周年という記念すべき年。その年にまた新しい施設ができあがって、星の王子さまの大事なメッセージを知っていただける人たちが一人でも多くなればと望んでいる」と閉めくくった。

日本では二十数社から発売されている星の王子さま星の王子さま関連商品も販売したいと言う寄居PAで発売予定の像とうわばみの置物

 具体的な計画についてNEXCO東日本の事業開発部長 鈴木次雄氏や、建築デザインを担当したグラフィクス アンド デザイニングの代表取締役会長 相羽高徳氏より説明が行われた。

NEXCO東日本の事業開発部長 鈴木次雄氏

 鈴木氏は「今回、これまでにない新しい取り組みとして、『非日常性』を演出し、星の王子さまの世界観にチャレンジする。この非日常世界を演出するPA、SAを作るのは初めての試みだが、その第1弾が星の王子さまという世界的なブランドとのコラボレーションになったということは、非常にやりがいがあると感じている。寄居PAは比較的駐車スペースに余裕のあるPAなので、多数(の方)のご利用が可能となる。トイレ設備や駐車場も雰囲気にあわせて一新させる予定で検討している」とその計画について述べた。


星の王子さまに登場する像を食べたうわばみのイラストは、上空から見たPAのようだと鈴木氏NEXCO東日本で管轄するSA、PAは187カ所、店舗売上は1240億円だと言う華づくり、礎づくりを通して新しい演出へ取り組んだ
星の王子さまPAは関越自動車道の寄居PA上り線に作る嵐山PAと上郷SAに挟まれる寄居PA「癒し」がこのプロジェクトのキーワード
グラフィクス アンド デザイニングの代表取締役会長 相羽高徳氏

 また、具体的な空間の演出に関しては、相羽氏が解説した。同氏によると「プロバンス地方の建築物には、かわらの組み方や石積みの仕方、煙突に特徴があるので、それらを中心に演出しようと思った」と言う。特にPAに入ってきた瞬間からプロバンスの雰囲気を演出し「パスポートなしでプロバンスに行けてしまうという世界観をどこまで表現できるかが課題」だと述べた。そのために具体的には「プロバンスは独特な花が多いのでそれらを使う。木はすでに植えられているものを使い、藤やバラといった花が特徴なので、それらが自生しているような世界観を演出したい」とその計画について説明を行った。

プロバンス風の街並みや料理の提供によって癒しの空間、料理、サービスを提供すると言う
エリア全景。入って来るとすぐにプロバンス風の街並みが視界に入るようにレイアウト本線アプローチ野外テラス
作品にも深くかかわるバラをあしらったローズガーデンプロバンスの軽食などが食べられる屋台広場施設はすべてバリアフリーにする
全景イメージ。背の高い塔はプロバンス地方の教会をイメージしたもの完成は2010年夏を予定
フランス共和国のフィリップ・フォール駐日大使

 最後にフィリップ・フォール駐日フランス大使は「今回の寄居PAのリニューアルに関してフランスを選んでもらったことを光栄に思う。また、星の王子さまとのコラボレーションになることを本当にうれしく思う」とその喜びを表した。「フランス人にとってのプロバンスのイメージは、太陽がさんさんと降り注ぐ夏をイメージさせる場所であり、生きる喜びを感じる場所。このような雰囲気を寄居で皆様に味わってもらえると思うと非常に楽しみだ」と今回の計画に対する期待を述べた。

 また「プロバンス地方は食事やお酒もおいしいので、それらもぜひ味わってもらいたい」。また冗談だとしながらも「フランスには22の地方がある。ほかにも多くのPAがあると聞いているので、これから先次のステップを考えているなら、別の地方を提案させてもらいたい」と述べた。なお、日本のPAやSAでは酒類の販売は禁止されているが、これについて井上会長は、たとえばカタログ販売のような形で実現できればと豊富を語った。

(瀬戸 学)
2009年 6月 23日